工業芸術品と絶賛される、米国工業デザインの傑作。

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—- Kodak Bantam Special —-
コダック社 バンタム・スペシャル

艶やかな漆黒のエナメルを走る白銀のストライプ。 その流線形を構成する柔らかな曲線。 遥か68年前の1936年に米国イーストマン・コダック社が世に送り出し米国工業デザインの傑作。

デザインは素晴らしい。1936年といえば、ライカ IIIa やコンタックス II が発売されていた年。ところが、それらと比較するとすぐに本機のモダン性に気づくだろう。何十年もの昔どころか、21世紀の今日でもまだ通用するデザインはさすが。超未来型のカメラといえよう。しかも珍しいことに、貼り革は全く使われていない。当時のカメラといかにかけ離れているかを物語っている。

サイズも小さい。蛇腹なので、前扉をしまうと、ポケットに入れられる。ライカに比べて軍艦部は若干高くなっているが、高性能なファインダーが内蔵されるいるためだろう。横幅は逆に短い、複雑なフォーカルプレンシャッターではないからだろう。

搭載しているエクターレンズは評判が高い。どれくらいのひとが実写したかは判らないが、エクターのなかでも、本機ととカートン用エクターはとくに評価されていて、一種の神格が加えられている。

スーパー・イコンタ風の距離計は見やすい。イコンタの回転式レンズと違って、ピント合わせリングを回すと、距離計レンズの首が左右に動く。イメージは上下分割式、プリズムによって光がそれぞれ上下に導かれていて、ハーフミラーは使わない。だから劣化の心配はほとんどなく、長寿命なのだ。イメージは望遠レンズのように拡大されていて、精度が高い。

本カメラの難点はその使用するフィルム。専用の828フィルムはだいぶ昔に生産中止。自分で127フィルムをカットして使うか、特別にカットしてもらう小口注文サービスを利用するしかない。ただ、ネット上にふつうの135フィルムを工夫して使う方法も紹介されている。

もうひとつ、蛇腹が光線漏れの個体が結構みられる。約70年も昔の製造なので、仕方がないことかもしれないが、蛇腹部分の光線漏れをしっかりチェックしよう。ただ、フィルムが入手問題なので、実写は難しいかもしれない。

スローシャッターでは粘りが起きている個体が多い。ただ、レンズの前群を手で回して外し、さらにシャッターカバーを取り外せば、手軽にメンテナンスができるから、気にすることはあまりないだろう。レンズ交換ができない分、ライカに比べてシャッター関係は整備しやすく、壊れにくい。

<スペック>
型 名 コダック社製 バンタム・スペシャル
     Kodak Bantam Special
生産国 アメリカ(1936年)
使用フィルム 828
レンズ Kodak Anastigmat EKTAR 45mm F2、コーティングなし。
シャッター Compur-Rapid、T・B・1~1/500秒。T・Bはシャッターチャージしないで開くタイプ。シンクロ、セルフタイマなし。
連動型距離計付き。上下分割像だが、イメージが拡大されていて、精度が高く、見やすい。ビューファインダーとレンジファインダー(距離計)は別々となっている(2眼式)。ビューファインダーにフレーム等、変わった表示はない。フィート距離目盛、最短撮影距離 3ft。
露出計なし。
1枚1枚のフィルム出しは、裏蓋の緑窓(赤窓ではない!)を目視して確認するタイプ。
シャッターはチャージレバーでセットし、レリーズレバーで切るタイプ。2重撮影防止機構はない。

では、使い方を見ていこう。

<使い方>
前扉の脇にある小さなレバーを押すと、前扉が開く。前扉の下部分にツマミがあり、それを引っ張り出すと足が出てきて、カメラを縦にうまく立たせることができる。

つぎにフィルムを入れる。左肩、巻上げノブの隣にあるツマミを上に引っ張ると裏蓋が開く。フィルムを右側にいれ、先端を左の空スプールに差し込む。裏蓋を静かに閉める。裏蓋の緑窓からフィルムの数字を確認しつつ、裏蓋の左上部にあるボタンを押しながら巻上げる。慣れないと巻上げ操作は難しいかもしれないが、カメラをお腹に当てて、左手の親指でボタンを押し、右手で巻上げるとやりやすい。

露出計は内蔵してないので、外付露出計か勘で露出を決める。レンズ周りのリングでシャッタースピード調整、レンズ下のレバーで絞り調整を行う。Tと B 以外のシャッタースピードではシャッターチャージレバーをセットする。なお、順番としては必ず、スピード調整の後にシャッターチャージ。逆だとシャッターに悪影響を与えることもあるのでご注意を。

レンズ周りのレバーでピント合わせを行う。距離計は拡大イメージなので、とても見やすい。人差し指か中指でレリーズレバーを押し、シャッターを切る。

そのピント合わせレバーを最後まで押し込むと、ロックが解除され、前扉をしまうことができる。
</使い方>

フィルムの入手が困難かもしれないが、スーパー・イコンタ風の距離計、最高級エクターレンズ、デザインやエナメル塗装の素晴らしさ等、持つだけでも楽しい。アメリカ製カメラは日本ではあまり評価されていないが、このスペシャルモデル等は特別、2次大戦に勝てたアメリカのもつ圧倒的なパワーを雄弁に物語ってくれる逸品。

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唯一無二なシャッター機構をもつカメラ。とてもユニーク。

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—- Purma Special —-

ベークライト製。可動パーツの少なさがまず目に付く。トップカバーの右端にあるのは巻上げノブ。左の凹みにあるのはレリーズボタン。真中の前方にあるのはシャッターチャージレバー。ほかにレンズが沈胴できるぐらいで、可動部分は外からいっさい見えない。

