やはり自分はラジオ少年だと改めて思った。GC-1Aの傍にラジオを聴きながら、オシロで波形を観たり、トランジスタを取り替えたり(差込式のメリット)、バイアスを変えたり、パーツを変えたりして、こんな「退屈」の繰り返す日々(この1週間はGC-1Aに付き合いっぱなし)でもまだ厭きないから。

トランジスタを大量にストックしたから、困らないことはないだろうという幻想はこのGC-1Aで見事に破られた。PNP型高周波用ゲルマニウムトランジスタはほとんどもっていないし、あったとしても、日本産はほとんどがECBのような配列、真ん中にB(ベース)ではない。対して、アメリカ産(というか外国産)は中央がB。差し替え式では、向きはどうでもいいが、真ん中が違うと足の電極をクローズさせないといけないので面倒。

さて、改造項目は大きくわけて3つ。

1. シリコンPNPトランジスタが使えるようにした。

高周波で使われる3つのTrにはまだ未着手だが、IF以降のTr 5個(電力増幅段の2個については後述)に対しては、差込み式なので、シリコンPNPでも使えるようにした。BE間電圧Vbeを大きくして、バイアス電流をそのまま、という点に注意しながら、バイアス設定抵抗に別の抵抗を並列させて、TrのB極電圧を GNDに対して0.4Vほど低くした。なお、各Trの標準電極電圧はつぎの表のとおり、組立てマニュアルに明記されていた。

60年代前半に、1N2326や1N754がすでに製造されていた。

シリコンPNPは製造が新しいため、一般的に性能は飛躍的にあがったし、1つ数円のTrはまだまだ多く市販されているので、コスパもよい。

EBC配列の外国製Trのうち、今回はS9015が最も良かった。IFといっても高々455kHz、いまの小信号増幅用Trならどれでも無問題。S1905は低ノイズか、hfeが300と高いか、他の2N3906、BC557を圧倒した。

バイアスを変えたので、元のゲルマでは動作点が変わったが、バイアス電流の増加分は数mA程度、全体の消費電流があがるが、音質等の性能にはほぼ無関係だと聴覚上認知した。

2. 電力増幅段の改造

OTL(Output Transformer Less)設計になっているのはいいことだが、入力トランスがあるため、1kHz辺りから減衰しはじめ、通信機仕様になっている。しかも、熱暴走を防ぐため、エミット抵抗は4.7Ωと大きく、出力トランスがないため、ローインピーダンス(4Ω、8Ω等)のスピーカーを鳴らすには効率がとても悪い。

外付けスピーカー(アンプ付き)をAF励振段の出力(入力トランスの一次側)に繋いで聴いたら、ふつうのラジオ音声(音質も音量も)が聴こえたので、電力増幅段をミニアンプに改造することを決心。

そこで、aitendoさんからLM386組立キットを購入。収納スペースがあまりないため、高さをなるべく低くした。ただ、ゲルマラジオはGNDの電位が高いため、VcをシャーシのGNDに、LM386のGNDをシャーシの-13Vに接続しないといけない。NPNトランジスタならそんな混乱は避けられる。世の中でNPNが大繁盛の理由はそんなところにも関係するのだ。

LM386ミニキット。4.7Ωのところが4.7kΩになっているのがキットのミス。自分で回路図を書いたところでそのミスに気づいた。写真の抵抗はまだ4.7kΩのままだが。C3の10μFをその後基板から取り外した。最終版の写真については下のつぎの写真を参照されたい。

ということで、もとの電力増幅回路は外付けイヤホンのために残し、内蔵スピーカーを鳴らすにはこのLM386モジュールを利用する。

また、AF励振段のバイアスを再度設定。Trのベースに繋ぐ抵抗2つをともに10kΩにした。これで、Vbが電源電圧の約1/2になり、歪みなくミニアンプに送り込むAF信号の最大振幅も約1/2Vccになる。エミッタ抵抗を従来のバイアス電流1.9mAに近くになるよう、手持ちにあった2.2kΩにした。

最終的に、LM386モジュールをキャビネット内部の上部(スピーカーの隣)に設置。ACアダプターとの干渉もない。シャーシとの接続は電源コネクターとAF入力コネクターの2つになるところがちょっと残念、4ピン(または3ピン)コネクター1つで済ませたかった。

LM386モジュールをスピーカーの隣に配置。断線した4×6インチ楕円スピーカーを4インチ丸形に変えたことのメリット。
ACアダプターをキャビネットに実装して、LM386モジュールとの干渉を確認した。
L型DC中間アダプターは年数の経過によって重力で90度回転して下に向くかもしれないが、外れる可能性はなさそう。

3. パイロットランプのLED化

60年代と違い、省エネのLEDは数多く市販されている。そのうち、6V対応の電球色がいいだろう。本機のACアダプターは流せる電流が少ないので、定格電流の少ないLEDを選ぶことが重要。

もとの豆電球は#49というアメリカ国内の規格で、2V/0.06Aのようだ(要確認)。豆電球は左右2つあり、抵抗器経由で直列接続されていた。したがって、電流制限の抵抗器を短絡させて、新しいLEDを2つ直列接続するようにすればよい。

