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1965年製アナログテスタ Sanwa JP-5。サンワ社内資料によると、本モデルの発売は1962年、学校向けテスタとの位置づけ。内部抵抗はDC/ACともに2kΩ/V、180uAメータを採用。技術的に特筆すべき箇所は見当たらないが、小型ヒューズが採用されていた。過大入力によるテスタの破損をメーカー側が意識するようになった証拠。パネルに「安心 ヒューズ付」とのシールもそのことを宣伝しているものと思われる。

届けられて調べたら、ACは動くが値が怪しかった。一方DCは動かなかった。保管状態が悪いと巻線抵抗が断線しやすいからだ。それを取り替えたら動くようになった。さらに、腐食したバッテリー端子を取り替え、なんとか使えるものにした。

世界的に珍しい鉄製裏蓋が当時のサンワ製品によくみかける。錆びるし、回路の上に載せて使うやり方はショートをもたらすなど、デメリットが多い。あえて採用した理由は鉄によるメータ磁石への影響を避けるためだ。鉄外装のバッテリーを使うだけでも約5%の指示誤差が出る。

このJP-5と同時期にSP-5というアナログテスタも販売されていた。両者はほぼ同じ製品のように見えるが、違いについて比較してみたい。

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上海滞在中、第四電表工場の自社販売店から、MF-10型と一緒に、このMF500型も新品で購入していた。売値は約120元(約1500日本円相当)。埃だらけのショーウィンドウには、そのほかに、新品のMF-14型や、MF-35型、MF500A型、MF500B型等も置いてあった。ふたりだけの店員さんは、ひとりが奥の会計ルームにいて、ひとりが入口のデスクでなにかをずっと書いていた。彼らは第四電表工場職員のようで、ひとりしかいない客の私に声をかけることなく、商品を売る気はなさそう。売れても売れなくても生活に直結しないからだろうか、どうせ買う客がいるはずがないからだろうか。商品の外観がよく、愛想が良ければ全機種を買っていたのに。

このMF500型は60~70年代当初、500型という名称だった。当時の売値は100元、いまとそれほど違わない。しかし、当時の中国人月給が50~100元、約1~2ヶ月分相当なので、いかに高価な商品かは想像できよう。個人所有はほとんど不可能。いま流通している(当時製造の)中古品は会社や大学、研究所の備品だったと言われている。

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上記は1973年当時の回路図。本機がほぼそのまま踏襲している。

500型はイギリスの名機 AVO meterを参考にしてデザインされて、ロータリスイッチがふたつある。当時の中国ではテスタのスタンダード機種のようで、感度が20kΩ/V、アメリカンスタンダード Simpson 260と同じところも理由のひとつだっただろう。

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理由はほかにもあろう。サイズが大きく、目盛が見やすい。いまになってはその存在感が一層目立つ。

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テスタにおいて、もっともコストの掛かるパーツはいうまでもなくそのメータだ。コスト削減には、より小さいメータにするのが効率的。携帯に便利だし、見かけ上の精度が上がり、初心者に歓迎される。しかし、測定器としてのテスタとはなにか、その問いを追いかけると、メータのサイズが大きな問題になろう。日本に、JIS規格でいうAAクラスのテスタがほとんどないのはメータのサイズがまず合格しないからだと個人的に考えている。かといって、何万円もかけて大型テスタを作っても売れるはずはなかろう。

そういうことで、アメリカは小型化を拒否し、テスタの大量生産を事実上ストップした。日本は小型化の道を選んだ。中国は小型化の代わりに必死のコスト削減に取り組んできた。

このMF500型は見た目がひどい。ロータリスイッチのダイアルが曲がっているし、塗装にムラや小さな気泡が随所にみられている。店員さんに告げても、安いからしょうがないとのあっけない返事だった。

中身はもっとショッキング的。ロータリスイッチはセラミックもどきのプラスチック。抵抗器は当然のように、W数の小さい小型ものになっている。手作業だからかもしれないが、抵抗器やコンデンサの半田付けが雑すぎる。さらに、リード線が細すぎて、数A電流には耐えられない、などなど。