では、絞りやピント合わせ、シャッタースピード等はどうやって調整するの、不思議に思うよね。実は、このカメラでは絞りもピント位置も固定式、調整不要なんだ。シャッタースピードは Slow/Normal/Fast の3段に変えられる。カメラを縦に構えると、Slow かFast、つまり、右の巻上げ側を下にすると Fast、上にすると Slow に変わる。横に構えて撮影すると中間の Normalスピードになる。シャッターはなんとフォーカルプレーンシャッター、メタルシャッター幕。引力を利用して、重りの向きによってシャッタースピードが決まるらしい。だから、引力のないところでは撮影できない。

シンプルの割に結構大きい。とくに横は半分にすればちょうどいいぐらいの大きさ。そのわけは変わったシャッターの搭載にあるだろう。菱形の胴体に、左右両側が半円形。手で持ちやすくするためのデザイン。ビスは外からは1本もみえない。ボディの大きさに比較して、レンズは小さく、迫力はまるで感じない。

<スペック>
型 名 イギリス製 Purma Special
生産国 イギリス(1937~1951年)
フィルム 127。 3x3cm の正方形画面。
レンズ Beck Anastigmat 2+1/4inch、F6.3。
シャッター フォーカルプレーン横走り、3段可変スピード。メタルシャッター幕。
距離計も露出計もついていない。
ファインダーにフレーム等の変わった表示はない。
1枚1枚のフィルム出しは、裏蓋の緑窓(なぜか赤窓になっていないね)から目視で確認するタイプ。

シンプルなので、使い方はそう難しくない。

裏蓋は左右のどちら側から強引に引っ張って取り外すタイプ。ロック機構もなにもない。127フィルムを左にセットし、先端を右の空スプールに差込み、裏蓋を閉める。フィルム圧板にTopとの表示があり、向きを上下逆にならないようにしよう。裏蓋の緑窓をみながら、巻上げておく。

絞りもピント合わせもできないから、やれることはスピード選びぐらい。正方形の写真になるので、使いたいスピードに応じて、縦か横に構える。斜めではスピードエラーになるかもしれないので、斜めの撮影はしないほうがいいだろう。シャッターチャージして、レリーズボタンを押し、シャッターを切る。また巻上げる。

撮影終われば、裏蓋を取り外し、フィルムを取り出す。

レンズをカビ等から守っておけば、いつ経っても作動してくれるカメラだろう。シャッターがとてもシンプルなので、器用なひとだと誰でもメンテナンスできる。数点の部品しかないから、驚くかもしれない。ただ、127フィルムがいつまで手に入れるかは心配。最近のクラシックカメラのブームのお陰で、多少供給してくれるようになったけれど。

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実用性に徹した、実質最後の国産2眼レフカメラ。

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— YASHICA Mat-124 G —-
ヤシカ社 ヤシカマット 124 G

ローライフレックスから始まった2眼レフは歴史が長く、とくに戦後、安いコストでつくれる実用機が数多く発売され、1950年代まではその全盛期だった。撮影レンズの上に、ピント合わせや撮影エリアを確認するためのビューレンズを設けることで、安い、頑丈、実用、3拍子の揃ったカメラをつくることができ、大ブレークした。しかし、60年代に入ると、国産一眼レフにその地位を譲り、衰退していき、1970年に発売されたこのモデルは実質最後の国産2眼レフとなった。マミヤのレンズ交換式2眼レフもあったが、ローライタイプとは別ものと考えよう。

2眼レフは基本的にローライと似たような構造だが、このヤシカマット124-Gはさらにデザインまでローライを徹底的に真似しだ。正面の絞りダイアルとシャッタースピードダイアル、ここまでに似せたスタイルは却って珍しい。しかし、スペックはなかなかのもの、Cds素子露出計搭載、フィルムも12枚撮りの120以外、24枚撮りの220も使える。高価なローライが買えなかったひとには十分アピールできた商品だったと思う。

<スペック>
型 名 ヤシカ社製 ヤシカマット 124-G
     Yashica Mat-124 G
生産国 日本(1970年)
フィルム 120(12枚撮り)、または 220(24枚撮り)。
レンズ 下の撮影レンズ Yashinon 80mm F3.5、コーティング有。
     上のビューレンズ Yashinon 80mm F2.8、コーティング有。
シャッター Copal-SV、B・1~1/500秒、MX シンクロ、セルフタイマ内蔵。
連動型露出計内蔵 Cds素子、水銀電池必要。対応するフィルム感度 ASA 25~400。
フィルムカウンターはオートリセット式。

露出計用電池はボディ左側の電池室に入れる。ファインダー・フードを開けるとスイッチ ON。フィルム感度、絞り、シャッタースピードと連動する。露出計の赤色針に追針式黄色針が合うように調整すればよい。

底のノブを O (Open) の方向に回ると、裏蓋が開く。フィルムを底に入れ、フィルムの先端を上の空フィルムスプールに差し込む。フィルム圧板を上下スライドすれば、120または220フィルムに対応する。フィルムのスタート位置を、120フィルムなら緑矢印、220フィルムなら赤矢印にあわせて巻上げる。裏蓋を閉め、底のノブをC (Close) の方向に回してロックする。

ファインダー・フードを開け、露出計オンさせる。絞り値やスピード値がローライと同様、レンズ上の窓から数字が読めるので、セットしやすい。巻上げクランクはボディの右側にあり、ストップまで時計回りに回し、逆方向に戻す。

ファインダーを見ながらピント合わせをする。ピント合わせノブはボディの左側にある。静かに正面のレリーズボタンを押し、シャッターを切る。レリーズボタンの根元にロックレバーもあり、Lの位置にすると押せなくなる。

