まだ入手後二日目だが、怪しい箇所をいくつか見つけた。回路図はいろいろなバージョンがあり、さらに、回路図に明らかに間違った箇所もあり、点検・トレースを難しくしている。

まずはシャシーのリアにあるリモート端子。開けて確認したら、加工された痕跡があり、ハンダづけされていない。ということで、簡単な修正を施した。

リモート端子とトランシーブ端子を開けたところ。左は怪しい。
リモート端子を修正。元の状態はわからないが。

つぎに、ユーザによって追加されたキャブレート回路。珍しいアクセサリかもしれないが、真空管 6BA6 による無調整型簡易キャリブレート回路が本個体に組み込まれている。しかし、完成していない。

回路が追加されたが、失敗したか、出力シグナルはどこにもつないでいない。
細かくて写真では確認できないが、未完成。3.5MHzのクリスタル発振子が必要なのに、なぜか3.52MHzになっている。赤丸のところの真空管ソケット片側はネジ止めされていない。

ほとんどの部分はできているので、ちょっとした追加作業で動くと思うが、肝心のクリスタル発振子は3.52MHzになっているところは気になる。その高調波は活用して、7MHz、14MHz 等の校正をするわけだが、20Hzのずれは、40Hz、80Hz等になり、計算がとても面倒。

3.5kHzのものを物色してみる。見つかるとキャリブレートがやりやすくなるはず。

3番めにIF Tuneの接続先が怪しい。ハンダづけがなんとなく素人っぽいなので、回路図と見比べたら、接続先が変えられたことに気づいた。理由不明だが。

大きな赤丸のところは怪しさが満点。隣の小さな赤丸の抵抗も焦げているようにみえる。
正しい接続先はこちら、VC2の1番ピン。ついでに、焦げた抵抗を交換。

また、焦げたようにみえた抵抗は1kΩ。外して実測したら抵抗値は変わっていない。念のため、手持ちのもので交換。

IF Tune の接続先を直したら、感度は大きくアップ。これが本来の状態かどうかは分からないが、コリンズに比べてノイズが多いことはまだ気になる。

4番目、470kΩの抵抗は全体的に 510kΩ前後になっている。ほかの抵抗は問題ないようだが、少なくとも調べた範囲の3つの 470kΩ ソリッド抵抗は 510kΩ に大きくなっている。ただちに影響があるわけではないが、異なる回路に一斉に大きくなったのはやはり品質の問題かな。

このうち、1W カーボン抵抗で取り替える。このために注文するのは送料でバカバカしくなるので。

入手した JR-310 のヒーター電圧は実測したら 6.5V になっていた。+B電圧も多少高めになっていた。出力管の代用や、パイロットランプのLED化等、これからの遊びはヒーター電流を使わない方向なので、ヒーター電圧を高めることがあっても、減らせることはない。

コリンズは最終的にヒーター電圧は 6.1Vになっていた。日本の100VACをトランスを使って昇圧するので、変換先の電圧値をタップを変えることで上下調整できたから。

JR-310 では搭載されている電源トランスは入力117V にも対応しているが、100Vに比べて約2割も高く、ヒーター電圧はそれを使うと5.5Vになってしまう。

ということで、電源トランスの6.3V 端子にセメント抵抗をいれて、6V前後に調整する。そのために流れる電流を真空管のスペックから推測してみる。

6BZ6、ヒーター電流 0.3A。
6BL8、0.45A
6CB6A、0.3A。
6BA6の2本、0.3A × 2。
6BM8、0.78A。
6BA6、0.3A。

真空管のヒーターに流す電流は計 2.73A。ほかにパイロットランプを点灯させるための電流は恐らく 0.15A × 2 = 0.3A なので、合計して 3.03A になる。電源トランスの6.3Vタップに書かれている定格電流は 2.8A になっていて、ややスペックオーバーになる。それでもヒーター電圧が6.5Vになるとは不思議だ。

手持ちのセメント抵抗から 5W 0.1Ω を選定

ということで、6V前後にするには、抵抗 (6.5-6)/3.03 = 0.165Ω。手持ちに近い値の抵抗は 0.1Ω / 5W と 0.22Ω / 5W しかなく、それぞれを使ったときの消費電力を考えて、0.1Ωを使うことにした。

それによって、電圧降下は 0.303、消費電力は 0.92W、になる。目標値の6Vには届いていないが、妥協しよう。どうしてもというひとは、0.33Ω / 5W を2つ並列接続していいかもしれない。