ただ、先日、ゴミと思って放置していた本機を測定したら、案外精度がよいことに驚いた。それで、120元の販売価格を考えれば、しょうがないなぁ、と思うようになった。

そうなると、早速改善に取り組んだ。配線が汚いので、電池室に配置された保護ヒューズを外した。誤操作は神経質の自分がやらないから。細いリード線をできる限り、太いものに置き換えた。10uFケミコンを積層セラミックコンデンサに取り替え、2500Vレンジ用10MΩ抵抗器(抵抗器3つを直列接続してコスト削減を図ったようだ)や500mAレンジ用1.5Ω抵抗器(コスト削減のために、3Ω抵抗器2つが並列接続していた)を取り替えた。

以下の写真は改善後のもの、見た目が変わったことを断っておく。

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ついでに、1965年製品の内部写真を最後に載せておく。文化大革命時代が良かったと言われても反論できないが、人件費が違うことが両者を分けた原因だろう。月給が当時の100倍以上になっている。本機種が千元(約13000日本円)でも売れるなら、数十年前の品質に戻せるかもしれないが、そのためにブランドの確立が先決。

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数十年経っても、アナログテスタに関しては、技術的進歩はほとんどないことは今回のMF500型でもよくわかった。それどころか、昔のほうが良かったとはどういうことだろう。日本の横河 YEW 3201は1969年から、保護ヒューズの追加以外にほとんど変わってないし、アメリカのSimpson 260は70~80年代製が最も良かった事実と照らしあわせて考えてみたい。

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久々に入手した日本製アナログテスタ Sanwa 370-ATR。製造日不明だが、恐らく60か70年代のものと思われる。特徴的なのはその厚み。メータに単2電池を載せているという構造上、8cmもの厚みだ。一方、メータが小さく横幅がなく、ゆえに全体的に良いデザインとは言いがたい。

DCの感度は10kΩ/V、業界標準の20kΩ/Vにはいま一歩というところ。また、メータの目盛板はすっきりしたものではなく、なんでもかんでもとにかく描いておけばよいという思想が窺える。

しかし、いいところがないわけではない。とくにロータリースイッチは流石、いま回しても全く不安感はなく、その感触が世界一と評しても間違いではなさそう。抵抗器の一部に許容誤差2%ものも見受けられるが、整然と並べられているところがよい。

鉄製の裏ケースは精密に作られたが、開けるのに苦労する。

なお、測定してみたら、DCVでは2%、ACVでは10%の誤差が見られた。半可変抵抗がないので、他の抵抗に取り換えるか、並列接続して調整する。

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新品で販売しているので、上海北京東路にある、名門上海第四電表工場の自社販売店から購入した。販売価格は240元(約3000日本円相当)。本体のほかに、テストリード、取説、発泡スチロールがついている。電池は別売。

本機種の感度は100kΩ/V(DCV)、中国製テスタのなかでは、史上最高の感度だそうだ。60年代に既に製造していたが、細々といまでも作っている。無論、さっぱり売れず、自社販売店にいる客は自分ひとりだけ。

中を開けてみたが、コスト削減のため、80年代以前製と大きく中身が異なっている。メータだけが当時のものとあまり変わっていないかも知れないが、ロータリスイッチや抵抗器等ほかのパーツは価格相応のものにしか見えない。

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上海では程度のいい中古テスタが簡単に手に入ると思っていたが、大間違い。下調べせず前準備不足だったことが否めないが、MF-12とこの1台しか見当たらなかった。売値は前者が290元、後者のこの1台が310元。中国人からみるとどれもぼったくり価格だが、市場に出回っている品が少ないから、お店側がそう強気でいられたのかもしれない。

中国製テスタは製造時期が古ければ古いほど質がいいという説がある。実物で確認したわけではないが、多くの写真や経験談を見ているとそんなもんだろうと認識している。90年代以前の計画経済では、製造数が少なく、売れなくても国が会社員の生活を保障してくれるので、しっかりした物は結果的に多かった。その後の市場経済では、売れること、利益が出ることが至上命令になり、設計のゆとりがなくなり、コスト削減にあらゆる工夫が施され、年代が進むにつれ、使い捨ての商品になってしまった。だから、新品のアナログテスタはツールとして割り切った買い方が必要といわれている。