撮影終えたら、裏蓋を開け、フィルムを取り出して完了。

ローライに慣れたひとには、全く戸惑うことなく、使用できるカメラ。スタイル上、これと言った特徴はないが、実用に徹した2眼レフ。最後のモデルということもなり、露出計以外に、トラブルも少ないカメラだろう。

デジカメの台頭によって、記録用としての使い方は少なくなるが、機械式カメラの頼もしさ、頑丈さはますます注目されていくだろう。貧弱な蛇腹カメラや、複雑なライカのような小型カメラよりも、2眼レフがその長寿命性が発揮するだろう。最後に生き残るカメラは2眼レフ、そうなるかもしれない。

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フィルムメーカーのドイツ・アグファ社製中型蛇腹カメラ。

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—- Agfa Isolette III —-
アグファ社 イソレッテ III

手元に色々な機種が転がっており、素材選びに困ることはないが、まとまりのある文章に仕上げるには根性が試される。幸い、仕事ではないし、気が向いたときに書けばいいので、気長にお付き合いくださいね。

今回はドイツのフィルムメーカーアグファ社製のカメラ紹介。フィルムメーカー、例えば、アメリカのコダック社や、日本の富士写真や小西六等も、色々なカメラをつくってきた。しかし、フィルム消費が目的なので、高級機よりも、大衆の手が届く価格帯のものが多かったようだ。より安いコストで、より多くのひとに撮影してもらう、そういう発想が根底にあっただろう。アグファ社から発売されたさまざまなカメラも、大衆向けのものがほとんど。名機がなかにいくつかあったが、全般的に評判はとくに日本ではそれほど高くなかった。

本機イソレッテIII は120フィルム使用の中型蛇腹カメラ、1950年代発売のイソレッテシリーズ最終モデル。距離計の内蔵がその特徴。レンズには連動しないが、ふつうの撮影には十分だろう。なお、同じカメラが、アメリカでは Ansco Speedex Special “R”というブランドで発売されていた。実力のある証とみていいだろう。

まとまりのある外観。左右両側にカーブしながら下がるファインダーのデザインが魅力的。レリーズボタンと前扉ロック解除ボタン、巻上げノブと被写界深度ダイアル、うまく左右対称に配置してある。その前扉ロック解除ボタンを押すと、前扉が勢い良く開くので、手で押しながらゆっくり開放してやるといいかも。

難点は蛇腹の弱さ。ツァイスイコン社製と比べ、角のところに光線漏れが生じる個体が多い。数十年も経ったので仕方のないかもしれないが、実写してしっかりした蛇腹のものを選ぼう。他の部分、ファインダーやシャッター等は、整備しやすいタイプなので、蛇腹さえしっかりしていれば、結構長く使えるだろう。

<スペック>
型 名 アグファ社製 イソレッテIII
     Agfa Isolette III
生産国 西ドイツ(1950年代)
使用フィルム 120、12枚撮影可能。6x6cm画面
レンズ Agfa Apatar 85mm F4.5、コーティング有、自社製、メートル距離表示、最短撮影距離 1m
シャッター Prontor-SV、B・1~1/300秒、MXシンクロ、セルフタイマ付
距離計付き、センター丸型2重像イメージ。ファインダーにほかに変わった表示はない。
露出計ない。
2重撮影防止機構内蔵。巻上げないと、レリーズボタンが押せないタイプ。なお、隣に小さな窓がついてて、赤点表示だと押せない警告となる。
被写界深度目盛がついている。
1枚1枚のフィルム出しは、裏蓋の赤窓から目視で確認するタイプ。自動ストップ機構ではない。

変わった使い方の少ないカメラだ。

<使い方>
カメラ横の裏蓋ロックレバーを下にスライドすれば、裏蓋が開く。左側のフィルム押えを引っ張り出して、フィルムをセットする。右側に空のスプールを用意し、巻上げノブを上に持ち上げてからセットする。フィルムの装着が完了したら、裏蓋を閉め、赤窓から数字1が見えるまで巻上げノブで巻上げる。

露出は外付け露出計か勘で決めよう。絞りセットレバーはレンズの周りにある。シャッタースピードはレンズ周りのスピード調整リングを回してセット。シャッターチャージレバーをチャージしておく。

距離計で被写体までの距離を測る。ファインダーから2重像をみながら、レリーズボタンの隣にある、距離合わせダイアルを回す。2重像自体は明るく、見やすい。2重像がぴったしあったところの目盛をレンズに移す。つまり、レンズを回し、目印◆に同じ距離目盛がくるようにする。

人差し指で静かにレリーズボタンを押し、シャッターを切る。裏蓋の赤窓からつぎの数字を確認しながら巻上げノブを回し、つぎの撮影に備える。12枚の撮影が終了した時点でフィルムを取り出す。日の当たらないところで裏蓋を開ける。

前扉の収納だが、レンズの左右両側のタスキを中央のところから左右両手の親指で押しながら、人差し指で前蓋を押し戻す。慣れると簡単。
</使い方>

派手さはないが、堅実に働いてくれるタイプ。蛇腹なので、光の乱反射も少なく、キレイな写真が撮れるはず。お勧めのアグファ。

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書かなきゃいけないカメラのの一つ、ライカ。よく知っている方が多いので、自分の感じたり思ったことを中心に書いてみる。

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—- Leitz Leica IIIf —-
ライツ社 ライカ IIIf

ひとつの商品に徹底して拘り、コツコツと長年月をかけて少しずつ進化させた稀なモデルケース。1925年登場のA型から1956発売のIIIgまで、30数年をかけて、固定式のレンズから交換式、レンズマウントの標準化、距離計の搭載、スロースピードの搭載、1/1000秒スピードの搭載、ボディのダイカスト化、フラッシュの追加、セルフタイマの搭載、ファインダーの大型化等、すこしずつ改良して進化させてきた。レンズの生産もしていたが、それはほとんどライカ用のものだった。