セメントを付けた様子

暗くて、わかりにくいが、つぎの写真のとおり、ヒーター電圧は約6.3Vになった。電流値の誤差(7番目の真空管 6BA6 は外したことも多少関係する)や、抵抗値の誤差により、予想よりは若干高くなっている。

ヒーター電圧は 6.27V になった

アマチュア無線バンド受信機である Trio JR-310 では、RF Tune の操作はベルト経由で、バリコンを回している。そのベルトはゴム製で、経年劣化によって、よく切れるらしい。そういえば、CDやテープレコーダーにもゴムベルトが同様な問題が多発している。

ゴムやプラスチック等は、成分にもよるが、長寿命の製品にしたいなら、できれば避けたい。ボロボロになったり、ベタベタになったり、日常生活ではそういう現象によく遭遇するから。

さて本個体もゴムベルトが切れていて、前所有者が輪ゴムでしのいでいたが、輪ゴムは簡単に劣化して、滑ってしまい、操作性最悪。

ベルトの代わりに輪ゴムが装着されていた

ということで、近くのホームセンターであるカインズホームで、代わりを物色してきた。

ベルトの代わりに見つけた代用品

Oリング2種類はそれぞれ内径55mmと56mm。ベルトの長さは実測したら17.5cm前後ということがわかっていたので、使えそうなものを選んだ。

株式会社八幡ねじ(www.yht.jp)の製品で、特長は油・水漏れ止めに優れていること、材質はニトリルゴム(NBR)とのことだ。

チェーンも購入してみた。JR-310の前に座って実物を見ながら、滑らない方策を考えていたが、結局思いつけず、仕方なくゴムのOリングを採用した。ニトリルゴムは工業用ゴムとのこと、リングの太さは5.7mmもあること等に期待して、劣化して切れることのないよう祈る。10年後切れたら、また代用品をその時に考えよう。

さて、Oリングを装着するには、一苦労した。正面のパネルを外さないと装着できそうにないから。すべてのツマミや固定ネジを取り外し、隙間からOリングを取り付けた。56mmのものよりは55mmがきついので、滑らせないために、55mmのほうを採用。

パネルを外すにはひと苦労。Oリングを入れるための隙間をつくるために、すべてのツマミ、固定ネジを取り外した。
装着したOリング。太さは半端でない。
上から見ると溝からはみ出すことはなさそう

RF Tuneのダイヤル操作はやっとマトモになり、テスト・調整ができそうになった。RF Tuneはいわゆる、コリンズのPreSelectorであり、それをうまく操作でないと全く受信できない、しかも、その操作は大変シビアで、ノイズを聴きながら、ノイズが最大になるようにまさにその一点にチューニングしないといけない。

バンドスイッチ(受信バンドの設定)、メインダイヤル(受信バンド内の受信周波数の設定)、RF Tune(受信周波数の感度調整)、IF Tune(受信周波数の感度調整)、そしてAM・LSB・USB切り替えスイッチ、という5つの操作は最も大事。ひとつでも操作がうまくできないと受信失敗になる。ただ、比較的に IF Tuneだけは適当にやってもいいみたい。IF Tune はTrioの独自のアイデアかもしれない。操作してみれば、確かに必要だとわかるが、IF Tuneとの違いは明確でなく、全体の操作性を悪くしている。

その他の、RF Gain、AF Gain、RITは操作しなくても問題ない。RF Gainは最大にすればOK。その感度調整は RF Tuneができるから。AF Gainに関しては、そもそもスピーカーは JR-310 に搭載されておらず、外部スピーカーを使うなら、Gain調整可能な(つまり、アンプ内蔵の)外部スピーカーを使い、Gain調整は外部でやればOK。RITは連動する送信機のためのもので、受信には無関係。

送料込1万円未満のジャンク受信機 Trio JR-310 が入ってきた。コミュニケーションレシーバーと書いてあるが、基本的に、コリンズ 75S-3 と同様、アマチュア無線バンドしか聴けない。アマチュア無線の通信に興味のないひとにとっては、ただのゴミでしかない。アマチュア無線バンド以外の短波放送は基本的に聴けないし、短波放送は国際の取り決めにより、アマチュア無線バンドとぶつからないようしているから。ただ、その取り決めは変更することはあり、また、本機種の作り方から、アマチュア無線バンドに精確に限定して受信する技術力もないので、ごく一部聴こえる短波放送もある。

