1994年末に購入してから、なぜか一度も開けたことはない。使ったこともほとんどない。実用品として考えていなかったからだろう。

しかし、興隆になった中国では昔のテスタがコレクションの対象になっていて、とくにこのMF-35型はトップ級の評価を集めていると聞いたので、開けてみたくなった。

MF-35型は80年代以前と以降では使用されている抵抗が変わったりしていて、自分の持っているものは90年代製のはず。

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型番が重要。中で使われた抵抗に89年2月製という表示があり、90年代製であることは間違いなし。

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完全な手作り。プリント基板を使用していないことにびっくり。耐久性ではこちらのほうが良い。保修にも便利。

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噂のトランス。これで交流電圧2.5Vレンジを昇圧して非線形を克服したのね。

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精密抵抗に誤差0.2%クラスが使われているようだ。コスト重視の日本では考えられない。アナログテスタに精度を求める意味はあるのか。でも、当時のものづくりに対する真剣さや真面目さが今となって評価対象になっている。80年代以前では巻線抵抗がもっと多く使われていた。

外観では当時の日本製に圧倒的に負けていたが、性能の面ではどうだったんだろう。日本製代表機種の横河電機 3201は許容差がDCでは2%、ACでは3%となっているが、このMF-35型はDCでは1%、ACでは1.5%なので、少なくともスペック上ではMF-35型のほうが精度的に上だ。

1%と2%との差、ユーザにとってはどうでもいいことだが、メーカー側にとっては大変な壁がそこにある。誤差0.2%の抵抗が使われたのも1%を確保するための措置。コスト競争と無縁な計画経済下でしか実現できなかったことかも。日本工業標準規格「JIS C 1202:2000 回路計」によると、アナログテスタにAA級とA級の2階級があり、直流電圧測定において、AA級はフルスケールの±2%以内、A級はフルスケールの±3%以内と規定されている。それ以上の階級はないようだ。横河電機3201がAA級として販売しているのは2%だからだ。MF-35型はAAA級?そんなすごいものが70年代の中国にあった?信じられない!

最後にMF-35型の特徴をまとめてみる。
1. 精度が高い。スペック上、直流では誤差が1%、交流では1.5%。
2. 交流でも直流同様の線形スケールを使っている。
3. 0.1~10Ωまでの低抵抗が測定可能。
4. 交流電流が測定可能。
5. 見えない内部にコストをかけている。

アナログテスタには、一般に大きなメータがあり、色々な目盛がそこに印刷されている。電圧・電流用、抵抗用等。

原理上、抵抗は電圧・電流と同じ目盛を利用することはありえない。オーム定理からも分かるように、一定の電圧を抵抗にかけると、流れる電流は抵抗の値と線形関係にならないからだ。

さらに、目盛をよく見ると、交流(あるいはその最小レンジ)が別目盛になっているアナログテスタがほとんど。というか、交流も直流も同じ目盛を使うものは見たことがないと思っていた。交流の最小レンジが別目盛になっていたり、交流と直流が完全に別目盛になっていたりするなど。

その理由はダイオードの非線形性にある。交流を直流に直す(整流という)には一般的にダイオードを使うが、低い電圧では、ダイオードの非線形性が顕著になるので、目盛も非整形にならざるをえない。

ここまではの話はいわゆる常識。しかし、その常識を破ったものは実在した。しかも自分の所有したものだった。びっくり。

さらにびっくりしたのは、その製品はアメリカ製でもなく、日本製ではなく、なんとバカにされてきた中国製だった。1977年につくられてきた MF-35型 が線形交流目盛を持っていた。

MF-35型はMF-18型、MF-10型と並んで、中国製アナログテスタの最高峰といわれているが、線形目盛になっているのはMF-35型のみ。

線形目盛だからといってなんなんだ、という意見もあるが、オリジナリティを尊重する立場、私はすごく感動したけど。

そのほかに、0.1Ωからの低抵抗が測れるのもMF-35のユニークなところ。

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日本製最高峰といわれている、横河電機の回路計 3201はいまでも新品で買えるのがありがたいが、非線形目盛をつかっている。

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三和電気計器製FET電子テスタ EM7000。勢いで注文し翌日に届けてくれた。本体以外に、テストリード、取説(日本語&英語)、検査合格証が入っている。

箱にわざわざMade In Japan(日本製造)と書いてあることに笑ったが、外観は決してパーフェクトではない。明かりに当てると、プラスチック本体に歪みや傷がみられる。自分がメーカーの責任者なら、こんなものの出荷は認めないだろうけど、中韓とのコスト競争ではしょうがない面もあろう。

針のついているメータ(テスタでは最も高価なパーツ)はどんなに回転しても、ゼロからのズレはほとんどない(最大でもフルスケールの1/120以内)ことが流石だ。しかし、針の動きは遅いというか、のろい、のろすぎる。針の動きをみたら、もうちょっと速く走らんか、いらいらしそう。