しかし、使える技術があれば、なんでも組込むということはしなかった。一つは露出計。ライバルのツァイス・イコン社は2眼レフコンタフレックスや、コンタックスIII型に組込みが成功したのに対し、ライカは最後のIIIgまで露出計は内蔵しなかった。バルナックカメラ専用外付け露出計のほとんどはいまになってセレンの劣化で使えなくなり、寿命的なことが原因のひとつだったかもしれないが、デザイン的、あるいは格納スペースからして搭載しなかったのが真実に近いだろう。機能よりもデザイン、スタイル、そういったライカたるものに徹底的に意識し、優先した結果のように感じる。露出計の不搭載は、今日となって結果的に良かったともいえる。コンタックスIIIよりもII型のほうが人気あるのは、やはり電気的なものは本質的に、時代の壁は超えられない、ということなんだろう。

同じことがフィルムの装填にも当てはまる。光線漏れの対策として考案された、底から入れる方式だが、最後まで変更することはなかった。初めて使うひとは間違いなく失敗することを考えると、そういったデザインや使い方の一貫性を優先させる姿勢がよく判るだろう。

さて、購入時の注意点をいくつか書いてみる。まずシャッター布幕は必ず劣化が起きること。布だからしかたがないかもしれないが、数十年も経てば、固くなったり、ひび割れが入ったり、穴が開いたり、よく見られる。全く使わなくても同じようになってしまう。しかも、ほかのカメラと違って、フィルム室から明かりに透かして確認することができない。実写しないと気づかないことがよくある。幸い、布だから、いつ経っても技術さえあれば、交換可能なのだ。だから、ライカはかならずオーバーホールしないと使えなくなるカメラのひとつ。数年とか、10数年とか、あるいはもっと長い年数の周期になるかもしれないが。

2つ目、シャッター、とくにスローシャッターではうまく機能しないことが結構ある。いわゆる粘りという現象。シャッターが途中で止まり、完全に閉じなかったり、シャッタースピードが大幅遅くなったり。カメラの持ち方(向き)によってそういう現象が起きたりするので、たちが悪い。また、レリーズボタンから指をすばやく離すと問題は起きないが、そのまま押し続けると症状が起きたり。精密さのゆえに、少しの汚れやゴミ、フィルムの細かな破片が混入すると正常に動作しなくなるかもしれない。また、最高速の1/1000秒ではシャッターが全開しないこともよくみられる。テンションの調整で直ることもあるが、多くの場合ほかのスピードでもなんらかの問題が伴う。こういうシャッター関係の症状は修理すれば、ほとんど直るが、レンズシャッターカメラ以上に故障しやすいのも事実だろう。

3つ目、距離計の鮮明度が落ちている個体が少なくない。ハーフミラーの劣化によるものだが、交換すれば必ず直る。ハーフミラーそのものの販売 も行われている。安くない価格だが、それで直せるなら文句はいえない。コンタックスだと、プリズム内、つまりガラス同士の接着面にハーフミラーコーティングがあり、それが劣化して薄くなると、そう簡単に修理できない。そういうところも、ライカの長寿命の原因なのかもしれない。壊れないのではなく、簡単に直せるところ。

4つ目。貼り革というか、樹脂でできたグッタペルカが、剥離しやすいこと。動物の皮ではないので、欠けやすく、割れやすい。いま風の革で貼り直せば、キレイになるが、オリジナルのままキープしたければ、十分気を使うことが必要。

コストを考えずに、精度高くしあげられたカメラなので、修理サポートさえしっかりしていれば、長期間機能してくれるだろう。人間は100年生きるのが大変難しいが、100才以上のライカ、あと30~40年も経てば、多く現われてくるだろう。

では、写真のライカ IIIf について書こう。IIIfにはセルフタイマ付きモデルや、フラッシュガイドナンバーの印字が赤色のモデル(レッドダイアルとよぶ)と黒色のモデル(ブラックダイアル)との違いがあるが、本個体は一番多くみられる、ブラックダイアルモデルだ。

<スペック>
型 名 ライツ社製 ライカ IIIf ブラックダイアル
     Leitz Leica IIIf Black Dial。
生産国 西ドイツ (1951年)。
使用フィルム 35mm。
フォーカルプレーン横走りシャッター スピード B・T・1~1/1000秒。シンクロ付。布シャッター幕。
連動型距離計付き。最短連動距離1m。ビューファインダーとレンジファインダーは別々、視度調整可。センター丸型2重像イメージ。
露出計なし。
フィルムカウンターは手で回してリセットするタイプ。
レンズマウント Lマウント(海外では SM (Screw Mount) マウントという)。

デザインは良くも悪くもライカそのもの、とても変わったスタイル。パッと見ただけで、ライカと認識できる。巻上げノブ、巻戻しノブ、シャッタースピードダイアル、スローダイアル、軍艦部、どれをとっても、ライカ以外のカメラとは違う。ただ、ライカを真似たライカコピーはデザイン的にあまり違わないことはいうまでもないだろう。コピーなんだから。

独特な使い方の多いカメラ。慣れないと使いやすいとはとても言えない。フィルムの装填は最初の大難関。レンズを外し、シャッターをT(タイム)にし、シャッター幕を全開させて、レンズ側から覗きながら確認するぐらいの慎重さが必要。また当然、フィルムを入れる前に、テレフォンカードや名刺等を差し込み、圧板を隠しておくことも必要だろう。何回も何回も練習を重ねること。

