史上最も美しいカメラのひとつ、そう呼ばれたこのコンタレックス・ブルズアイ。

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—- Zeiss Ikon Contarex Bullseye —-
ツァイス・イコン社 コンタレックス・ブルズアイ

世界で初めて露出計がシャッターやフィルム感度、絞りと連動した一眼レフカメラ。1958~66年にかけて約32,000台作られたそうだ。1964年以降、フォーカス・スクリーンが交換できる後期型も登場したが、商品コードは両方とも10.2401。発売当時はコンタレックス (The Contarex) の名称だったが、その後、後継モデルと区別するため、 I 型、あるいはブルズアイとの愛称で呼ばれるようになった。名前の由来は勿論、中央にある魅力的で大きな目。そこは露出計の受光部でしかないが、強烈な印象を見るひとに与える。いくら後継モデルが高機能であろうと、このモデルでなきゃダメだというひとが多い。

男性シンボルか女性シンボルか、この大きな目からはどうイメージしようとご自由だが、とにかく、このカメラはそのデザインがすべて。機能は二のつぎであろう。さらに、メッキの美しさ、ドイツ職人の手で仕上げられた精密感等と相まって、実用云々というよりも、鑑賞の対象として楽しませてくれる。そういう価値の持つカメラ。

レンズの真上に目のあるカメラといえば、同じツァイス社なら伯爵夫人こと、コンテッサ35も然り。ファインダー関係のちいちゃな目だが、前方には突き出していない。優雅で美しいとの評判。美と正面の丸目、なにか関係あるのだろうか。

購入時の注意点として、セレン板の劣化による露出計の不良が多いことがあげられる。それよりももっと深刻なのは、シャッター布幕の劣化による光線漏れや、シャッターそのものの不良が結構見られること。とくにシャッター周りを直すには高額な修理代が必要だが、鑑賞対象と割切れば、直さなくてもいいのでは。このカメラに手を出すひとは、何台もカメラを所有しているはずだから。

スペックはこの通り。

型 名 ツァイス・イコン社製 コンタレックス ブルズアイ (商品コード 10.2401)
     Zeiss Ikon Contarex Bullseye No.10.2401
製造国 西ドイツ(1958年以降)。
使用フィルム 35mm。
フォーカルプレーン横走りシャッター スピード B・1~1/1000秒。X シンクロ、セルフタイマ付。布シャッター幕。
フィルム感度設定範囲 ASA 5~1300。
外光式連動露出計付き。セレンタイプ、電池不要。
フィルムカウンターはオートリセットしない。フィルム装着後、手で回すタイプ。
コンタレックスマウント。レンズは広角から望遠まで、多種類も発売されていたが、標準レンズ以外は高価なものは多く、しかも、バルサム切れというか、剥離が起きて虹色に変色してしまうレンズが結構多い。

使い方の注意点として、まずシャッタースピードの設定があげられる。露出計は感度範囲が狭いのがその理由だが、フィルム感度の設定によっては、シャッタースピードダイアルが全スピードの一部しか選択できないのだ。フィルム感度リングがシャッタースピードダイアルと同軸にあるが、たとえば、フィルム感度を ASA100 にセットすると、選択できるシャッタースピードは 1/15~1/1000秒の範囲でしかなく、スロースピードまでにダイアルは回せないのだ。それを故障だと勘違いするひとがいるぐらい、変わった使い方を強要させられる。そういうわけで、いっそうのこと、フィルム感度を最低の ASA 5以下にセットしておいて、シャッタースピードダイアルを全速利用できるようにするといいかもしれない。露出は外付け露出計を使うか、自分の勘に頼る。露出計の逝かれた個体だと、なおさらこうして使って欲しいものだ。

では、他の部分をみていこう。

裏蓋は、30年代コンタックス Iからの伝統にのっとり、脱着式となっている。底左右両側のつまみを起こして回転すれば裏蓋が取り外せる。ライカの光線漏れに対する執念というか、慎重さに較べて、ツァイスのやり方はいかにも男性的、大胆そのもの。しかし、裏蓋から光線漏れが起きたことはあまり聞かない。日本メーカーの横開き方式に較べてやりにくいことは確かだが、メリットもある。裏蓋そのものを取り替えることができるからだ。そんなアクセサリは実際に販売され、モノクロフィルムとカラーフィルムを別々の裏蓋(正式名はフィルムマガジンと呼ぶ)に装着しておけば、撮影途中でも交換できる。当時ではすごいアイデアだっただろう。