そのことは中国だけでなく、日本でもサンワ社が頑張っているが、納得のいい現行商品に自分がまだ出会えていない。SH-88TRは裏ケースの爪が折れたし、EM7000はレスポンスがダメ。アメリカ製新品Simpson260も中身が納得のいくものではなかった。そういうことで、質が良く、納得のいくものを手に入れようとすれば、どうしても80年代、90年代のものに限ってしまう。

MF-18型はMF-35と並び、精度のいいテスタとして知られている。許容誤差はDCでは1%、ACでは1.5%。繰り返しになるが、日本製代表機種の横河電機 3201は許容誤差がDCでは2%、ACでは3%となっていて、少なくともスペック上、中国製に負けていた。

本機は銘板に1981との印字があり、1981年製になる。中のスイッチや、抵抗器上の日付からも1981製を疑う理由はなかった。また、本機種は複数のメーカーが生産していたが、本機は貴州省の永躍儀表工場製、MF-18では最もダメな製造メーカーと言われている。ACAが測れるのも特徴のひとつ。メータカバーはガラス。

ロータリスイッチは2つ、決して使いやすい機種ではない。が、手に持つと、ずっしりと重さが伝わってきて、信頼性が高い。重量バランスもよく調整されている。

中を開けてみると、手作り感が強いが、メンテナンスには有利か。

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中国にいるので、アナログテスタは簡単に買えると思ったが、そうでもなかった。店頭ではほとんどみかけないから。ネットではやはり品質が心配。

それでも安さに釣られてMF-47型を購入した。新品なのに40元(500日本円相当)。使ってみて、実用品としてよく設計されて作られた製品だと思った。

本体以外に、取説、テストリード、元箱がついている。電池は別売。

よく設計された根拠としては、単2電池を使用すること、裏蓋を開けなくても電池・ヒューズが交換できること、テスタをスタンドで斜めに立てられること等があげられる。

ロータリーSWはわりとしっかりしていて、不安感はない。メータの重量バランスは若干悪いが、許容範囲内。DCV感度は20kΩ/V、悪くない。

販売価格を考えたら、製造メーカーの努力に本当に脱帽してしまう。

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配送ミスにあったもの。本体以外に、取説、テストリード(TL-95)、および元箱が付いている。

製造年は80年代前半。取説の印刷時期が80.12となっているのが根拠。ただ、取説のイラストに書かれたトランスが実物にないので、取説作成時期以降の製品だと推測した。

感度はDC 20kΩ/V、AC 9kΩ/V、極普通のスペック。特徴的なのは薄さにあろう。実測したら28mmしかない。それと、バッテリーのテストや導通ブザー等、現代風にアレンジされている。

コストを徹底的に意識した作りだが、ロータリースイッチはサンワらしく、しっかりしている。また、誤差が大きくなったが、調整したらスペック内にぎりぎり収まった。

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アナログテスタには欠点がいくつかあって、そのひとつは入力インピーダンスが低いこと。60年前にSimpson 260が樹立した業界標準の20kΩ/Vが、現代の低電圧中心の測定では使い物にならないことが多い。それは精度云々以前の問題でもある。

ということで、アダプタをつくってみたい。回路自体はよくあるもので、自作した測定器にもよく登場していたが、アダプタとして単独に製作したい。

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入力インピーダンスが固定タイプ、約10MΩ。DCV入力端子に交流を入れても問題ないが、直流電圧のオフセットをカットしたければ、ACV入力端子を利用する。また、出力インピーダンスが低いので、どんなアナログテスタでも、パネルメータ(直流または交流)でも、入力電圧がちゃんと合っていて、線形性や表示誤差が少なければ使えるはず。

最高1500V電圧にも耐えうるように設計したつもり。入力電圧が低くてもよければ、コンデンサの耐圧や抵抗のワット数を適宜減らしてよい。

周波数特性が気になるところだが、高速オペアンプを利用すれば、1MHzまではいけるかもしれない。

アナログテスタにしか使わなければ抵抗は許容差が1%もので十分。デジタルテスタにも使って見たければ、0.1%やそれ以上に精度のいい抵抗が望まれる。なお、101kΩ抵抗は入手しづらいので、100kΩと1kΩとの直列接続で代用する。

調整箇所は半固定コンデンサ1箇所のみ。

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ボロボロのTriplett 630-NAが届いた。ダメ元で落札した物なので、覚悟はしていたが、あまりの汚れに絶句。それよりもひどいなのは、メータの目盛板が固定されておらず、ネジが中で転がっていた。メータを本体に固定するネジも1本欠落していた。