シャッタースピードのセットもユニーク。必ず巻上げてからセットすること。シャッタースピードダイアルが回転するので、巻上げておかないと正しい位置が判別できない。スピードダイアルを持ち上げ、回転させてセットする。1/1000秒のところだけは微妙に高い、故障ではなく、そういうつくり。また、スローシャッターを使うときは、シャッタースピードを1-30のところにセットしておかないといけない。

実際のスローシャッタースピードの調整は正面のスローダイアルで行う。30のところにロックがかかてるので、小さなロックレバーを指で押込み、ダイアルを回す。スローシャッターが使わないときは30の位置に戻すといいだろう。

X シンクロを使うとき、シャッタースピードダイアルの根元にあるレバーを20のところにあわせる。シャッタースピードはブラックダイアルの場合、1/30秒か1/15秒でないといけないので、あまり実用性がないかもしれない。

巻戻し解除レバーは巻上げノブの周りにある。Rのところに回すと、巻戻し可能になる。巻戻しノブを上に引っ張ってから回すと使いやすい。

視度調整レバーは巻戻しノブの根元にある。

距離計の横ズレは自分で調整できる。正面からみて、四角いビューファインダーの右隣にビスカバーがあり、それを外し、細めのドライバを差し込んで回すと調整できる。

距離計の縦ズレも自分で調整できるかもしれない。正面からみて、左側(中央)の丸いレンジファインダーの丸いリングを外し、さらにその中のガラス入りリングを回すと調整できる。ただ、丸いリングが固く締められたケースもあり、専用のツールを使わないと取り外せないかもしれないので、無理は禁物。

ついでに紹介しておく。ライカのシリアルナンバーは ここ にリストアップされている。本物や、改造モデルの確認、製造年数等を知るのに使える。シリアルナンバーの整理されたカメラは恐らくライカぐらいしかない。人々に愛されてきた証し。

高嶺の花のライカはいまでは数万円程度で簡単に買えてしまう。ライカは高くでなければいけないのに、いまの状況では本当に喜んでいいかどうか、よく判らない。安いものに高いお金を出して修理するひとがいなければ、修理職人がいなくなり、ライカは絶滅するしかないかもしれない。オーバーホールしないと運命的に機能しなくなるカメラ、それを忘れないでほしい。

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1956~58年にかけて、ツァイス・イコン社がつくった大衆向けのカメラ。商品コード 526/24。

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—- Zeiss Ikon Contina Ia —-
ツァイス・イコン社 コンチナ Ia

ツァイス・イコン社製カメラにしては特徴が少ない。横開き式裏蓋、レバー式巻上げ。現代風のマニュアルカメラと似たようなやり方で撮影できる。高いコストをかけてつくられたカメラではないかもしれないが、デザインは悪くない。正面の四角いメッキされたエプロンに、社名とモデル名がさりげなく彫り込まれている。フィルムカウンターの入っている巻上げパーツは丸く、反対側の巻戻しノブとほぼ同じ大きさ、同じデザイン。軍艦部もアクセサリーも真ん中に設けてあり、対称性の重視した外観がチャーミングポイントだろう。カメラ胴部自体は上からみるとほぼ8角形、握りやすい。

<スペック>
型 名 ツァイス・イコン社製 コンチナ Ia (商品コード 526/24) 
     Zeiss Ikon Contina Ia No. 526/24
生産国 西ドイツ(1956~58年)。
使用フィルム 35mm。
シャッター Prontor-SVS、1~1/300秒、MX シンクロ、セルフタイマ内蔵。
レンズ Novicar-Anastigmat 45mm F2.8、コーティングあり。距離表記はフィートとメートル併記。最短撮影距離 1m。
ビューファインダーのみ。ファインダー内にフレームもなにもなし。
距離計も露出計もなし。
フィルムカウンターは手で回してリセットするタイプ。
フィルムメモは巻戻しノブについている。

変わった使い方はレンズのシャッタースピードと絞りの調整ぐらいだろう。そのままでは連動して回るので、絞りリングを単独に回すにはボタンを押しながらやる必要がある。

<使い方>
カメラの横、巻戻し側のロックレバーを下に引っ張ると、裏蓋が開く。フィルムを入れて、静かに裏蓋を元に押し戻す。モルトは裏蓋のヒンジ部に極僅しか使われていない。良心の表明なのか、技術に対する自信の表れなのかは判らないが、日本メーカーの姿勢とは正反対。フィルムカウンターを反時計回りに回し、白い点を0に合わせる。

外付け露出計か勘で露出を決める。絞り値8だけが赤く印字してあるので、距離計のついてないことと、レンズの性能からして、絞りを8ぐらいにしてスピード調整するほうがよさそう。距離計もついてないので、目測か外付け距離計を使う。8メートル当たりに赤点がピントリングについているので、5メートル辺りから無限までは赤点の位置ですべてカバーできそう。近距離撮影しなければ距離計なくても支障はないだろう。それよりも手ブレやスロースピードによるピントボケが可能性高い。

絞り F8、距離 8m、88法則と命名したいが、他のカメラにも通用する目安だろう。

巻上げレバーで巻き上げ、静かにレリーズボタンを押しシャッターを切る。底の巻戻し解除ボタンを押すと、巻き戻しが可能となる。その解除ボタンは手で押さないとすぐに戻ってしまうタイプなので、完了までずっと押すこと。
</使い方>

ついでに紹介しておく。ツァイス・イコン社製 35mmカメラの各モデルリストは ここ にある。中型120フィルム用各モデルは ここ。ツァイス・イコン社は多くのカメラを生産していたので、こういうリストがあると助かる。

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史上最も美しいカメラのひとつ、そう呼ばれたこのコンタレックス・ブルズアイ。

