ガラクタの山がまた転がってきた。100本を超えたMT管。今回はテレビ用とのことで、整流管はなく、出力管もなかった。

真空管テレビに使う真空管の数はどれぐらいだろう。全く知らないので、調べてみた。15本とか、25本とかいろいろあるが、30本以下のようだ。100本の真空管なら5、6台相当ということかもしれない。

最も数的に多かったのは 6BX6、6AW7A

同じ種類で最も多かったのは 6BX6 と 6AW7A。前者は美しい真空管の代表格のようだが、ヨーロッパ生まれのシャープカットオフ5極管。後者は3極5極複合管、オーディオアンプの出力管として利用されることが割とある。当然、オーディオアンプの世界では、3極5極管の代表格である 6BM8 には敵わない。

珍しい球をあえてガラクタから選ぶとしたら、つぎの3つにする。

珍しい球かな。左から 17AB9、EBF89、2D21。

17AB9は双4極管。名前からも推測できるように、ピンの数は10本。販売しているソケットはあまりないかもしれない。2~7極の真空管のうち、6極管はないかもしれないが、ほかはすべて実物を所有することになった。といいたいところだが調べたら8極管もあったらしい。この組み合わせをやろうとすれば、莫大の種類になることは確かだ。

EBF89はフィリップス製、米国では6DC8と登録される。6DC6 はコリンズ球として有名だが、6DC8 もただものではない。双2極・リモートカットオフ5極複合管。6BX6 の網部分は倍の高さになり、より美しく見える。

2D21はサイラトロンと呼ばれる大電力制御に使う球。見た目はしょぼいが、それを欠かせないところもある。

さて、標準電圧のMT管はガラクタの半分以上を占めるが、ヒーター電圧が 2, 3, 4, 5, 7, 8, 9, 12, 17 となんでもあり。真空管テレビもトランスレスかな。自分だと感電するのが怖くて、買いたくない。

1本1本のガラクタをクリーニングして、ピン直し、スペック調べ、ヒーター電圧確認をするので、ガラクタの山を片付けるには数日を要する。

もっとも困るのは、型番が消えたり、ほぼ消えた球の存在。似たような球を探してきて調べ、ヒーター電圧を測定して推測するなり、謎解きのようなプロセスだ。10本もあるので、時間がいくらあっても足りない。どうしても判別不能なら捨てるしかないかもしれない。

たとえば、ほぼ消えていたが、かろうじて 6A?6 と読めた球があった。ヒーター電圧を測ると 6.3V / 0.3A。それでほぼ 6AU6 と推測できた。そして、型番が表示されている 6AU6 と内部構造を比較して確信させられた。6A 6と3文字まで読めたことに助けられた。

有名な球 6AU6。左から3番目は表示がほぼ消えたが、同じ型番であることを確信。一番右は 6AU6A、外観の違いは認められる。

ヒーターは点火しない、ゲッターは消えたとかの球はなく、良心的なセラーだと感じた。また、ガラクタの山ゆえの全く知らない球に出会たことも良かった。

増えすぎた球をどう処分するか、最大の悩みはそれだ。

コロナ禍中のお盆休みに、長年放棄してきたコリンズ 75S-3 の修理に決心して、真空管に真剣に向きあってから約2ヶ月間、コツコツ集めた真空管の数は100を超えた(トランジスタの何万個に比べれば全く可愛いものだが)。ただ、真空管オーディオアンプに興味はなく、高価な出力管に見向きもしないので、それほどの金額ではないと思う。平均単価は1本あたり500円前後か。

当初は知識が乏しく、Collins 75S-3 の球を中心に集めた。

球は大部分が双三極管、五極管、三極五極複合管。当初は標準ヒーター電圧 6.3V か 12.6V (12AX7/12AU7のみ)だけが対象だったが、4.7V や 3.15V の活用法をわかったら、半値以下で購入できるそれらを喜んで手に入れた。とくに、3.15V はふたつを直列接続すれば、そのまま 6.3V になるので、性能的にもエネルギー的にも影響がほとんどない。さらに、開発や製造が標準ヒーター電圧のものよりも後なので、安心感は多少増す。

Trio JR-310 がヒントになり、対象の球は広げていった。
白箱はほとんどが自作。100円ショップで購入した厚紙で、24個つくれる。
4.7V や 3.15V の球も視野に取り入れた。