しかし、実際に使ってみれば判ることだが、実用性はほとんどゼロ。仕組みが理解するまでは、この私でさえ、1時間かかってしまったし、決められた手順を踏まないと最悪、マガジンは取り外せなくなる、とんでもない事態に陥ることだってある。

さて、話はもとに戻そう。フィルムスプールも取り外し式なので、フィルムをうまくスプールにセットしておき、裏蓋を戻せば、フィルム装着はこれで完了。ついでに、フィルムカウンターをゼロにリセットしておく。

露出計の針はトップカバーの左側、巻き戻しノブ(クランクもついているが)の隣の窓から読める。さらに、ファインダーの右側、撮影エリアの外にも露出計の針が表示される。針が中央に来るよう、絞りダイアルやシャッタースピードダイアルを回す。それで適正露出になるはず。

巻上げは巻上げレバ―で行う。個体によっては重いかもしれないが、最後まで確実に巻上げておこう。シャッターレリーズボタンは巻上げレバーの中央にあるが、個体によってはシャッターの切るタイミングに戸惑うことがあるかもしれない。ブレないよう、静かにレリーズボタンを押す。

底部の巻上げ側つまりを起こし、少し回転させ、Rという刻印に合わせれば、巻き戻しが可能となる。大型巻き戻しノブで戻してもいいし、クランクを起こし戻してもよい。

セルフタイマレバーは正面のレンズ左側にある。途中解除はできないが、約10秒でシャッターが切れる。

使い勝手のいいカメラとはいえないかもしれないが、このカメラの真髄はその美にあり。それを手元にキープしたければ、努力は惜しんではいけないと思う。

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日本 大和光機(YAMATO OPTICAL CO)製、1957年生まれのカメラ。

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—- Yamato Pax M3 —-
大和光機 パックス M3

Paxシリーズに、Pax 35、Jr、M2、M3、M4、数種類もあるようだけど、特徴はそのちいちゃなサイズ。それと、M型ライカに似せたデザイン。戦後の外貨稼ぎに、製品の多くは海外に輸出されてて、いまのほとんどが海外からの還流品だろう。

しかし、劣質なグリースが使われたせいか、現存品の多くはピントリングが動かず、故障している。このカメラもそんな一台、ずっと手元に残されてきた。

手に取ってみると確かに小ささがまず印象に残る。取り外し式裏蓋がそれを可能にしたと思うけど、世界最小のライカ、海外ではそう呼ばれたらしい。私にはそうと見えないが。

軍艦部がさまになっているし、大きな巻上げレバ―もチャーミングのひとつ。連動可能な距離計がついているのも凄いのひとこと。全体的にまとまりがよく、オモチャには見えない。精密機器だぞ、そんな質感が伝わってくるね。

では、スペックの確認。

型 名 大和光機製 Pax M3。
製造国 日本(1957年)。
使用フィルム 35mm。
レンズシャッター スピード B、1/10~1/300秒。FX シンクロ、セルフタイマなし。
レンズ Luminor Anastigmat 45mm F2.8、コーティングあり。
距離計内蔵 センター2重四角イメージ、ピントリングに連動。距離目盛はフィート、最短距離 3ft。
露出計なし。
裏蓋を取り外すと、フィルムカウンターがリセットされる。
専用の Pax UV フィルターが本個体についている。

レバー式巻上げ、セルフチャージ、フィルム1コマ毎に自動ストップ、今風のカメラと全く同じ操作で使用できて、嬉しい。当時に売られたほかのカメラを考えると、結構高機能だったことに気づく。おまけに、フィルム感度メモも巻上げレバ―についているし。

底のダイアルを回すと裏蓋が取れる。薄い遮光板がレンズ周りの壁に貼ってあって、手抜きの痕跡がない。遮光材に黒糸が使かわれ、モルトのように劣化する心配もない。真面目につくられたカメラ、内部をつぶさに見ていると、そんなことに気づいてくる。