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—- Zeiss Ikon Contarex Bullseye —-
ツァイス・イコン社 コンタレックス・ブルズアイ

世界で初めて露出計がシャッターやフィルム感度、絞りと連動した一眼レフカメラ。1958~66年にかけて約32,000台作られたそうだ。1964年以降、フォーカス・スクリーンが交換できる後期型も登場したが、商品コードは両方とも10.2401。発売当時はコンタレックス (The Contarex) の名称だったが、その後、後継モデルと区別するため、 I 型、あるいはブルズアイとの愛称で呼ばれるようになった。名前の由来は勿論、中央にある魅力的で大きな目。そこは露出計の受光部でしかないが、強烈な印象を見るひとに与える。いくら後継モデルが高機能であろうと、このモデルでなきゃダメだというひとが多い。

男性シンボルか女性シンボルか、この大きな目からはどうイメージしようとご自由だが、とにかく、このカメラはそのデザインがすべて。機能は二のつぎであろう。さらに、メッキの美しさ、ドイツ職人の手で仕上げられた精密感等と相まって、実用云々というよりも、鑑賞の対象として楽しませてくれる。そういう価値の持つカメラ。

レンズの真上に目のあるカメラといえば、同じツァイス社なら伯爵夫人こと、コンテッサ35も然り。ファインダー関係のちいちゃな目だが、前方には突き出していない。優雅で美しいとの評判。美と正面の丸目、なにか関係あるのだろうか。

購入時の注意点として、セレン板の劣化による露出計の不良が多いことがあげられる。それよりももっと深刻なのは、シャッター布幕の劣化による光線漏れや、シャッターそのものの不良が結構見られること。とくにシャッター周りを直すには高額な修理代が必要だが、鑑賞対象と割切れば、直さなくてもいいのでは。このカメラに手を出すひとは、何台もカメラを所有しているはずだから。

スペックはこの通り。

型 名 ツァイス・イコン社製 コンタレックス ブルズアイ (商品コード 10.2401)
     Zeiss Ikon Contarex Bullseye No.10.2401
製造国 西ドイツ(1958年以降)。
使用フィルム 35mm。
フォーカルプレーン横走りシャッター スピード B・1~1/1000秒。X シンクロ、セルフタイマ付。布シャッター幕。
フィルム感度設定範囲 ASA 5~1300。
外光式連動露出計付き。セレンタイプ、電池不要。
フィルムカウンターはオートリセットしない。フィルム装着後、手で回すタイプ。
コンタレックスマウント。レンズは広角から望遠まで、多種類も発売されていたが、標準レンズ以外は高価なものは多く、しかも、バルサム切れというか、剥離が起きて虹色に変色してしまうレンズが結構多い。

使い方の注意点として、まずシャッタースピードの設定があげられる。露出計は感度範囲が狭いのがその理由だが、フィルム感度の設定によっては、シャッタースピードダイアルが全スピードの一部しか選択できないのだ。フィルム感度リングがシャッタースピードダイアルと同軸にあるが、たとえば、フィルム感度を ASA100 にセットすると、選択できるシャッタースピードは 1/15~1/1000秒の範囲でしかなく、スロースピードまでにダイアルは回せないのだ。それを故障だと勘違いするひとがいるぐらい、変わった使い方を強要させられる。そういうわけで、いっそうのこと、フィルム感度を最低の ASA 5以下にセットしておいて、シャッタースピードダイアルを全速利用できるようにするといいかもしれない。露出は外付け露出計を使うか、自分の勘に頼る。露出計の逝かれた個体だと、なおさらこうして使って欲しいものだ。

では、他の部分をみていこう。

裏蓋は、30年代コンタックス Iからの伝統にのっとり、脱着式となっている。底左右両側のつまみを起こして回転すれば裏蓋が取り外せる。ライカの光線漏れに対する執念というか、慎重さに較べて、ツァイスのやり方はいかにも男性的、大胆そのもの。しかし、裏蓋から光線漏れが起きたことはあまり聞かない。日本メーカーの横開き方式に較べてやりにくいことは確かだが、メリットもある。裏蓋そのものを取り替えることができるからだ。そんなアクセサリは実際に販売され、モノクロフィルムとカラーフィルムを別々の裏蓋(正式名はフィルムマガジンと呼ぶ)に装着しておけば、撮影途中でも交換できる。当時ではすごいアイデアだっただろう。

しかし、実際に使ってみれば判ることだが、実用性はほとんどゼロ。仕組みが理解するまでは、この私でさえ、1時間かかってしまったし、決められた手順を踏まないと最悪、マガジンは取り外せなくなる、とんでもない事態に陥ることだってある。

さて、話はもとに戻そう。フィルムスプールも取り外し式なので、フィルムをうまくスプールにセットしておき、裏蓋を戻せば、フィルム装着はこれで完了。ついでに、フィルムカウンターをゼロにリセットしておく。

露出計の針はトップカバーの左側、巻き戻しノブ(クランクもついているが)の隣の窓から読める。さらに、ファインダーの右側、撮影エリアの外にも露出計の針が表示される。針が中央に来るよう、絞りダイアルやシャッタースピードダイアルを回す。それで適正露出になるはず。

巻上げは巻上げレバ―で行う。個体によっては重いかもしれないが、最後まで確実に巻上げておこう。シャッターレリーズボタンは巻上げレバーの中央にあるが、個体によってはシャッターの切るタイミングに戸惑うことがあるかもしれない。ブレないよう、静かにレリーズボタンを押す。