購入先は一部アメリカ・イギリス・台湾等の海外だが、大多数はメルカリかヤフオク、国内店舗の購入はごく僅か。ヤフオクの評判はあまり芳しくないが、自分の実体験では、間違えられた品番の真空管が2本あったことに対して、注文もしていないのに、余分の真空管をつけてくれたり、ブランドのよい真空管(TENから東芝)に変えてくれたという親切なセラーもいた。トータル的には気持ちのよい取引だった。

購入したものは不良品であったのは1回だけ。未開封のものを開けてみたらガラスが割れていた。申し出たら未開封品を再送してくれた。精密に調べたりしていないし、オーディオアンプのように神経質になったりすることもなく、交信や放送が聴こえたらOKという曖昧な判断をしているから、不良品に気づいていなかっただけかもしれない。

下の写真は不良球の一部。出力管は3本、劣化した状態。ヒーター不良は2本。ガラス内部は白、ゲッターなしは2本。ネット情報によると、ガラス底(ピン足の通る部分)は黒く濁ったらよくないとのことだが、確認したところ、全くのデタラメでもなさそう。未開封の日立以外は、なんらかの濁りが観察できたから。

不良球7本。コリンズからは2本、ガラクタからは3本、真空管ラジオからは1本。ヤフオクからの1本である未開封日立製6AV6はガラス割れ、もったいない犠牲品。ブランドは松下が3本、日立が2本、海外が2本。東芝が入っていないのはたまたまかも。

ほしい真空管はとりあえず揃えたところで、真空管の働きについてちょっと整理してみたい。原理に立ち戻って、真空管全般に対する考え方を見つめ直す必要を感じたから。

基本的に、マイナス電極であるカソードと、プラス電極であるプレートに電圧を印加すると、電子がその間を片方向に流れるのは、いまは常識となっている。これらごく微量な電子を多く集め、ある程度の電流(少なくとも数mA以上)として使えるには、カソードとプレートとの相対距離を狭くし、相対面積を大きくする以外に、高い電圧をかける。プレートとカソードは絶縁材料(マイカ等)で支えられているが、ヒーターの使用寿命を伸ばすために、真空に近い状態に置かれている。高い電圧はどの程度かといえば、真空管では100V以上が当たり前で、数千Vになることも真空管テレビの時代ではよくあった。

2本(あるいは複数)の金属の間に電圧をかけると、極微量だが、真空で離しても電子が電圧の向きに沿って飛び合うことは真空管の原理ともいえよう。2極管真空管の整流・検波の原理でもある。

さて、3極管の場合、カソードとプレートとの間に流れる電流をコントロールする極(グリッドという)が追加される。グリッドにカソードに対してマイナスの電圧をかけると、電子があまり飛べなくなる。これもいまでは常識だろう。そのことを利用して、グリッドに印加するマイナス電圧を上下変化させると、プレートに到達する電流もその変化に応じて上下変動する。それがほぼ線形的だという箇所(ほんの一部、つまり、数十Vだけの範囲では線形的だといえる真空管もあるだろう)を活用すれば、三極管の増幅作用となって、いろいろな用途が生まれる。それが三極管の原理である。

当然のように、よく考えれば、複数の疑問、たとえば、グリッドにプラス電圧を印加するととなるか、グリッドとプレートとの間にも電流は流れるはず、等は思いつくが、一般の教科書では答えないことにしている。つまり、グリッド電流はゼロだとしても問題ない。

グリッドにかけるマイナスの電圧(カソードに対して)をバイアス電圧という。バイアス電圧を作り出す方式は一般的に2種類あって、言葉のとおり、マイナス電圧を別途用意する方式を固定バイアス方式といい、カソードに抵抗器を入れ(その抵抗器のことを専門用語ではカソード抵抗という)、カソード電圧を相対的に高める方式を自己バイアス方式という。自己バイアス方式は抵抗器ひとつで済むので、確実性、手軽さ、コスト等の点で優れている。

プレート電流を Ip、プレード電圧(カソードに対して)を Vp、グリッド電圧(カソードに対して)を Vg とする。これら3つのパラメータがバラバラに動くと困るので、ひとつのパラメータを固定(変化しないという意味)させて、残りの2つのパラメータ間の関係を調べることができる。これら3つの組み合わせについてそれぞれ専門用語がついて、