<使い方>
フィルムを入れる。底部の中央にあるダイアルを刻印 O (Openの意)の位置まで回し、裏蓋を取り外す。パトローネをセットし、フィルムの先端を右のスプールに差し込む。スプロケットにフィルムのパーフォレーションを噛ませて、裏蓋を静かに差し戻す。底のダイアルを L (Lockの意) にしてロックする。

レンズ周りの絞りリングやシャッタースピードリングを回して、露出を決める。露出計がカメラについてないので、勘か外付け露出計を使うと良い。

ファインダーの距離計2重像をみながら、レンズのピントリングを回して距離を決める。ピントリングにレバーもついているので、慣れてくると距離計みなくても大まかなセットはできるだろう。

撮影スタンバイはこれで完了。巻上げてシャッターボタンでレリーズし、シャッターを切る。

巻戻し解除ボタンは巻上げレバ―の脇にある。巻戻しをやっている間にずっと押さないといけないタイプ。巻戻しノブを上に引っ張り出して巻戻す。最後に裏蓋を取り外し、フィルムを回収。

変わった使い方の全くないカメラだ。
</使い方>

小さなサイズが手の大きなひとには却って使いにくいかもしれない。しかし、故障してなければ、今日でも普通に使える超小型カメラとして、その存在を認めてあげようよ。

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最初のお宝の登場。西ドイツ ツァイス社とフォクトレンダー社が合併して、1967~69年にかけてつくられたカメラ。

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—- Voigtlander Vitomatic II cs —-
フォクトレンダー社・ビトマチック II CS

フォクトレンダー社のビトマチックシリーズは、I (1958) からスタートして、III CS (1967) で消滅。最後のIII CS ではウルトロンレンズの搭載になったけど、他のスペックはこの II CS と変わらないらしい。

このカメラはたまたま手元にあるものだけど、同タイプを見かけたことはほんの数回しかなかった。日本製品の大攻勢の前じゃ、当時では売れるはずもなかったかな。

まず全体の印象。シャッターレリーズレバーが正面のレンズ脇にあるところから、それまでの ビトマチックと違うデザインに意識させられる。手ブレ防止に良いか悪いかは判らないけど、Cds露出計の搭載等、内部スペース的な制限からくる変更なのかもしれない。

正面の、ファインダー周りのフレームに少々の威圧感を覚える。好みの別れるところだけど、個人的にはそれまでのデザインのほうが好き。

しかし全体的に、ビトマチックの流れから大きく外れることなく、当時の最新技術を取り込んだところを評価してよさそう。電池室ひとつをみても、技術者の努力がよく伝わってくるし。

では、実物を見ながら、スペックを書いておく。

型 名 フォクトレンダー社製 ビトマチック IIcs
     Voigtlander Vitomatic IIcs
製造国 西ドイツ(1967~69年)。
使用フィルム 35mm。
レンズシャッター PRONTOR 500 SLK-V、スピード B・1~1/500秒、X シンクロのみ、セルフタイマ付き。
レンズ Color-Skopar 50mm F2.8。コーティングあり。
距離計内蔵 センター2重丸イメージ、ピントリングに連動。ドイツから送られてきたからかな、距離目盛はメートル。最短距離 1m。
Cds露出計内蔵、水銀電池が1つ必要。電池のOn/Off スイッチはないようだが、電池容量の確認スイッチがついている。
ファインダーは等倍式。ブライトフレーム、距離計の2重イメージが見える。下の横一列に露出計の針、電池容量の有無を表す緑・赤部分あり、さらに、右下では、レンズ周りの絞り値の一部とシャッタースピード値の一部が光学的に見えるように工夫されている。
フィルムカウンターが底部にあり、裏蓋を開けるとリセットされる。

内蔵された露出計にCds素子となっているところは新鮮。露出計自体は追針式、つまり、ファインダーからは露出計の針と、先端の丸い針が2本見える。フィルム感度や、絞り、またはシャッタースピードを変えると、丸い針が連動して左右に動く。露出計の針が丸の中に入るように調整すればよし。