メータの内部にあるべく部品が幸い紛失しておらず、注意して元に戻したらメータがきちんと動いた。重量バランスはそれほどよくないが、実用レベルだ。

メータカバーはプラスチック。静電が帯びやすいので自分としてはガラスのほうを好む。ただ、このNAのカバーは大変厚く(周辺は1cmも)、割れる心配はなさそう。磨けば新品同様になるようだが、試す度胸はなく、このままにしておく。それほど気になるキズでもないし。

ネジの欠品は痛い。インチ規格だし、頭の形が特殊のため、日本では入手不可能だろう。そこで4本すべてを Φ3×20 mmに取り替えた。

各レンジをチェックしたところ、DCA 1.2mA、1.2A、Rx10 の3レンジがおかしく、また全体的に誤差が許容範囲を超えていた。

全体の誤差は半固定抵抗の調整で修正した。さらに、抵抗 R1 218.2Ω (DCA 1.2mA対応)を 200Ω+18Ω(2本直列)、および、抵抗 R27 0.1972 (DCA 1.2A対応)を 0.2Ωに取り替えて、抵抗 R7 6.5Ω (Rx10対応)をマンガニン線 Φ0.35mm で巻き直した。

ケースに貼られたシールに1972年との日付だが、目盛板のシンボルマークや、コンデンサの刻印等から、本個体の製造年は60年代後半と推測した。

抵抗は許容差1/2%のものがほとんどだが、1/3%ものもいくつか見られる。

なお、裏ケースを固定するネジ2本も欠落していて、(インチ規格)UNC No. 6×5/8 ピッチ32山 で代用した。

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折角分解したことのある個体を手に入れたので、分解してみたい。アナログテスタマニアになるには、使い方だけでなく、内部の構造を理解し、修理までができないといけないと思っているから。

ただ、分解するには壊すリスクを覚悟しないといけないので、気をつけましょう。

まずはフロントパネルにある、ゼロオーム調整ボリュームのツマミを外さないといけない。繰り返しになるが、本個体はツマミが取り替えられたので、ツマミ固定ネジを回すだけで簡単に取り外せた。しかし、ふつうのSimpson 260/270では、何回もトライしたが、自分は取り外すことができなかった。壊すことを恐れているところもあったし、接着剤で固定されている可能性もある。

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つぎにプリント基板を取り外すことにする。電池室の蓋を外し、その中にあるネジ2本、裏ケースの底に近いところにある別のネジ2本、計4本を取り外すと、裏ケースが取れる。そこから、プリント基板をメータに固定するネジ2本を外す。

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終わったら、プリント基板をケース本体に固定する止めリング(丸型スピードナットというか?)2本を外す。本個体ではその部分に止めリングが残っていないが。

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プリント基板を真上に引っ張って取り外す。ロータリースイッチおよびAC/DC切り替えスイッチの回転軸はケース本体に固定されていて、プリント基板には固定されていないことだ。ただ、プリント基板の裏では多くのリード線が他の箇所と繋いでいるので、プリント基板を完全に取り外すにはさらなる作業が必要。

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プリント基板にあるパーツを取り替えたりするなら、ここまでの分解作業で十分だと思うが、今回はさらに作業を進めていく。メータムーブメントをテスタから下ろすことを目標にしたから。

メータカバーをまず外す。電池室およびプリント基板の下にあるネジ4本を取り外す。なお、メータカバーを外すだけなら、上に書かれたプリント基板の取り外す作業は全く必要なく、ここの作業だけでOK。

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これで、メータカバーが取れる。破損したガラスの交換ならここでできる。

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つぎに目盛板を外す。ミラーが金属製、接着剤で固定されている可能性大。

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片手での撮影がめんどくさいので省略したが、メータムーブメントをケース本体に固定するネジ2本を外して、リード線の半田を溶かすと、メータムーブメントを下ろすことができる。この作業は大変気を使うし、大抵壊すことになるので、他人には絶対に勧めない。

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アナログテスタにとって、メータムーブメントは車でいうエンジンに相当し、最も重要なパーツだ。重量バランスの調整機構等、よくできている。