底部の巻上げ側つまりを起こし、少し回転させ、Rという刻印に合わせれば、巻き戻しが可能となる。大型巻き戻しノブで戻してもいいし、クランクを起こし戻してもよい。

セルフタイマレバーは正面のレンズ左側にある。途中解除はできないが、約10秒でシャッターが切れる。

使い勝手のいいカメラとはいえないかもしれないが、このカメラの真髄はその美にあり。それを手元にキープしたければ、努力は惜しんではいけないと思う。

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日本 大和光機(YAMATO OPTICAL CO)製、1957年生まれのカメラ。

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—- Yamato Pax M3 —-
大和光機 パックス M3

Paxシリーズに、Pax 35、Jr、M2、M3、M4、数種類もあるようだけど、特徴はそのちいちゃなサイズ。それと、M型ライカに似せたデザイン。戦後の外貨稼ぎに、製品の多くは海外に輸出されてて、いまのほとんどが海外からの還流品だろう。

しかし、劣質なグリースが使われたせいか、現存品の多くはピントリングが動かず、故障している。このカメラもそんな一台、ずっと手元に残されてきた。

手に取ってみると確かに小ささがまず印象に残る。取り外し式裏蓋がそれを可能にしたと思うけど、世界最小のライカ、海外ではそう呼ばれたらしい。私にはそうと見えないが。

軍艦部がさまになっているし、大きな巻上げレバ―もチャーミングのひとつ。連動可能な距離計がついているのも凄いのひとこと。全体的にまとまりがよく、オモチャには見えない。精密機器だぞ、そんな質感が伝わってくるね。

では、スペックの確認。

型 名 大和光機製 Pax M3。
製造国 日本(1957年)。
使用フィルム 35mm。
レンズシャッター スピード B、1/10~1/300秒。FX シンクロ、セルフタイマなし。
レンズ Luminor Anastigmat 45mm F2.8、コーティングあり。
距離計内蔵 センター2重四角イメージ、ピントリングに連動。距離目盛はフィート、最短距離 3ft。
露出計なし。
裏蓋を取り外すと、フィルムカウンターがリセットされる。
専用の Pax UV フィルターが本個体についている。

レバー式巻上げ、セルフチャージ、フィルム1コマ毎に自動ストップ、今風のカメラと全く同じ操作で使用できて、嬉しい。当時に売られたほかのカメラを考えると、結構高機能だったことに気づく。おまけに、フィルム感度メモも巻上げレバ―についているし。

底のダイアルを回すと裏蓋が取れる。薄い遮光板がレンズ周りの壁に貼ってあって、手抜きの痕跡がない。遮光材に黒糸が使かわれ、モルトのように劣化する心配もない。真面目につくられたカメラ、内部をつぶさに見ていると、そんなことに気づいてくる。

<使い方>
フィルムを入れる。底部の中央にあるダイアルを刻印 O (Openの意)の位置まで回し、裏蓋を取り外す。パトローネをセットし、フィルムの先端を右のスプールに差し込む。スプロケットにフィルムのパーフォレーションを噛ませて、裏蓋を静かに差し戻す。底のダイアルを L (Lockの意) にしてロックする。

レンズ周りの絞りリングやシャッタースピードリングを回して、露出を決める。露出計がカメラについてないので、勘か外付け露出計を使うと良い。

ファインダーの距離計2重像をみながら、レンズのピントリングを回して距離を決める。ピントリングにレバーもついているので、慣れてくると距離計みなくても大まかなセットはできるだろう。

撮影スタンバイはこれで完了。巻上げてシャッターボタンでレリーズし、シャッターを切る。

巻戻し解除ボタンは巻上げレバ―の脇にある。巻戻しをやっている間にずっと押さないといけないタイプ。巻戻しノブを上に引っ張り出して巻戻す。最後に裏蓋を取り外し、フィルムを回収。

変わった使い方の全くないカメラだ。
</使い方>

小さなサイズが手の大きなひとには却って使いにくいかもしれない。しかし、故障してなければ、今日でも普通に使える超小型カメラとして、その存在を認めてあげようよ。

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最初のお宝の登場。西ドイツ ツァイス社とフォクトレンダー社が合併して、1967~69年にかけてつくられたカメラ。

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—- Voigtlander Vitomatic II cs —-
フォクトレンダー社・ビトマチック II CS

フォクトレンダー社のビトマチックシリーズは、I (1958) からスタートして、III CS (1967) で消滅。最後のIII CS ではウルトロンレンズの搭載になったけど、他のスペックはこの II CS と変わらないらしい。

このカメラはたまたま手元にあるものだけど、同タイプを見かけたことはほんの数回しかなかった。日本製品の大攻勢の前じゃ、当時では売れるはずもなかったかな。

まず全体の印象。シャッターレリーズレバーが正面のレンズ脇にあるところから、それまでの ビトマチックと違うデザインに意識させられる。手ブレ防止に良いか悪いかは判らないけど、Cds露出計の搭載等、内部スペース的な制限からくる変更なのかもしれない。

正面の、ファインダー周りのフレームに少々の威圧感を覚える。好みの別れるところだけど、個人的にはそれまでのデザインのほうが好き。

しかし全体的に、ビトマチックの流れから大きく外れることなく、当時の最新技術を取り込んだところを評価してよさそう。電池室ひとつをみても、技術者の努力がよく伝わってくるし。

では、実物を見ながら、スペックを書いておく。

型 名 フォクトレンダー社製 ビトマチック IIcs
     Voigtlander Vitomatic IIcs
製造国 西ドイツ(1967~69年)。
使用フィルム 35mm。
レンズシャッター PRONTOR 500 SLK-V、スピード B・1~1/500秒、X シンクロのみ、セルフタイマ付き。
レンズ Color-Skopar 50mm F2.8。コーティングあり。
距離計内蔵 センター2重丸イメージ、ピントリングに連動。ドイツから送られてきたからかな、距離目盛はメートル。最短距離 1m。
Cds露出計内蔵、水銀電池が1つ必要。電池のOn/Off スイッチはないようだが、電池容量の確認スイッチがついている。
ファインダーは等倍式。ブライトフレーム、距離計の2重イメージが見える。下の横一列に露出計の針、電池容量の有無を表す緑・赤部分あり、さらに、右下では、レンズ周りの絞り値の一部とシャッタースピード値の一部が光学的に見えるように工夫されている。
フィルムカウンターが底部にあり、裏蓋を開けるとリセットされる。

