日本では40~50年前に、アメリカでは70年前頃よく使われていた真空管電圧計 VTVMは今日になって、実用性はほとんどなくなった。ただ、10MHz以上の高周波領域では真空管が簡単な回路でも精度良く大パワーで動くので、特定の分野に絞れば真空管が却って勝つかもしれない。

5年前に入手した菊水電子製 VTVM 107Aを精度よく動くように整備してみた。アメリカのマネをした設計だが、合理的なづくりで、70~80年代では日本を代表していたようだ。

整備といっても、皆がよくやっているように、以下のことを行ったに過ぎない。
①コンデンサの取替
②真空管の取替
③バッテリーエリミネータ (Battery Eliminator) の作成

①コンデンサの取替
 オイルコンデンサやペーパーコンデンサが使われているので、経年劣化等を考慮して取り替えたほうがいいだろう。
 0.1uF/1500V は手持ちにないので、フィルムコンデンサ0.05uF/1500V(aitendo販売)を2つ並列して代用。
 2つのペーパーコンデンサ0.05uF/630Vは上記のフィルムコンデンサで取り替える。
 平滑用電解コンデンサ 10uF/150V も手持ちのチューブラ型 22uF/350Vで代用。
 5番目のコンデンサ5000pFは問題がなさそうで、そのまま。
 5つのコンデンサしか107Aに使われていない。これ以上減らすことは無理というレベルの天才設計。

5つのコンデンサの位置

②真空管の取替
 AC測定用の検波に真空管 6AL5 が使われているが、調べた限りとくに問題はないと判断。
 また、増幅用に真空管 12AU7 が用いられている。線形性があまりよくない(とくにゼロに近い低い電圧では)ので、新しい球(中国曙光電子製)と取り替えてみた。線形性が多少改善されたが、約2%の誤差が残っており、パーフェクトではない。メータ自身の整備性の可能性もあり、いつかメータを下ろして調整してみたい。
 なお、ほぼすべてのVTVMに使われる真空管は上記の2本。マネることが正義という時代は長かったか。

左は中国製新品の12AU7。日本Amazonから約1500円で購入
差し替えるだけで交換完了。はんだ付け作業は不要

③バッテリーエリミネータの作成
 抵抗値を測定するため、1.5V単一電池はVTVMに内蔵されている。最大電流は抵抗10Ωレンジでの150mA(=電池電圧 1.5V / 内蔵抵抗 10Ω)。100Ωレンジでは最大電流(ショート時の電流)は15mAと10倍ずつ小さくなっていく。10MΩレンジでの最大電流は 0.15uA でしかない。

単一電池から流れ出す最大電流は約150mA(10Ω OHMSレンジ)
最高レンジ 10MΩ OHMSでは最大電流は0.15uA

ただ、アナログテスタと違って、OHMSモードにすると、電池はつねに消費される。

単一電池が長寿命でも、液漏れが怖いので、当時ではメーカーとして6ヶ月での交換をユーザに勧めている。また、電池をビニール袋でわざわざ包んで出荷していた。苦情の多かったことと推測する。ということで、今日では数個の電子部品で単一電池のように1.5Vを作り出すことは簡単。

以下は今回つくった バッテリーエリミネータ の回路図。真空管のヒーターを温めるのに必要な交流6Vに悪影響を及ぼさないために、10Ωの抵抗を半波整流ダイオードの前に追加した。3端子レギュレータは1.8Vのものを使用した(秋月電子通商販売、JRC社製 NJU7223F18)。電池の公称電圧である1.5Vよりは多少高いが、多少のいい加減でも問題になることはあるまい。ケースは単三-単一変換アダプターを使った。うまくケースに入るように基板を使わず、部品のみではんだ付けした。

回路図。半波整流+1.8V三端子レギュレータによる安定化電源
変換アダプターにうまく入れるように配線
拡大した裏の様子
はんだ付けした回路をケースに入れると電池にそっくり
107Aに搭載したところ
入力は電源トランスAC6V組のGNDでない方につなぐ

ロータリスイッチは大変よく作られており、接触不良は起きていない。抵抗器が値をキープしてくれれば、後数十年でも動くだろう。高精度(1%)の高抵抗値(数MΩ~数百MΩ)抵抗器は入手困難だが。

こちらもだいぶ昔に入手したもの。菊水電子製107A。当時の日本を代表するVTVMと言われている機種。到着時は見るに耐えぬ塗装だったので自分で塗り直した。

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スロバキア JJ.Electronic製。米国製との違いはわからないが、新品ということで購入した。VMVTに組み込んだら、元の東芝製よりはゲインが多少高いようで、調整が必要。

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1. 1.5V定電圧電源の作成 (VTVM Battery Eliminator)

1.5V出力の三端子レギュレータはないように思われるので、LM317で代用。そして、単一電池用スペンサーの代わりに、サイズ的に近いフィルムケースを使ってみた。アルミ製のフィルムケースも手元にあるが、取り敢えずはプラスチックケース。ただ、LM317の出す熱(RX10Ωレンジでは、最大150mAの電流が流れることによる)が気になるので、様子をみて、アルミかプラスチックかを決める。