到着した本個体は外観がわりときれい、クリーニングしなくても撮影に耐える。ということで、記念として写真3枚を残しておく。これから、またいろいろといじっていくので、元の姿を残す写真は本人にとって貴重かもしれない。

正面。1969年の発売。初期に近いモデルである可能性が高い
モジュール化構造になっている。真空管は7本。内の1本はユーザによって追加されたものだろう。
日本人の器用さか、配線はコリンズよりはマシ。

恐れ恐れ通電してみた。パイロットランプの点灯、真空管の点灯等、異常は観察できなかった。肝心の受信は、7MHzでのAM受信、LSB受信が確認できた。Sメータも問題ない。しかし、ボリュームのガリがひどい。ヒーター電圧は6.5Vと出ている。6.3V、できれば、6V前後にしたい。IF Tuneのベルトが切れていて、使えるOリングを探さないといけない。

さて、真空管をチェック。7本の詳細は以下の通り。意地でもコリンズ球ではなく、その互換球を使うところは面白い。

6BZ6(東芝製)、RF増幅。
6BL8(松下製)、第1ミキサー、受信周波数を 5.955~5.355MHzに変換。
6CB6A(日立製)、第2ミキサー、受信周波数を455kHzに変換。
6BA6(松下製)2本、IF増幅。
6BM8(松下製)、AF出力。
6BA6(メーカー不明)、アクセサリーであるキャリブレート回路用。

コリンズ 75S-3 における12本の真空管が、ここに来て7本に減らされた理由は、コリンズをそのままパクることによる特許侵害対策や、ソリッド(トランジスタやFET)化したからだと思われる。

全体のブロックダイヤグラムはつぎの画像のとおり、常識的なものでしかない。コリンズにあったQ-マルチや可変BFO(そのためにそれぞれ真空管が必要)は本機種にない。また、検波やVFOのソリッド化が進み、真空管を使う必要性はなくなった。その結果、コリンズの約半分の真空管数でも機能している。しかし、操作性も性能もコリンズに勝てる見込みはブロックダイヤグラムや、回路図を見てないと個人的に感じた。一言でいうと安さ以外に魅力がないということだ。

貴重な当時の雑誌紹介

真空管を1本1本抜いてクリーニングして外観を確認した。1960年代の最期に製造された真空管というだけあって、問題のありそうな球は外観から感じ取れなかった。コリンズのようなガラスの濁る球はなかった。さらに、短波受信できたということと合わせて考えれば、真空管はとりあえず交換せずに様子見することにした。

約1ヶ月間、毎日のようにCollinsに取り掛かってきたが、新しいものが入ってきたので、整備はこれで終了したい。

ふつうに使えるようになったCollins 75S-3

振り返ると、本個体の問題は真空管の不良だけだった。整備ではコンデンサの交換やパイロットランプのLED化をしたが、やらなくても別に問題が起きるわけではない。

壊れた真空管だけを替えればいいという意見はネットに多いが、そもそもコリンズ本来の性能(感度や音、操作性等すべて)を知らないひと、つまり、はじめてコリンズに接したひとは、すべての真空管を信頼できるものに差し替えて、動作確認すべきだ、との認識に至った。真空管は寿命が数千とか数万時間とかいうが、いつ不良になるかは誰にもわからない。ましてや1963年製の本個体は、変だなと思ったら、すべての真空管を取り替えたほうが無難だろう。

故障がなくなったら、またひとつひとつ元の真空管に戻して確認すればよい。本コリンズに限って言えば、真空管はもっとも厄介な存在だと言えよう。

アイデアなどが溜まったら、またコリンズを相手に遊んでみたい。

ロシアや中国製真空管 6P1, 6P1P-EV は 6AQ5 互換といわれているが、ピンの数がそもそも違うので、そのまま挿すことは無理。そこに変換ソケットの出番だ。

自作した真空管変換ソケット

自作してみたが、9ピンと7ピンとの変換は案外難しいことに気づいた。ショート防止のために、ピン間の最小距離はどうも定められているようだ。となると、9ピン真空管は太くなるし、ズレたピンの連結は難しい。

