何年もまえに aitendo からDSPラジオ用 6959 モジュールを購入していたが、やっと作り気になって、ラジオにしてみた。

ちゃんと機能するかどうか、確認するため、まずバラック実験をした。FMモードかAMモードかに応じて、モジュール上のLEDがそれぞれ点灯する。少しでも節電するため、ふたつのLEDを取り外した。また、R1、R2というふたつの抵抗器を外すことで、音量が約3倍大きくなるとの記述がマニュアルにあったので、合わせて外した。

バンドの切替に、ロータリスイッチは操作性がよいので、2回路11接点のものを使った。12接点との説明の商品だが、手にしたら実際に11接点しかなく、仕方なくそれを使った。2回路を選んだのは接触不良を無くしたいためだ。2層のスイッチを実際に並列接続して、片方でも導通になっていればOKという目論見。
11バンドは以下のように選んだ。
FM 70MHz ~ 93MHz
MW 522kHz ~ 1620kHz、9kHzステップ
SW(5kHzステップ)
4.7MHz ~ 5.6MHz
5.7MHz ~ 6.4MHz
6.8MHz ~ 7.6MHz
9.2MHz ~ 10MHz
11.4MHz ~ 12.2MHz
13.5MHz ~ 14.3MHz
15MHz ~ 15.9MHz
17.4MHz ~ 17.9MHz
21.4MHz ~ 21.9MHz
バンドの切替は BAND-FM 端子をGNDに、BAND-AM の切替による。FMは上限受信周波数を 108MHz(少なくてもFW補完放送の上限 95MHz) にしたかったが、うまく切替できなかった。
ボリューム調整として、2連100kΩ Aタイプの可変抵抗をつかった。たまたま手元にあったから。今回は2連の片方をつかったが、経年経過による接触不良になれば、残り片方にハンダ付けし直して切り替えることが可能。
チューニングとして、10回転の 50kΩ ポテンショメーターをつかった。バーニヤダイアルを取り付けて、抵抗値からある程度受信周波数がわかるかもしれない。
バーアンテナとして、手元に最も長いもの(180mm)をつかった。多少でも高感度にしたいから。インダクタンスはLCRメータ(DEREE DE-5000、秋月より購入)で測ったところ、100kHzでは 363μH、Q=50。
電源として、充電式リチウムイオン電池 18650 をつかった。消費電流は平均 60mA のようで、毎日3時間聴くとしても、1回の充電で2週間ぐらいはもつはず。
バーアンテナ内蔵のため、プラスチックケースをつかった。スピーカーまで内蔵するので、結果的に大げさのサイズになってしまった。
なお、トランジスタ 9018 によるプリアンプは実装してテストしてみたが、自分のアンテナ環境では、SW(短波)の受信では却って混信がひどくなり、いいことはまったくない。FMではあったほうが確かによい。それも自分のアンテナはHF用で、FMに対応していないからだろう。つまり、アンテナがしっかりしていれば、プリアンプは必要ないということだ。






低コストで、なんの調整もなしに、誰もが簡単にFM・MW・SWを受信するラジオを作れるのはDSPラジオの醍醐味。21MHzバンドの短波放送局が少ないので、受信できた局はほとんどなかったが、ほかのSWを含めたそれぞれのバンドはガンガン聴こえる。とくにFMでは外部アンテナがなくてもワイドFM(FM補完放送)を受信してしまう。たとえば、TBS放送 90.5MHz(ボリュームの約80という位置)、文化放送 91.6MHz(84という回転位置)、ニッポン放送 93.0MHz(約89という位置)。ただし、地元の栃木放送(94.1MHz)はFMバンドの上限(93MHz)を超えたので受信できなかった。
また、真空管ラジオと違い、受信周波数のドリフトは全くない。ポテンショメーターによる分圧の値を使っているので、チップ 6959 がちゃんと設定・製造されていれば、ドリフトのないことは当たり前かもしれない。
音質はよいのもメリットのひとつ。スピーカーの良さとも関連するが、選択度を決めるフィルターがDPS化されているので、帯域の狭さによる音質低下が少ないのがその理由かもしれない。顕著に現れているのはSWバンドで、音楽を聴くとその違いがよくわかる。
当然、欠点がないわけではない。
ひとつは、MWでは、NHKやローカル局(栃木放送)以外に、ビートノイズ(救急車がサイレンを鳴らして遠くで走っているという音)が背景に聴こえること。
原因はわからないが、①バーアンテナがDSPモジュールに近すぎたから?ネットでは5cm以上離せるべきだとの意見がある。②バーアンテナが長すぎて、感度を極端に高くしたから?③スピーカーに近すぎたから?
原因の①と③はバーアンテナを離して確認すれば本当かどうかはわかる。原因の②は短いバーアンテナをつかうことで確認できる。なお、バーアンテナに関し、マニュアルでは、バーアンテナの長さ80mm、コイルのインダクタンス350~450μH を特性の測定条件にした。
ということで、原因①と③について実際に離してみた。ビートノイズは減っていない。また、②について長さが120mmの短いバーアンテナにしてみたが、感度が大幅に低下したことがわかった。昼間では文化放送(MWでは1134kHz)が受信できなくなったから。
そして、本製作の最大の欠点は受信周波数がわからないこと。チューニング用のポテンショメーターが受信周波数と線形関係であれば、PICマイコンを使い、ポテンショメーターによる分圧電圧値を計測し、受信周波数を大まかに表示できるかもしれない。実験した製作記事はたしかにネット上に上がっている。根本的な解決は違うDPSラジオモジュールを使うことだ。たとえば、モジュール 6955 なら受信周波数を外部に出力している。