相互コンダクタンス gm = ⊿Ip / ⊿Vg、ただし、Vpは固定。
内部抵抗 rp = ⊿Vp / ⊿Ip、ただし、Vgは固定。
増幅率 μ = ⊿Vp / ⊿Vg、ただし、Ipは固定。

という。実際には固定ということはないので、あくまでも固定(変化なし)とみなせる(みなせる!)範囲での理想論だ。これら3定数の間に

μ = gm × rp

という式が成り立つ。つまり、3定数のうちに2つの値がわかれば、3つ目は算出できるというわけだ。三極管の比較では、1つの定数の比較だけではあまり意味がなく、定数を2つまとめて、互いに比較すべきだね。

もうひとつ、あまり言われていないパラメータとして、電極間の静電容量(コンデンサ成分)がある。とくに、無線機に利用される場合に、発振してしまうリスクがあるので、注目すべきパラメータだろう。

代表的な電圧増幅用MT双3極管には、有名な 12AX7、12AU7、12AT7 三兄弟があり、6DJ8 などもある。代表的な電力増幅用双3極管には、有名な 2A3、300B などがある。

ガラクタ真空管に 3CB6 が2本入っていたので、それを活用したい。2つのヒーター電圧 3V の真空管を直列接続すれば、ヒーター電圧が計 6V になり、ヒーター電圧が6VのTRIO JR-310 に対応できるわけだ。

JR-310では、V1 である 6BZ6 に対応して 3BZ6 が存在し、V3 である 6CB6 に対応して 3CB6 が作られていた。ちょうど 3BZ6 と 3CB6 を ヒーター同士を繋げば、6V の交流電圧でOKなわけ。

ちなみに、定格ヒーターは 3BZ6 も 3CB6 も 3.15V / 0.6A、ヒーター電流の違いはないのが好都合。しかも、コリンズ球でもなく高額な 6BZ6 に対して、 3BZ6 は全く人気がない。

ということで、早速変換ソケットを2つ作って、実験してみた。3BZ6は手元にないが、さっそく格安で入手した。未開封の日立製で、足のほうはしかし、残念ながら緑のサビがついていて、品質は高いとはいうが、それほどでもなかろう。

ガラクタの3CB6と未開封の3BZ6。2つの変換ソケットに乗せて6Vヒーターで使う

変換ソケットは本サイトで繰り返し、言及してきた自作品。2つのソケットを連結するだけの構造。ただ、ピン(足)は独自の技術(?)でつけてある。製作技術があがったためか、ひとつを30分間で余裕でつくってしまう。7ピンのうち、ヒーターに関係する3番と4番のピンを残し、ほかのピン同士はハンダ付けして、全体を大変頑丈なものに仕上げた。押しても、引っ張っても、曲げても、びくともしない。

金メッキのピンをつける技術は門外不出?

JR-310は7ピンMT管がすべて3番ピンを交流のホット側、4番ピンをアースに繋いでいて、しかも、3番ピンと4番ピンの間は機械的に必ず0.01μFコンデンサを付ける。

そういうことで、言葉による説明は面倒だが、つぎのような接続法になる。

左のほうは上下3番ピン同士を接続、右の方は上下4番ピン同士を接続。左の上4番ピンを右の上3番ピンと接続。それで2つのヒーター電圧は合わせて6Vになる。

そして、真空管 3BZ6、3CB6 をそれぞれの変換ソケットに乗せれば出来上がる。元の6BZ6、6CB6を使いたい時には、変換ソケットを外せばOK。ふたつの変換ソケットを同時に使わないといけないのは本方式の欠点だが、元の回路を全く改造しないのは本方式の特徴だ。

ふつうに動く。なんの変化も感じられない。

ついでに、興味のある真空管の対応表をつくっておいた。

ヤフオクにて適当にほしい真空管を購入している。基本的には1本千円以下のものしか興味ない。真空管を売っているひとたちの実態は知らないが、お年寄りが大部分だと思う。そう考えると、優しい人が多いのも納得する。

今回入手した真空管も、決して悪意をもって出品されるものではなかったが、結果的に6U82本のうち、1本は6U8ではなく、5U8なのだ。確かにプリントが薄いが、注意深く見れば 5U8 と読めないことはない。老眼のせいとしよう。