今回は写真のとおり、なんとか 6P1 を 6AQ5 として使う変換ソケットを作ったが、ピンの配置が異なったら、うまくできないかもしれない。

しかし、手持ちの7本の9ピンMT管 6BX6 を 6DC6 の代わりに使うには、もう少し汎用のアイデアが欲しいところ。

ソケットをそれぞれ基板に刺し込み、基板同士を張り合わせる形(互いの連結はソケットの外側で行う)でのものがいいかもしれない。近いうち、チャレンジしてみたい。

ところで、6P1P-EV の寿命は以下のとおり、製造メーカーが 5000時間以上と明示されている。ほかに寿命が明示された型番の真空管はあるのだろうか。興味津々。品質世界一と豪語する日本製真空管だと寿命はその倍か。

動作時間保証は5000時間とのスペックに驚いた

さて、到着したロシア製 6P1P-EV を変換ソケットに乗せて、コリンズに装着。米ロコンビはいいが、やはり高すぎ、逆さにして作業するときに気をつけないと、6P1P-EVを壊してしまう。

こんな遊びをするのは本人だけか

出力管 6BF5 のソリッド(FET)化を考えていたが、放熱のことは解決できず、結局やめることにした。6P1P-EVや6P1はまだ生産中なので、入手できなくなることはないだろう。しかも、入手済の 6BF5、6AQ5 等と合わせてすでに10本ぐらいの出力管は用意できた。一生安泰と夢みよう。

毎日コリンズをイジらないと気がすまない性格で、本記事はランプをLEDにする内容。オリジナルランプでないと気が済みないひとには全く参考にならないかもしれないが、交換するための手順を書くのでヒントになることを期待する。

Collins 75S-3 には2つのパイロットランプが使われている。ダイヤル照明用とSメータ照明用。ダイヤル照明のほうがランプを固定するメカニズムはとても簡単で、素手でも交換できてしまう。ただ、ショートしないか、設計に対して心配なところは本人にあった。そういうことで、ダイヤル照明用ランプの交換(あるいはLED化)については省略。

問題はSメータのランプ交換。ネットを調べてもそれなりの情報は見当たらない。ということで、ここから下の部分はすべて自己流。もっと簡単な交換方法があってもおかしくない。何しろ、ランプは切れることがあるので、簡単に交換できる方法をコリンズが用意しないわけはない。ちょうど真空管のように挿し替えるだけでする方法を。

シャシーからSメータを固定する4本のネジを外すことから始める。周りにスペースがないので、作業は結構大変。

赤丸にある4本のネジを外すには大変苦労した。
メータを前に引っ張り出すことに成功

そして、Sメータのカバーを固定するネジ(銅製、すぐ傷められそう)の3つを外し、Sメータのカバーを外す。

赤丸にあるネジを外す。写真に見えないが、4時と8時の位置にもネジがあり、これら3つでカバーを3方向からガッチリ固定する。
Sメータのカバーが外れた

必要かどうかは知らないが、ランプを外すために、メータの銘板を外した。この作業には細心の注意が必要。メータの回転する心臓部は大変精巧なつくりで、壊したら組み立てられるひとは日本中にいないともいわれる。同じものを買おうとしたら、コリンズということで1万円以上の(ぽったくり)値段になる。

やっと目的のランプを取り出した。

ランプは交流 6.3V用、定格電流は分からないが、直流定電圧電源につけて測ったら約130mAであることから、0.15Aのものだと思われる。

CM 47。市場独占のために、定格ではなく、番号で商品をだすアメリカ。こういうパイロットランプの形をBA9Sタイプというらしい。

ランプを交換するだけなら、新しいランプをつけて、Sメータをもとに戻せばOK。本記事はランプのLED化が目的なので、さらに書き続ける。

交流6.3V用BA9SタイプのLEDランプを買おうとしたら、案外高い。ひとつで数百円は自分の価値観にあわないので自作でチャレンジ。

ベース部分は商品として販売されているので入手。LEDは8年前311特別状況下で秋月電子から購入していたのでそのまま使用。交流に対してLEDをふたつ並列(向きを逆に)して、抵抗220Ω(手持ちにそれがあったので使うだけ)をつける。ほかの抵抗値でも問題ないが、計算に必要なデータを示しておくと、AC6.3Vの最大電圧は約9V。LEDは秋月番号 I-06414 というものだが、順方向電圧降下3.1V、逆耐圧5V、標準電流20mA、最大電流30mA、最大パルス電流100mA、Warm White。LEDを2つ使うので、流す電流が10mAでも、元のランプよりは何倍も明るい。