このテスタについて、もうひとつ論争になりそうなのはFETを取り入れるべきかどうかということだ。そう、アナログテスタといいながら、EM7000にはFET増幅回路が内蔵されていて、見かけ上の感度は大変高く、0.12μAとなっている。裸のメータ感度は40μAとなっているので、50dB(333倍)の増幅度。

欠点は電池がないと増幅回路が働かないので、測定するたびに電源スイッチをOn/Offしないといけない。メーカーもそのことを気にしているか、Onの状態を示す赤LEDが点滅している。注意を喚起するとともに電池の消耗を防いでいる。

電圧電流各レンジは3/12系列で揃っているところがよい。個人的な欲をいえば、AC6Aのレンジをやめ、DC30μAに当ててほしい。ついでにDC6AをDC3Aに。

FETのおかげか、交流電圧の周波数特性が1MHz以上に伸びていることは素晴らしい。最小レンジAC3Vしかないのが残念だが、実測したところ、1MHzまではスペック通り、それ以上の3MHzまでは10%以内の誤差で測定してくれて、ACミリボルトに匹敵する周波数特性なのだ。

精度を求めるときにはデジタルテスタが有用だが、信頼性に関してはアナログが高いと自分は思っている。とくに格安のデジタルテスタはレスポンスが遅く、値が決まるまでに数秒かかってしまう。急に変化する電圧電流には追いつかない。また、ACの周波数特定についてもまだアナログに歩がある。

といっても、世の中はすっかりデジタルテスタ一色になった。日置にはこれといったアナログテスタは残っておらず、三和にも新規品種の開発は期待できそうにない。憧れの横河電機製3201にいつかは手を出すかもしれないが、三和のアナログテスタはこれが最後になるのだろう。

アメリカでは、ハイエンドブランドのTriplettとSimpson製も売れないが高値のまま細々と作られているようだ。

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定電圧電源に大容量コンデンサ2つが必要なので、手持ちの中から1000μFを選んた。何年間も置いてきたので、使えるかどうかを測ってみたくなったが、アナログテスタが動かない。容量の測定はともかく、漏電や容量抜け等をチェックするのにアナログが便利。さらに大容量になると、抵抗レンジでの針の触れ具合によっておおよその容量が分かるし、抵抗値によって極性もわかる。

この一台はいつ買ったんだろう。当時でもいわゆる安物だったけど、交流電流が測れるから購入したのかもしれない。落としたりしてパネルにひび割れが多く、内部のバッテリー端子も錆っている。それでも、抵抗以外のレンジは動いている。

アナログテスタマニアの自分は中学生や高校生の頃、テスタをつくろうとしていろいろと頑張って、多くを勉強した。もっとも重要なパーツはいうまでもなくメータだが、水平に置いたままではなく、立てた状態で、針の水平・垂直のズレを見るのが好き。フルスケールの1/50(つまり1目盛)以内なら合格といえるが、多くのメータはそういう簡単なチェックにパスしていない。手持ちの横河3201でもダメで、だから処分されたのかもしれない。

アナログテスタはいま、日本ではほとんど製造されていない。僅かに残っているものも多くはおもちゃ程度の機能でしかない。

省エネに有利なアナログテスタに復権する日があるんだろうか。難しい予想はともかくとして、手持ちのこの1台を直してあげたい。

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子供時代に憧れたものは、使わなくても大人になったら買うものだ。夢をもう一度、というやつかな。

自分のところにも、テスターは沢山あっても、中国製MF-35型を喜んで購入した。店員は勿論ビックリした。こんなものは個人が買わないだろうという顔をして。価格は455元。1994年末当時のことだった。

記憶は薄れているが、お店では最高級品のはず。革製収納ボックス付き、如何にも精密機器という感じ。でも、年数が経てば、ボックスの取手はボロボロ。

取説の印刷といい、テスターパネルのつくりや品質といい、日本横河電機製3201とは全く比べるものにならないが、測定器なにひとつなくラジオをつくっていた子供時代の憧れとして、墓場までもっていくもののひとつだろう。

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いつ手に入れたのかは覚えていないが、ネジがカビていて、裏には1969年との備品管理番号があった。40年前の製造ということだね。また、内部には修理した痕跡が見られる(修理したのは自分だが)。

ただ、驚いたことに、調べたら同系列の製品がいまでも販売されている。精度よく、丈夫につくられ、改良余地のないほど、日本を代表するテスタのひとつなんだろう。

<アナログテスタ 横河電機 3201 仕様>
  直流電圧 0.3/1.2/3/12/30/120/300/1200V
  直流電流 0.012/0.12/1.2/12/120/1200mA
  交流電圧 3/12/30/120/300/1200V
  抵抗    2/200/20000kΩ
  入力インピーダンス DC100kΩ/V、AC10kΩ/V
  精度  DC 許容差 ±2%

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