5U8 と 6U8。本人はひと目で違うと認識したのに。

さて、6U8 と 5U8 は外観が違うか。答えはYes。しかし、ふつうのひとは認識するには難しい。手にしたことがあっても、構造まで細かに観察し、覚えるひとはほとんどいないはず。したがって、電気的に判別することはいいアイデアだと思われる。

ヒーター電圧が違うだけの真空管は、ヒーター電圧とヒーター電流の積がほぼ同じ。つまり、同じ仕事をするにはほぼ同じエネルギーでOKという理屈。

製造メーカーの規格表によると、6U8はヒーター電圧6.3V、ヒーター電流0.45A、積は2.84W。対して、5U8はヒーター電圧4.7V、ヒーター電流0.6A、積は2.82W。

両方はともにほぼ 2.8W。では、具体的に、ヒーターに電圧をかけて、それぞれの電流を見てみよう。

6U8の電流は約0.43A。問題ない。
同じ6U8に対して、ヒーター電圧を4.7Vに下げたら、ヒーター電流も下がってしまい、2.8Wに遠く及ばない。
5U8 にヒーター電圧 4.7Vを印加したら、電流は0.64Aになり、5U8であることはこれで確認できた。

写真の内容は詳細に紹介しないが、ヒーター電圧だけがわからない真空管は、ヒーター電圧を1Vずつ上げていき、流れる電流の値からW数(VとIの積)を計算すれば、定格のヒーター電圧はわかるはず。

ガラクタにあった 5U8 に対し、変換ソケットをつくって活用しているが、もう一本の 5U8 が来てしまった。活躍したいかな。

5V、6Vとタイトルに書いたが、正確には、それぞれが 4.7V、6.3V だ。真空管発明当初はバッテリーをヒーター電源として使っていたようで、バッテリーの都合で6.3Vになり、2つのバッテリーセルに合わせて 12.6V になったりする。いまの自動車でも12.6Vのバッテリーを搭載するものが大部分で、真空管発明当初と同じ事情だ。

ただ、なぜ4.7Vなのかはよくわからない。あまりにも 6.3V (あるいはその誤差範囲)に近いと意味がないということかもしれない。

真空管に関する資料をみると、真空管の名称(型名、型番とか、いろいろな言い方がある)にヒーター電圧が記述されていて、アメリカのEIA方式では最初の数字がそれだ、と説明されている。つまり、最初の数字が以下を意味するだそうだ。

0: 冷陰極
1: ヒーター電圧:1.6V以下
2: 1.6V~2.6V
3: 2.6V~3.6V
n: (n-0.4V) ~ (n+0.6V)

それを当てはめると、6Vは5.6~6.6V、5Vは4.6~5.6V、12Vは11.6~12.6V になるようだ。全くのデタラメとはいえないが、それほど信用していいものでもない。頼れるのはやはり、真空管製造メーカーの発表した規格表なのだ。

さて、ガラクタとして入手した、真空管 5U8 をそのまま死蔵しても可哀相なので、なんとかして使いたい。つまり、約 6.3Vのヒーター電圧に接続して活用したい。

5U8のスペックは以下のとおり。

9ピンMT管、中μ3極・シャープカットオフ5極の複合管。ヒーター電圧 4.7V / 0.6A、ウォーミングアップ時間 11秒。ヒーター電圧が違う以外は、6U8Aと同等。ちなみに、6U8Aのヒーターは 6.3V / 0.45A。

ヒーター電圧 6V の真空管はいまは主流になっている。出力管の一部を別にして、ヒーター電圧6Vの電源トランスが大部分。 その陰で、ヒーター電圧 6V 以外の真空管は、トランスレスラジオ用以外になかなか活用の場はなく、人気がない。それを逆手に取れば、ヒーター電圧が6Vではないが、他の性能はまったく同じ真空管を格安で入手できるチャンスでもある。たとえば、5U8 は 6U8A よりもだいぶ安くゲットできるはず。未開封の 5U8 でも数百円で売り出されている。