用意したパーツ

つくったLEDは以下のようなもの。格好が悪いかもしれない。

直流で測ったところ、プラスとマイナスとのどの方向も6.3VDCでは約15mA、9VDCでは約27mA。抵抗値を270Ωや、300Ωにしてもいいかもしれない。

逆の手順でSメータを戻せば終わり。点灯時の写真を以下に示す。実際は全く眩しくない、3mmのLEDだから。ただ、ダイヤルのほうは半透明なプラスチック板、右のSメータはアルミ製の銘板、それらの遮光性の違いが見た目の明るさを左右した。ということで、ダイヤル用のLEDに300Ωか、それ以上の抵抗値を使うべきだね。いつか気が向いたら作り直す。

LEDは効率がよく、15mAでその10倍の150mA電球ランプよりも明るい。

誤解を招かないための長いタイトルにしたが、本記事の真髄はすばり、真空管変換ソケットの自作だ。

高名なアマチュア無線受信機 Collins 75S-3 はこの頃、自分のおもちゃに化している。真空管入門のきっかけをつくってくれた Collins に感謝だ。

さて、Collins 75S-3 の V5 として利用されている真空管 12AX7 は、高μ双三極管の9ピンMT管として有名。その兄弟に 12AU7, 12AT7 があるが、増幅率 μ の違い、100が12AX7、60が12AT7、20が12AU7といったぐあいに選別されている。μ=100が三極管では最も高いものらしい。トランジスタだと100はよくある増幅率であって、高いものは800~1000(超えるものもあろう)。真空管は増幅率が比較的低い。

ところで、知識が乏しく自分は 12AX7 の互換球を探しているが、なかなか見当たらない。しかし、ロシア系(その支援国である東欧や中国等)にはヒーター電圧が違うが、6N2 (さらにその軍用モデル 6N2P-EV 等)は他の電気的特性はよく似ている。6N2、あるいは 6N2P-EV を試してみたいひとは、ヒーターの違いを解消(あるいは吸収)する工夫をしないといけない。

下に 12AX7 と 6N2 のピン配置図を示す。確かにピンのアサインは同じだ。問題はヒーター電圧。12AX7 は型番のとおり、12.6V/0.15A をヒーターに使う。対して、6N2 は 6.3V/0.34A を使う。

12AX7のピン配置
6N2のピン配置

幸い、12AX7は Collins 75S-3 では、ヒーター電圧が2組の6.3Vの直列で供給されている。具体的には、ピン4-9 および 5-9 にそれぞれ 6.3V が与えられている。したがって、どちらかの 6.3V を 6N2 のヒーター電圧にすればよい。つまり、12AX7 の4-9、または 5-9 を、6N2 の 4-5 にすればよい。

Collins の基板回路を変えるなら、上記の変更は簡単に実現するが、12AX7 も 6N2 も使えることはできなくなる。そこで、変換ソケットの必要性が出てくる。つまり、ソケットのなかでヒーター配線を変えれば、変換ソケットを使わない場合は従来の 12AX7、6N2 を変換ソケットに乗せて使う場合は 6N2 が機能するわけだ。

自作した変換ソケットは下のようなもの。6N2 を変換ソケットに挿し、変換ソケットをさらに本来のCollins のソケットに挿すことで、6N2 が使えるようになる。

変換ソケット経由で 6N2 を使う。左はもとの12AX7A。

真空管変換ソケットはそれなりのニーズはあるはずだが、なかなか見当たらない。仕方なく、自作してみた。一連の作業は言葉で説明すると大変なので、一連の写真でその過程を示すことに留める。自己流なので、改良・改善はいくらでもできそう。

まずはピンの入手。たまたま手元にあったRS232Cの25ピンオス側を利用した。調べたら金メッキではないかもしれないが、秋月電子通商ではいまでも似たタイプが単価40円で販売されている。

分解
金メッキのピンをゲット。とても丈夫、太さは真空管のピンに似ている。

つぎに真空管ソケットの用意。9ピンソケットを2つ。少なくともそのうちの一つは分解できるタイプがよい。

そして分解、ハンダ付け。その作業を根気よくやっていけば完成。結果的にとても丈夫なつくりになった。押しても引っ張ってもひねてもびくともしない。

9ピンMTソケットを2つ
左側のほうは分解できるタイプ
左側のソケットを分解
入手した金メッキのピンを挿し込む
ハンダを流し込み、固定させる
さらに、2つのソケットをハンダづけして連結させる
各ピンの連結とリアサイン
できあがり。作業時間ははじめてのことで数時間かかった。
外周部にプラスチックパイプとかを装着すれば完璧かな

