100本近く真空管を持つようになったら、その良否が気になってくる。新品ではロシア・中国等の製品でしか買えないし、NOS (New Old Stock) については賛否の意見は分かれる。ヤフオク等の中古品に絶対手を出すなというひともいれば、NOSはすべてゴミだと言い切るひともある。ただ、ひとつ言えることは、新品でも中古品でも、自分なりに判定方法や判定基準を持つべきだろう。

真空管は新品でもメーカーによって、製造時期によって、特性のばらつきはとても大きいと聞く。製品にするには、真空管の選別をやっているメーカーは当時でも結構あったようだ。

真空管の良否判定にチューブチェッカー(真空管試験機)がよく使われる。お店や真空管の売買を専門にしているひとは必ず持っているだろう。有名なチューブチェッカーに TV-7シリーズ 等がある。しかし、いまはチューブチェッカーでさえ、ほとんど製造されておらず、入手するには中古、しかもとても高価になってしまう。真空管の測定には高電圧、性能のよいスイッチ等が必要で、作るにもいまの時代では相当大変。

そういうことで、自己流の良否判定方法を書いておく。

ステップ1:導通テスト
 ステップ1で真空管を壊すことはないだろう。テスタ(デジタルテスタまたはアナログテスタ)で、真空管のピン配置図を見ながら、真空管の各ピン間の導通をチェックするという良否判定方法。ヒーター以外に、たとえば、カソードとプレード間、カソードとグリッド間等は離れているので、絶縁状態でないとおかしい。つまり、ショートすべきでないピン間がショートしたら、その真空管がだめだということだ。大量の真空管の測定には向かない方法だが、真空管愛好家は暇も情熱も持って余っているので、ピン配置図を確認しながら、ひとつひとつゆっくり導通テストをやっても悪いことではなく、却って愛着心が増すだろう。7ピンMT管でも、ピンの組み合わせは21通りもあるので、時間は確かにかかる。

ステップ2:ヒーター点火
 ACが使われることが多いが、DC(直流)でもヒーターは点灯する。電圧を短時間(数秒や数分)の間なら、ヒーター定格電圧の数倍の電圧をヒーターにかけても真空管が壊れることはないが、気をつけて実行しよう。ヒーターが明るすぎ、燃えすぎた場合、迷わずすぐ中止して、原因を究明する。

ヒーターにかけるべき電圧は真空管の型番からわかる。ただし、古い真空管や軍用(ただの数字のみの型番)は型番からヒーター電圧がわからないので、真空管データベースを検索して、ヒーターのピン番号と定格電圧・電流をしっかりと確かめよう。

ヒーターにかける電圧は数千円の実験用可変定電圧電源(0~30V/5A等、Amazonに大量出品されている)で十分。スイッチング電源でも構わない。大事なのは出力電圧が精確であることだ。流す最大電流を制限できる機種であれば、ヒーターの定格電流の20%増しにセットして、定格電圧に到達するまでの時間はかかる(真空管によっては数分間)が、真空管を痛めないのでおすすめ。たとえば、ヒーターの定格が 6.3V/0.3A であれば、電源の出力電圧を6.3V、出力最大電流を0.4Aにすればよい。

ヒーターが点灯しない、つまり電流が流れない、あるいは、定格電流にほど遠い電流値の場合は、電源の設定ミスか真空管の故障が考えられる。自分の場合、たとえば、真空管 6EA8 の定格ヒーター電圧・電流は 6.3V/0.45A と規定されているが、6.3VのDC電圧をかけても電流は0.21Aしか流れなかった。これで、不良だと疑っていたその 6EA8 はやっぱりという確信に変わった。

経験を積めば、恐らく真空管のサイズからでもおおよそのヒーター電流がわかるので、型番の読めない真空管に対して、ヒーター電流の大きさを確かめながらヒーター電圧を少しずつアップしてかけていくと、真空管の定格ヒーター電圧を推定できるかもしれない。

ステップ3:カソードの電子放出能力(エミッション測定)
 エミッションの測定に関し、ネット上に多くの情報がアップされているが、めんどくさいものがほとんど。

ここでは、最も単純に、真空管を2極管(整流管)と見立てて、そのカソード(陰極)からの電子放出能力をみるだけにする。さらに、高電圧をかけると、真空管を痛める可能性があるし、感電したり、高額な電源が必要であったりするので、カソードとその他の電極との間に低電圧をかけることにする。

具体的には、ヒーターを点灯させながら、カソードとその他の電極(ヒーターやカソード以外の電極をすべて、ひとつにまとめる)との間に10VのDC(直流)電圧をかけて、流れる電流をみる。ただし、複合管の場合は、それぞれの部分に分けてエミッションを測定する。たとえば、3極・5極複合管の場合は、3極部についてのエミッション測定、5極部についてのエミッション測定をそれぞれ行う。

測定に関して、時間経過によって電流値が大きく変動するので、ヒーター点灯後1分間後、すばやく上記の測定を終えたほうがいいかもしれない。10V電圧をかけた瞬間、あるいは、5秒以内とか、自分なりのルールを決めたほうがいいだろう。

常用真空管のカソード電子放出能力に関するデータはもっていないが、手持ちの真空管同士の比較でもその優劣はわかり、同型番の真空管の数が増えるとおおよその良否はわかるだろう。

電子放出能力の低い真空管に対しては、ヒーター電圧を2倍までアップして蘇生させることをやるひとがいる。もちろん、定格を超えたヒーター電圧を短期間(たとえば10分間)だけにする。それでもだめなら、その真空管を不良品と認定しよう。

大型出力管に対しては、10Vではなく20Vにするとか、バリエーションはいくらでも考えられるが、基本的な考え方は以上だ。この方法は私が考え出したものではなく、すでに多くの先人たちが実践した方法だ。パスした真空管はほんとに良品である保証はないが、パスできない真空管は問題ありと決めつけて間違いはなさそう。

測定だけで真空管の良否を決める方法は恐らくない。実際に挿して機器の使用目的を達成するかどうか(オーディオアンプの場合はオーディオの音声、通信機の場合は相手の音声等)を確認する、それが最後で最強の判定法かもしれない。

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