本記事は、回路を5Vヒーターに改造するのではなく、真空管変換ソケットを差し替えるだけで 5U8 を使えるようにする内容。

方法は本サイトでよく紹介したもの。2つの真空管ソケットを連結させて、変換ソケットにしてしまう。片方にピン(足)を挿し込み、半田付けして、元のソケットに挿せる構造。5U8 は 9ピンMTなので、今回は2つの9ピンソケットを使った。ピンの4番と5番はヒーター用だが、6番の高圧プレートに遠いほうが安全だという配慮から、4番ピン同士を連結せず、その間に抵抗なり、ダイオードを挿入し、電圧を下げることにした。

2つのソケットを連結させて、変換ソケットに仕上げる

交流電圧を下げるにはふつう、抵抗(抵抗器)を使うが、W数の大きい抵抗は手元にないし、電流の大きさにあまり影響されない特長がよいことから、今回は抵抗ではなく、ダイオードを使った。

2つのダイオードを同じ向きで直列して、さらに逆向きに並列する。これで、電圧降下が1.5V前後になり、6.3Vを4.8Vに下げられる計算だ。直流にも交流にも対応し、直流の場合は向きも自由でよい。

ダイオードの型番は1N5408、3A / 1000V 整流用。もう少し流せる電流が少なく、1.5Aか2Aのダイオードがよりよい。1N5408はリード線が太く、サイズも大きすぎたから。1.5A 以上にする理由は 5U8 のヒーター電流は 0.6A だから。真空管の周りは高温(100℃超えるのはふつう)になることが多く、高温の環境ではダイオードの流せる定格電流が低下する。このへんは抵抗器と同様。1.5A のダイオードであれば、125℃でも0.6Aの電流に対応できる。自分はさらに安全係数をかけて、手持ちから3Aを選んだ。

ダイオード 1N5408 を使って電圧降下を図った
変換ソケットとダイオードを使って、5U8 を 6BL8 の代わりに使用
もう一枚、違う角度からの撮影。IFTとショートしないよう、熱収縮チューブを被せた
実測した電圧値の変化

交流電圧の実効値(RMS)を精確に測定してくれる FLUKE のテスターを使って実測した。他の真空管のヒーター電圧が 6.217V に対して、5U8 のヒーター電圧は 4.759Vになっていることを確認できた。定格 4.7V にわずかに 高いが、問題になることはないはず。なお、ダイオード表面の温度を実測したら、約50℃。

変換ソケット式なので、元の真空管 6BL8 やその互換球 6U8、6EA8 を使うときには、変換ソケットをつけなくてOK。回路に対する改造は一切なし。

次回では2つの真空管のヒーターを連結させて、ヒーター電圧が 3V の真空管を活用してみたい。ガラクタの真空管に、3CB6、3DK6 が入っているから。ちなみに、3CB6 や 3DK6 等のヒーター電圧は精確には 3.15V で、2つ直結すると 6.3Vちょうどになるように、規格がきめられたようだ。

ロシアや中国製真空管 6P1, 6P1P-EV は 6AQ5 互換といわれているが、ピンの数がそもそも違うので、そのまま挿すことは無理。そこに変換ソケットの出番だ。

自作した真空管変換ソケット

自作してみたが、9ピンと7ピンとの変換は案外難しいことに気づいた。ショート防止のために、ピン間の最小距離はどうも定められているようだ。となると、9ピン真空管は太くなるし、ズレたピンの連結は難しい。

今回は写真のとおり、なんとか 6P1 を 6AQ5 として使う変換ソケットを作ったが、ピンの配置が異なったら、うまくできないかもしれない。

しかし、手持ちの7本の9ピンMT管 6BX6 を 6DC6 の代わりに使うには、もう少し汎用のアイデアが欲しいところ。

ソケットをそれぞれ基板に刺し込み、基板同士を張り合わせる形(互いの連結はソケットの外側で行う)でのものがいいかもしれない。近いうち、チャレンジしてみたい。

ところで、6P1P-EV の寿命は以下のとおり、製造メーカーが 5000時間以上と明示されている。ほかに寿命が明示された型番の真空管はあるのだろうか。興味津々。品質世界一と豪語する日本製真空管だと寿命はその倍か。

動作時間保証は5000時間とのスペックに驚いた

さて、到着したロシア製 6P1P-EV を変換ソケットに乗せて、コリンズに装着。米ロコンビはいいが、やはり高すぎ、逆さにして作業するときに気をつけないと、6P1P-EVを壊してしまう。