常時点灯させるには、Dial Light スイッチをパスすればよい。従来のやり方を踏襲するならば、スイッチをいじる必要はない。

なお、ACアダプターと接続するパワーソケットは5番が6番と繋いでいるので、そのまま使うとLED点灯時にラジオは聴けない。よって、ACアダプター側の受け取る側ソケットのうち、5番と6番のショートを切ってしまおう。

夏の夜に、ラジオ放送を聴くのは楽しみ

スピーカーによるラジオ放送がふつうに聴こえるので、シャーシをキャビネットにしまうことがやっとできるようになった。届いてからまだ一度も組立てていなかったので、ACアダプターは最後に取り付けることを理解した。裏面ではネジ2本はオリジナルではなく、3端子レギュレター基板を固定するためにネジだから。元のネジ2本は短い。

ACアダプターのデカさがよくわかる。
Muting端子に-13Vがそのまま出ている。周りのGNDとショートさせると電源アダプターは壊れる?

改めてスピーカーに近づいて聴いたら、ハム音がわずかに聴こえた。-13VラインをLM386のGNDとして使えているからかな。

ネット情報に従い、100μFであったパスコンを1000uFに増量し、LM386の7ピンに10μFのパスコンを追加してみたが、気持ち的にハム音が若干弱くなった気がした。ただ完全に消えたわけではなく、+12V電源を別途作ることが最強対策かもしれない。ラジオなので、ノイズがあったほうが正常という論理も成り立つので気にしないことにした。

本機は通信型受信機といっても、バンドスプレッドという精密チューニング機構があり、BFOありぐらいの違うだけだ。しかし、ユーザが組み立てるキットという発想は当時の日本ではなかったと思うし、商品と見間違えるほどのキャビネットまでキットのパーツとして提供した意気込みは流石のアメリカだ。

精密なチューニング機構。50年以上たった今でも大変スムーズ、人差し指1本でダイアルを回せるので、感触が最高。
改造前のACアダプター

ACアダプターがついてきたが、安定化しておらず、リップルを測ったところ0.3Vにもなったので、改造を決意。

以下は到着時に測ったデータ。負荷に100Ω純抵抗を使用したので、12V出力に対して負荷電流が120mAになったはず。

出力電圧は約11Vに低下。アメリカの110Vと違って日本は100Vだからか?
負荷電流120mAに対してリップルは0.3V、話にならない。

電源部分の回路は以下のとおり、極めて簡単。ACはヒューズ経由して、ホット側は本体ボリューム兼電源SWを経て、ここのアダプター部分に戻ってくる。電源トランスは中間タップ式、2次側の電圧を無負荷時で測ったところ約9.88VAC。シリコンダイオードによる全波整流後、巨大な1000μF / 15V電解コンデンサ2本による平滑化して出力となる。本体との接続は真空管9ピンソケットによる。

ACアダプターの回路図。安定化電源ではない。

さて、手持ちの部品を吟味して、LM337による -13V に改造することとした。マイナス出力とはPNPトランジスタなので、GNDは電位が高いからだ。12Vではなく、13Vにした理由は出力音量を少しでも大きくしたいこと、3端子レギュレターの負担を少しでも軽くしたいこと等による。

電源トランスをそのまま流用するが、2次側の中間タップを使わず、2次側を直列にして約 18V として使い、4本のダイオードによるブリッジ整流をする。3端子レギュレターにかかる電圧差が約5Vになり、流れる電流を最大130mAとし、消費電力が約 0.7W となる。ヒートシンクを付けず、発熱について多少心配ではあるが、実際に本機の消費電流は極めて少なく、約40mAしかない。パイロットランプを付けた時点での電流は100mAになるが、スイッチから手を流すとパイロットランプがOffになる仕組み。8本のバッテリー駆動がデフォルト電源方式の設計のようだ。

負荷電流が40mAなら、こんなに小さいトランスでもなんとかなるし、ヒートシンクなくてもなんとかなりそう。

LM337の基本回路にしたがって、数時間をかけて組み立てた。出力電流が無負荷から130mAに変化させても出力電圧は約13V、ほとんど変化していない。リップルは0.5mV、ほとんど無視できるレベル。

LM337の基本回路をそのまま使った。分圧抵抗は220Ωと2kΩ。
元の穴位置にうまく合わせた改造。整流ダイオードの2本(右端)はもとのものを流用。
負荷抵抗100Ωにしたところ、出力電圧は変動なし。
改造が終わったところ。真空管9ピンソケットによる接続方式はユニーク。
シャーシ裏のEXT MUTING TERMINALSは電源のマイナス側に繋がっているので、GNDとの電圧は-13V、期待通り。

送料を含まぜ約1万円で入手した、1960年代にアメリカで販売されていた通信型受信機 HEATHKIT GC-1A “Mohican” Solid-State Communications Receiver。

ネット資料によると、その前身 GC-1 が1959年に発売され、世界初のトランジスタによる通信型受信機だそうだ。改良版である本機は 1968年までに販売され、売値は当初の$109.95から$89.50に値下げ。