高さはピン部分を除くと約 26mm。工夫次第で20mmぐらいに低くできるかもしれない。透明か白色のビニールパイプを外周につければもっと格好よく、感電の心配もなくなるので、このうち適当なものを物色する予定。

こういうソケットは変換用だけでなく、各ピンの電圧測定や電圧電流のモニタリングにも活用できそう。Collins の電圧測定には自分はいつも緊張。ショートさせてはいけないし、感電の心配もある。こういうソケットがあれば大変助かる。

また、ヒーター電圧が低いだけの真空管、たとえば、4BZ6、5GH8A 等の真空管はヒーター電圧の違いで買い手がつかず、格安で大量に出回ったりする。変換ソケットではヒーター同士の連結に抵抗やダイオードを入れれば、電圧の違いを吸収でき、廃棄真空管の救出にも役立つ。

工夫次第で、真空管変換ソケットは使い道が多い。

さて、到着したロシア製 6N2P (キリル文字 6H2n)は 9303という日付があり、ソ連崩壊後の大混乱期に生産され流出されたものかもしれない。

ロシア 6N2P。ピン(足)の形は独特

米国、日本製 12AX7 との比較。双3極という部分はなんとかわかるが、作り自体は西側とだいぶ異なる。

左から 米国、日本、ロシア製

6N2Pを変換ソケット経由でコリンズに付けたら、ふつうに聴こえた。ノイズが若干上がった気がするが、感度もアップしているようだ。

なお、6N2Pの9番ピンは内部シールドの役目を果たすので、アースに繋ぐべきだとの意見が多い。元の12AX7にないピンなので、新たにリード線を台座の9ピンにつなぎ、シャシーのアースにつけていくことをやってみる。ノイズはこれで下がるだろうか。

トランジスタには見た目のよいカンタイプとかがあるが、一般的にいえば、見た目では断然真空管のほうが格好いい。しかし、ガラス製が多いので、収納には注意が必要。一般的に紙製のケースにいれて保管されているようなので、廃棄する梱包材を活用して試しに作ってみた。

真空管のサイズはさまざまだが、MT管が手持ちに多いので、7.5 x 2 x 2cmのサイズにしてみた。紙がちょっと薄い気がするが、収納にはとくに問題ない。紙収納ケースの販売もあるようだが、ひとつ100円とか50円、自分の価値観に合わない。

ネット情報を参考に適当に描いたり切ったりした
糊付け。固定するための工夫もしてみた。
できあがり。上下のスペースに丸めた紙で埋めるといいみたい。

裸のままの真空管は数十本もあるので、楽しみながら紙収納ケースをつくっていこう。この過程で、愛着心がますます増すことは請け合いだ。

同じ日に、海外と国内から真空管が到着。海外からは 6DC6 が5本、6BF5 が3本、国内からは中国製 12AX7、6K4等が4本。6DC6は単価630円、6BF5は不人気のせいか単価530円。海外での真空管相場はそんなものだろうか。国内購入の12AX7は最も高く1320円、6K4等は550円(いずれも税込み)。

NOS真空管12本

6BF5はGE製。ガラス壁に白い粉末が多くついており、12本のうち最も汚くみえる。

プリントは一部消えている。
足の部分はいかにも未使用、年月を感じる

6DC6は米国フィリップス製。わりときれい。

白い粉はなく、プリントも消えていない。
見た目は合格。

中国製はダメかと思ったら、案外きれい。足を誰かが磨いたようにも見える。製造年月がプリントされているものもある。4本のうち、1本だけはメーカーも製造年月も不明。

12AX7。製造ブランドも製造年月も印字なし。いかにもリプリントしたもの。
写真は下手だが、足はちゃんと磨かれていた。
82年1月曙光製 6K4。足は磨かれている。

現物をみて買っているわけではないので、外観だけで評価しても仕方ない。それよりもまだストックしているひととお店に感謝しないといけない。数十年も昔の製品を大事に保管してきたことを。

真空管のあとに製造され、一世を風靡したトランジスタやFETはしかし、型番指定の購入は多くのケースでは絶望。たとえば、最近の例をあげると、60年代 RCA社製の 2N1396, 2N1225, 2N373 を購入したくても世界中のどこにもないようだ(実物の写真の出さない怪しいサイトは多く見かけるが、本物である確信は持てない)。絶滅してしまった型番のトランジスタやFETは数千数万種類以上はあるだろう。いま流行りのIC等も同様な運命を辿るか。