内蔵された露出計にCds素子となっているところは新鮮。露出計自体は追針式、つまり、ファインダーからは露出計の針と、先端の丸い針が2本見える。フィルム感度や、絞り、またはシャッタースピードを変えると、丸い針が連動して左右に動く。露出計の針が丸の中に入るように調整すればよし。

電池室はなんとトップカバーの右端に設けてある。乳白色のカバーを外すと電池が出てくる。そんなところにあるなんて、なかなか判らないものね。電池容量のチェックボタンは正面の、レリーズレバーのすこし上についてある。そのスイッチもあまり気づかれないかも。

ミラーやレンズを複数使い、絞りやスピードの値をファインダーから見えるようにしたのがさすがだが、中途半端の感は否めない、それらの数値は一部しか見えないからだ。東ドイツのWerramatic なんか、西側にバカされるかもしれないけど、一部じゃなく、全部見えるようになっているぞ。

もうひとつ、ユニックな機構は巻戻しクランクにみられる。ボディ左脇の巻戻し解除レバーを動かすと、そのクランクがほんの少し飛び上がるのだ。上がったクランクをもとに押し戻すと、解除レバーもリセットされる。なんて可愛い仕掛けだろう。技術者の遊び心がそんなちいちゃなところに隠されてて、嬉しい。

ビトマチックII 等でよく問題となった、フィルムインジケータ部の印字薄や、絞りリングの腐食発生は、このタイプになると完全に解消された。時代遅れのフィルムインジケータはなくなったし、絞りリングも黒塗装と変わっている。

フィルムを入れないとシャッターがチャージされない機構なので、空シャッターを切ってみたいときには、フィルムを入れるのが無難だろう。

底落しによる裏蓋の開け方。ビトマチックの伝統がこのタイプにも生かされている。

ここで、簡単な使い方をまとめてみる。

<使い方>
前準備として、露出計用水銀電池を入れる。トップカバーの右側、丸い乳白色部が電池室カバー。矢印のところを爪先で引っ張るとカバーが取れる。戻すには、まず片側を引っかけてから、静かにカバー全体を押すとOK。案外やりづらいかも。

フィルム感度のセット。レンズ周りに絞りリング・フィルム感度リングが前後くっ付いている。底の突起を押して、フィルム感度リングだけを回す。ASA 25~800に対応している。

フィルムをいれる。底カバーにある、ロックレバーを爪先で起こし、90度回転させてロックレバーを引っ張ると裏蓋が開く。パトローネをまずセットし、フィルムの先端を、右端のスプールに差し込む。そのため、巻上げレバーを動かしてスプールの割れ目をみえるようにする。フィルムレールの真中にあるギアにうまくフィルムのパーフォレーションを噛ませて、裏蓋を静かに閉める。説明ではめんどくさく感じるが、ふううのカメラとの違いはあまりない。ロックをかけ、底のロックレバーを戻す。巻上げレバ―をストップまで巻上げる。

ファインダーから露出計を見ながら、絞りや、シャッタースピードを決める。手ブレにならぬよう、野外ではスピード1/60秒以上を使うといいかも。

ファインダーから距離計の2重像を見ながら、レンズのピントリングを回し撮影距離を決める。

これで撮影スタンバイOK。

フィルムを使い切ったら巻戻す。ボディの左側の解除レバーを爪先で後ろに引っ張ると、巻戻しクランクがほんのすこし飛び上がる。矢印方向にクランクを回す。巻戻し終了したところ、フィルムを取り出し、巻戻しクランクを押し戻す。
</使い方>

実際にカメラを構えて撮影してみると、レンズ脇のレリーズレバーが案外使いやすいことに気づく。右手の人差し指が電池室カバーに置くと、中指が自然とレバーの上にくる。しかも親指のところにちょうど巻上げレバ―があり、スムーズに撮影ができた。うーん、いい感じ。

撮影して判ったことだが、野外では1/60秒以上でシャッターを切ることがほとんど。その部分のスピードはちょうどファインダーから見える位置にあり、大した欠陥ではなかった。ファインダーに撮影に必要な情報が多く、慣れが必要だが、等倍ファインダーはやはり見やすい。

フォクトレンダー社製品のもうひとつの特徴はそのメッキの美しさにある。このカメラも例にもれず、メッキにキズ一つなく、当時のまま輝いているようにみえて、尊敬する。

数十年後の今日でも、なにひとつ故障なく撮影できて、当時の姿を鑑賞できることに、私は至福を感じてやまない。

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もうひとつ、趣味の世界をお見せしよう。

この世界に入って、あれこれ6年になった。異常なほどまでに規模が拡大し、趣味というよりも、もやは生活の一部になってしまった。しかし、没頭すればストレスも悩みも何もかも忘れるから好き。色々な方々との出会いも楽しみのひとつ。

宝物の数々をこのブログに多く記録し、あわただしく流れる時間のなかで、楽しい思い出としてすこしでも残せるならば。

なお、ここの文章はすべて私個人の独断に基づくもの。勘違いや間違いは数多くあるはず。ご注意を。

また、写真はすべて実物から撮るつもり。いつまでも実物が手元にあるわけではないことは事実だが。