こんな遊びをするのは本人だけか

出力管 6BF5 のソリッド(FET)化を考えていたが、放熱のことは解決できず、結局やめることにした。6P1P-EVや6P1はまだ生産中なので、入手できなくなることはないだろう。しかも、入手済の 6BF5、6AQ5 等と合わせてすでに10本ぐらいの出力管は用意できた。一生安泰と夢みよう。

誤解を招かないための長いタイトルにしたが、本記事の真髄はすばり、真空管変換ソケットの自作だ。

高名なアマチュア無線受信機 Collins 75S-3 はこの頃、自分のおもちゃに化している。真空管入門のきっかけをつくってくれた Collins に感謝だ。

さて、Collins 75S-3 の V5 として利用されている真空管 12AX7 は、高μ双三極管の9ピンMT管として有名。その兄弟に 12AU7, 12AT7 があるが、増幅率 μ の違い、100が12AX7、60が12AT7、20が12AU7といったぐあいに選別されている。μ=100が三極管では最も高いものらしい。トランジスタだと100はよくある増幅率であって、高いものは800~1000(超えるものもあろう)。真空管は増幅率が比較的低い。

ところで、知識が乏しく自分は 12AX7 の互換球を探しているが、なかなか見当たらない。しかし、ロシア系(その支援国である東欧や中国等)にはヒーター電圧が違うが、6N2 (さらにその軍用モデル 6N2P-EV 等)は他の電気的特性はよく似ている。6N2、あるいは 6N2P-EV を試してみたいひとは、ヒーターの違いを解消(あるいは吸収)する工夫をしないといけない。

下に 12AX7 と 6N2 のピン配置図を示す。確かにピンのアサインは同じだ。問題はヒーター電圧。12AX7 は型番のとおり、12.6V/0.15A をヒーターに使う。対して、6N2 は 6.3V/0.34A を使う。

12AX7のピン配置
6N2のピン配置

幸い、12AX7は Collins 75S-3 では、ヒーター電圧が2組の6.3Vの直列で供給されている。具体的には、ピン4-9 および 5-9 にそれぞれ 6.3V が与えられている。したがって、どちらかの 6.3V を 6N2 のヒーター電圧にすればよい。つまり、12AX7 の4-9、または 5-9 を、6N2 の 4-5 にすればよい。

Collins の基板回路を変えるなら、上記の変更は簡単に実現するが、12AX7 も 6N2 も使えることはできなくなる。そこで、変換ソケットの必要性が出てくる。つまり、ソケットのなかでヒーター配線を変えれば、変換ソケットを使わない場合は従来の 12AX7、6N2 を変換ソケットに乗せて使う場合は 6N2 が機能するわけだ。

自作した変換ソケットは下のようなもの。6N2 を変換ソケットに挿し、変換ソケットをさらに本来のCollins のソケットに挿すことで、6N2 が使えるようになる。

変換ソケット経由で 6N2 を使う。左はもとの12AX7A。

真空管変換ソケットはそれなりのニーズはあるはずだが、なかなか見当たらない。仕方なく、自作してみた。一連の作業は言葉で説明すると大変なので、一連の写真でその過程を示すことに留める。自己流なので、改良・改善はいくらでもできそう。

まずはピンの入手。たまたま手元にあったRS232Cの25ピンオス側を利用した。調べたら金メッキではないかもしれないが、秋月電子通商ではいまでも似たタイプが単価40円で販売されている。

分解
金メッキのピンをゲット。とても丈夫、太さは真空管のピンに似ている。

つぎに真空管ソケットの用意。9ピンソケットを2つ。少なくともそのうちの一つは分解できるタイプがよい。

そして分解、ハンダ付け。その作業を根気よくやっていけば完成。結果的にとても丈夫なつくりになった。押しても引っ張ってもひねてもびくともしない。

9ピンMTソケットを2つ
左側のほうは分解できるタイプ
左側のソケットを分解
入手した金メッキのピンを挿し込む
ハンダを流し込み、固定させる
さらに、2つのソケットをハンダづけして連結させる
各ピンの連結とリアサイン
できあがり。作業時間ははじめてのことで数時間かかった。
外周部にプラスチックパイプとかを装着すれば完璧かな

高さはピン部分を除くと約 26mm。工夫次第で20mmぐらいに低くできるかもしれない。透明か白色のビニールパイプを外周につければもっと格好よく、感電の心配もなくなるので、このうち適当なものを物色する予定。