驚いたのは本機は基本的にキットであること。メーカーがハンダ付けして製品として販売するものは GCW-1Aと呼ばれ、恐らくパネルの型番でもその違いが確認できる。購入者が自分でDIYしてキットから作り上げることはやはりアメリカならではの、アマチュア無線人口の多さと各種測定器が豊富に市場に出回っているからだろう。

通信型受信機 HEATHKIT Mohican GC-1A
裏側。赤枠のネジ4本を外せば、中のシャーシを前に押出し、分解する。
キットの組み立てを考慮した、ゆとりのある設計

使用されるトランジスタは10個、すべてPNP型ゲルマニウム。1959年にはシリコン型やNPN型トランジスタはまだ製造されていなかったから。

トランジスタの詳細は以下の通り、括弧内は本機に搭載されているもの(前オーナーが交換したと思われる)。

RF増幅 2N1396 (2N1397)
ローカル発振 2N1225 (2N1225)
ミキサー 2N1225 (2N1066)
IF増幅3段 2N373 x 3 (TL-364 ? )
AF増幅 2N407 (2N407)
AF出力 2N407 x 2 (2N407)
BFO 2N409 (2N409)

トランジスタは差込式になっていて、ユーザーが自由に取り替えたりすることができる。通信型受信機はふつうそういうことは考えられないが、キットならではの配慮かもしれない。

メタルケースのトランジスタはすべてRCA製のようで(本機は3つがTI製のようで、前オーナーが交換したものと思われる)、外観は2種類。RF関係の 2N1397, 2N1225, 2N1066 は4ピン、EBC以外に、ケースにつなぐシールド用ピンをもっている。それ以外は、横に1列に並ぶEBC3ピン。どちらも中央はベース(B)、日本製トランジスタの多くはB が外側にあるので、差し替えるには工夫が必要。

RCA製メタルカン・トランジスタは1960年代アメリカ製トランジスタの代表

本機は全く鳴らないという商品説明でのジャンクもの。到着時に分解方法が分からず、ACアダプターまで分解してしまった。外付け12VDCを取り付け、色々いじったところ、ラジオ局の音はイヤホンで聴こえた。しかし、シャーシの向きを変えたら、また状況が一変し、何も聴こえなくなってしまった。

いろいろ調べてやった結果、こういう箇所の問題だと気づいた。

① ミキサートランジスタ 2N1066 が故障。手持ちの 2SA103 で代用。
② IF増幅1段目トランジスタ TL-364 の接触不良。

音量は小さく、音の歪みもひどいが、なんとか聴こえるようになった。

電解コンデンサはあまり使われていない。それほど劣化もしていないようだが、気持ちの問題で取り替えた(時代ものに対する申し訳なさを感じながら)。

取り替えた電解コンデンサ

4つのコンデンサはそれぞれ以下のために使われている。

SPRAGUE 150μF / 15V AF増幅トランジスタC極のACバイパス用
SPRAGUE 50μF / 15V 出力スピーカーとの結合用(DCカット)
AEROVOX 50μF / 15V 音量ボリュームとの結合用(DCカット)
IEI 10μF / 10V AVC電圧用整流

SPRAGUEやAEREVOXはどちらもコンデンサとして有名なメーカーで、キットだからといって安い部品をかき集めて売っていたわけではなかった。相手はアマチュア無線愛好家だからかもしれない。

音は一応鳴ったが、課題はまだ複数残っている。

① 感度はとくに AMではまだ高くない。昼間はやっと文化放送、夜間は広島放送が聴ける程度。ふつうのラジオとの差はあまりないところか、劣っている。

② 音量が小さすぎる。内蔵のスピーカーが断線していて聴こえず、感度(能率)について調べられないが、ふつうのスピーカーをつけると音量がものすごく小さい。インピーダンス35Ωの高能率のスピーカーならふつうに聴こえるかもしれないが、さらなるAFアンプをつけるべきかもしれない。

③ 音の歪みはまだひどい。セラミックフィルターによる帯域の狭さが問題かもしれないが、聴きやすい音ではない。

④ ACアダプターの改善。ACアダプターがついているが、リプルが出力電圧 12V に対して 0.3V もある。定電圧になっていないこと、電解コンデンサの劣化のこと等によるかもしれない。どっちみち、いまの時代では手軽な3端子レギュレータによる定電圧電源を排除する必要はないので、最小限の改造で済ませたい。

外出自粛が良さげのこのご時世、楽しみながらゆっくり整備していきたい。

<追加>
故障した2N1066を代用した2SA103を試しにほかの2SA103に変えたところ、感度や音声の明瞭度が大きく上がった。同じ品種のゲルマニウムトランジスタでも、保管期間が数十年も経ったことから、品質のばらつきは大きい。あるいは、本機種の設計がデリケートだけかもしれない。

これで感度(AMも含め)不良と音声の歪みは解決した。

残った課題は音量を大きくすること。そのまえにコイル断線したスピーカーをなんとかしないといけない。スピーカーの断線は最近続いている。前回の真空管ラジオはなんとか代替品を見つけたが。

コイルが断線しているようだ