これで、電池漏れの心配がなくなっただけでなく、Ω-ADJボリュームを弄ることもなくなった。

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2. 入力変換コネクタの加工

M型コネクタに近いものが使われているが、自前のケーブルはBNCに統一しているので、M-P⇔BNC-J変換コネクタの中央を電気ドリルを使ってなんとか短く加工した。

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VTMVのバッテリーを定電圧に変える回路はすでにネット上にあり、明日以降つくってみる。改造といっても、元にいつでも戻せるようにしたい。

それと気になっていたことがあり、DCVもDCRも指針が微妙に動き、安定するまでに1分間かかっている。それはコンデンサのリーク(漏れ電流)のせいと指摘されている。それも明日に確認してみる。

<翌日1.30 の追加>
 増幅双三極管12AU7の入力段にあるコンデンサ 0.01μF をフィルムに取り替えたところ、一瞬にして安定的に表示するようになった。元のコンデンサはオイルコン、1972年製のようだ。70年代になってもオイルコンに品質不安定なものがあるようだ。

コンデンサはほかに、電源部整流用 10μF(ケミコン)、ACV測定用 0.1μF(オイルコン)、0.033μF(オイルコン)、0.047μF(オイルコン)の4つある。

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<翌々日 1.31 の追加>
 手元に真空管ラジオ用の0.047uFフィルムコンが2つ残っているので、オイルコンと取り替えた。今回は残念ながら大した改善は見られなかった。ACV測定の戻り(測定対象からプローブを外した時に、指針がゼロの位置に戻ること)が数秒と遅い気がしたけど。出荷当時の状況は分からないが、コンデンサに貯まった電荷を徐々に放電すると解釈すれば、そんなものかもしれない。

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それと定電圧電源を単一用スペンサーに入れることにすれば、電源トランスからのリード線一本が増えるが、見た目は単一電池と同じなので、良いような気がする。その線でやってみる。

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真空管電圧計(VTMV)は回路図がほとんど同じ(米国メーカー Heathkit のパクリ)なので、プローブも似ていると思う。DCV測定用に1MΩ抵抗器が内蔵され、ACVやDCRモードではショートしないといけないので、スイッチも内蔵されている。高電圧による感電防止のため、プローブのケースがプラスチック製。ノイズ防止には金属が有利だけど。いずれにしても、プローブの自作は結構面倒かも。

ただし、DCV用とACV/Ω用と別々にケーブルを作る例がよく見かける。それだとスイッチが要らない分簡単にできそう。スイッチの接触不良による信頼性低下もなくなるし、高電圧にも安心。

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回路図(クリックすると拡大される)はよくあるものと同じ。

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直流電圧測定用の等価回路は以下のとおり。入力インピーダンス(抵抗)は10MΩ。ただしプローブにも1MΩの抵抗器が内蔵されている。プローブ内の抵抗器は高電圧によるダメージを防ぐのが目的だろう。全体的にDMM並に、入力インピーダンスが高いので、ノイズの混入が心配。

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抵抗測定用の等価回路は以下のとおり。測定対象となる抵抗器による分圧を測定している。流れる電流が微小だが、抵抗測定モードにすると、電池がつねに消耗されるので、アナログテスタと原理的に異なる。また、電池の内部抵抗を無視するならば、電池の電圧変動は原理的に測定値に影響しない。なお、電池を流れる最大電流は 1.5/10 = 150mA。

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RX10Ωレンジでは、ゼロΩも無限大も調整するし、中央目盛は10Ωなので、ロー抵抗値も割りと精確に測定されるらしい。

ただ、自分には電源があるのに、電池を使う目的は理解できない。当時は無理でも、いまなら電池の代わりに定電圧回路にすべきだろう。と改造を考えている。

以下はACV測定用等価回路。入力インピーダンスは約1.5MΩ。6AL5検波のダイナミックレンジは流石。ダイオードだとそうは行かない。ACV回路はDCVやDCRと違って、真空管のパラメータを取り入れないとうまく設計できそうにない。

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美品の真空管電圧計が届いた。出荷当時の一式が揃っていると思われる。本体以外に、プローブ、取説、検査票、買上げ伝票、発泡スチロール、および箱がついている。伝票は日付が昭和49(1974).4.1、売値が¥17,000。

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電源コート以外に痛みがほとんどない。電源コートにはなにかが多少ついていて、また若干硬くなっている。取り替えたくないが、様子をみて決める。

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内蔵されている電池の腐食が心配なので、早速開けてみた。電池に直ハンダ付けされた構造。腐食は確かにみられるが、周りに流れ出していなく、安心した。

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恐れながら、電源を入れてみた。大丈夫のようだ。15DCVを入力にいれてみたところ、調整は多少必要だが、きちんと動作しているようだ。抵抗レンジは電池を交換したら機能するようになった。

なお、使われた真空管は6AL5と12AU7、東芝製。検波用双2極管6AL5は全く人気がなく捨て値で手に入るのに対して、差動増幅用双3極管12AU7は千円前後になっている。

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トランジスタ電圧計と比べて、構造がとても簡単だし、回路図もアナログテスタレベル。しかし、周波数特性がとてもよく、4MHzとか13MHz、平気で書かれている。 ブラウン管オシロやテレビを修理するのに持って来いの測定器だが、いまでは用途が限られている。