こういうソケットは変換用だけでなく、各ピンの電圧測定や電圧電流のモニタリングにも活用できそう。Collins の電圧測定には自分はいつも緊張。ショートさせてはいけないし、感電の心配もある。こういうソケットがあれば大変助かる。

また、ヒーター電圧が低いだけの真空管、たとえば、4BZ6、5GH8A 等の真空管はヒーター電圧の違いで買い手がつかず、格安で大量に出回ったりする。変換ソケットではヒーター同士の連結に抵抗やダイオードを入れれば、電圧の違いを吸収でき、廃棄真空管の救出にも役立つ。

工夫次第で、真空管変換ソケットは使い道が多い。

さて、到着したロシア製 6N2P (キリル文字 6H2n)は 9303という日付があり、ソ連崩壊後の大混乱期に生産され流出されたものかもしれない。

ロシア 6N2P。ピン(足)の形は独特

米国、日本製 12AX7 との比較。双3極という部分はなんとかわかるが、作り自体は西側とだいぶ異なる。

左から 米国、日本、ロシア製

6N2Pを変換ソケット経由でコリンズに付けたら、ふつうに聴こえた。ノイズが若干上がった気がするが、感度もアップしているようだ。

なお、6N2Pの9番ピンは内部シールドの役目を果たすので、アースに繋ぐべきだとの意見が多い。元の12AX7にないピンなので、新たにリード線を台座の9ピンにつなぎ、シャシーのアースにつけていくことをやってみる。ノイズはこれで下がるだろうか。

トランジスタには見た目のよいカンタイプとかがあるが、一般的にいえば、見た目では断然真空管のほうが格好いい。しかし、ガラス製が多いので、収納には注意が必要。一般的に紙製のケースにいれて保管されているようなので、廃棄する梱包材を活用して試しに作ってみた。

真空管のサイズはさまざまだが、MT管が手持ちに多いので、7.5 x 2 x 2cmのサイズにしてみた。紙がちょっと薄い気がするが、収納にはとくに問題ない。紙収納ケースの販売もあるようだが、ひとつ100円とか50円、自分の価値観に合わない。

ネット情報を参考に適当に描いたり切ったりした
糊付け。固定するための工夫もしてみた。
できあがり。上下のスペースに丸めた紙で埋めるといいみたい。

裸のままの真空管は数十本もあるので、楽しみながら紙収納ケースをつくっていこう。この過程で、愛着心がますます増すことは請け合いだ。

同じ日に、海外と国内から真空管が到着。海外からは 6DC6 が5本、6BF5 が3本、国内からは中国製 12AX7、6K4等が4本。6DC6は単価630円、6BF5は不人気のせいか単価530円。海外での真空管相場はそんなものだろうか。国内購入の12AX7は最も高く1320円、6K4等は550円(いずれも税込み)。

NOS真空管12本

6BF5はGE製。ガラス壁に白い粉末が多くついており、12本のうち最も汚くみえる。

プリントは一部消えている。
足の部分はいかにも未使用、年月を感じる

6DC6は米国フィリップス製。わりときれい。

白い粉はなく、プリントも消えていない。
見た目は合格。

中国製はダメかと思ったら、案外きれい。足を誰かが磨いたようにも見える。製造年月がプリントされているものもある。4本のうち、1本だけはメーカーも製造年月も不明。

12AX7。製造ブランドも製造年月も印字なし。いかにもリプリントしたもの。
写真は下手だが、足はちゃんと磨かれていた。
82年1月曙光製 6K4。足は磨かれている。

現物をみて買っているわけではないので、外観だけで評価しても仕方ない。それよりもまだストックしているひととお店に感謝しないといけない。数十年も昔の製品を大事に保管してきたことを。

真空管のあとに製造され、一世を風靡したトランジスタやFETはしかし、型番指定の購入は多くのケースでは絶望。たとえば、最近の例をあげると、60年代 RCA社製の 2N1396, 2N1225, 2N373 を購入したくても世界中のどこにもないようだ(実物の写真の出さない怪しいサイトは多く見かけるが、本物である確信は持てない)。絶滅してしまった型番のトランジスタやFETは数千数万種類以上はあるだろう。いま流行りのIC等も同様な運命を辿るか。