電池室はなんとトップカバーの右端に設けてある。乳白色のカバーを外すと電池が出てくる。そんなところにあるなんて、なかなか判らないものね。電池容量のチェックボタンは正面の、レリーズレバーのすこし上についてある。そのスイッチもあまり気づかれないかも。

ミラーやレンズを複数使い、絞りやスピードの値をファインダーから見えるようにしたのがさすがだが、中途半端の感は否めない、それらの数値は一部しか見えないからだ。東ドイツのWerramatic なんか、西側にバカされるかもしれないけど、一部じゃなく、全部見えるようになっているぞ。

もうひとつ、ユニックな機構は巻戻しクランクにみられる。ボディ左脇の巻戻し解除レバーを動かすと、そのクランクがほんの少し飛び上がるのだ。上がったクランクをもとに押し戻すと、解除レバーもリセットされる。なんて可愛い仕掛けだろう。技術者の遊び心がそんなちいちゃなところに隠されてて、嬉しい。

ビトマチックII 等でよく問題となった、フィルムインジケータ部の印字薄や、絞りリングの腐食発生は、このタイプになると完全に解消された。時代遅れのフィルムインジケータはなくなったし、絞りリングも黒塗装と変わっている。

フィルムを入れないとシャッターがチャージされない機構なので、空シャッターを切ってみたいときには、フィルムを入れるのが無難だろう。

底落しによる裏蓋の開け方。ビトマチックの伝統がこのタイプにも生かされている。

ここで、簡単な使い方をまとめてみる。

<使い方>
前準備として、露出計用水銀電池を入れる。トップカバーの右側、丸い乳白色部が電池室カバー。矢印のところを爪先で引っ張るとカバーが取れる。戻すには、まず片側を引っかけてから、静かにカバー全体を押すとOK。案外やりづらいかも。

フィルム感度のセット。レンズ周りに絞りリング・フィルム感度リングが前後くっ付いている。底の突起を押して、フィルム感度リングだけを回す。ASA 25~800に対応している。

フィルムをいれる。底カバーにある、ロックレバーを爪先で起こし、90度回転させてロックレバーを引っ張ると裏蓋が開く。パトローネをまずセットし、フィルムの先端を、右端のスプールに差し込む。そのため、巻上げレバーを動かしてスプールの割れ目をみえるようにする。フィルムレールの真中にあるギアにうまくフィルムのパーフォレーションを噛ませて、裏蓋を静かに閉める。説明ではめんどくさく感じるが、ふううのカメラとの違いはあまりない。ロックをかけ、底のロックレバーを戻す。巻上げレバ―をストップまで巻上げる。

ファインダーから露出計を見ながら、絞りや、シャッタースピードを決める。手ブレにならぬよう、野外ではスピード1/60秒以上を使うといいかも。

ファインダーから距離計の2重像を見ながら、レンズのピントリングを回し撮影距離を決める。

これで撮影スタンバイOK。

フィルムを使い切ったら巻戻す。ボディの左側の解除レバーを爪先で後ろに引っ張ると、巻戻しクランクがほんのすこし飛び上がる。矢印方向にクランクを回す。巻戻し終了したところ、フィルムを取り出し、巻戻しクランクを押し戻す。
</使い方>

実際にカメラを構えて撮影してみると、レンズ脇のレリーズレバーが案外使いやすいことに気づく。右手の人差し指が電池室カバーに置くと、中指が自然とレバーの上にくる。しかも親指のところにちょうど巻上げレバ―があり、スムーズに撮影ができた。うーん、いい感じ。

撮影して判ったことだが、野外では1/60秒以上でシャッターを切ることがほとんど。その部分のスピードはちょうどファインダーから見える位置にあり、大した欠陥ではなかった。ファインダーに撮影に必要な情報が多く、慣れが必要だが、等倍ファインダーはやはり見やすい。

フォクトレンダー社製品のもうひとつの特徴はそのメッキの美しさにある。このカメラも例にもれず、メッキにキズ一つなく、当時のまま輝いているようにみえて、尊敬する。

数十年後の今日でも、なにひとつ故障なく撮影できて、当時の姿を鑑賞できることに、私は至福を感じてやまない。

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