送料を含まぜ約1万円で入手した、1960年代にアメリカで販売されていた通信型受信機 HEATHKIT GC-1A “Mohican” Solid-State Communications Receiver。

ネット資料によると、その前身 GC-1 が1959年に発売され、世界初のトランジスタによる通信型受信機だそうだ。改良版である本機は 1968年までに販売され、売値は当初の$109.95から$89.50に値下げ。

驚いたのは本機は基本的にキットであること。メーカーがハンダ付けして製品として販売するものは GCW-1Aと呼ばれ、恐らくパネルの型番でもその違いが確認できる。購入者が自分でDIYしてキットから作り上げることはやはりアメリカならではの、アマチュア無線人口の多さと各種測定器が豊富に市場に出回っているからだろう。

通信型受信機 HEATHKIT Mohican GC-1A
裏側。赤枠のネジ4本を外せば、中のシャーシを前に押出し、分解する。
キットの組み立てを考慮した、ゆとりのある設計

使用されるトランジスタは10個、すべてPNP型ゲルマニウム。1959年にはシリコン型やNPN型トランジスタはまだ製造されていなかったから。

トランジスタの詳細は以下の通り、括弧内は本機に搭載されているもの(前オーナーが交換したと思われる)。

RF増幅 2N1396 (2N1397)
ローカル発振 2N1225 (2N1225)
ミキサー 2N1225 (2N1066)
IF増幅3段 2N373 x 3 (TL-364 ? )
AF増幅 2N407 (2N407)
AF出力 2N407 x 2 (2N407)
BFO 2N409 (2N409)

トランジスタは差込式になっていて、ユーザーが自由に取り替えたりすることができる。通信型受信機はふつうそういうことは考えられないが、キットならではの配慮かもしれない。

メタルケースのトランジスタはすべてRCA製のようで(本機は3つがTI製のようで、前オーナーが交換したものと思われる)、外観は2種類。RF関係の 2N1397, 2N1225, 2N1066 は4ピン、EBC以外に、ケースにつなぐシールド用ピンをもっている。それ以外は、横に1列に並ぶEBC3ピン。どちらも中央はベース(B)、日本製トランジスタの多くはB が外側にあるので、差し替えるには工夫が必要。

RCA製メタルカン・トランジスタは1960年代アメリカ製トランジスタの代表

本機は全く鳴らないという商品説明でのジャンクもの。到着時に分解方法が分からず、ACアダプターまで分解してしまった。外付け12VDCを取り付け、色々いじったところ、ラジオ局の音はイヤホンで聴こえた。しかし、シャーシの向きを変えたら、また状況が一変し、何も聴こえなくなってしまった。

いろいろ調べてやった結果、こういう箇所の問題だと気づいた。

① ミキサートランジスタ 2N1066 が故障。手持ちの 2SA103 で代用。
② IF増幅1段目トランジスタ TL-364 の接触不良。

音量は小さく、音の歪みもひどいが、なんとか聴こえるようになった。

電解コンデンサはあまり使われていない。それほど劣化もしていないようだが、気持ちの問題で取り替えた(時代ものに対する申し訳なさを感じながら)。

取り替えた電解コンデンサ

4つのコンデンサはそれぞれ以下のために使われている。

SPRAGUE 150μF / 15V AF増幅トランジスタC極のACバイパス用
SPRAGUE 50μF / 15V 出力スピーカーとの結合用(DCカット)
AEROVOX 50μF / 15V 音量ボリュームとの結合用(DCカット)
IEI 10μF / 10V AVC電圧用整流

SPRAGUEやAEREVOXはどちらもコンデンサとして有名なメーカーで、キットだからといって安い部品をかき集めて売っていたわけではなかった。相手はアマチュア無線愛好家だからかもしれない。

音は一応鳴ったが、課題はまだ複数残っている。

① 感度はとくに AMではまだ高くない。昼間はやっと文化放送、夜間は広島放送が聴ける程度。ふつうのラジオとの差はあまりないところか、劣っている。

② 音量が小さすぎる。内蔵のスピーカーが断線していて聴こえず、感度(能率)について調べられないが、ふつうのスピーカーをつけると音量がものすごく小さい。インピーダンス35Ωの高能率のスピーカーならふつうに聴こえるかもしれないが、さらなるAFアンプをつけるべきかもしれない。

③ 音の歪みはまだひどい。セラミックフィルターによる帯域の狭さが問題かもしれないが、聴きやすい音ではない。

④ ACアダプターの改善。ACアダプターがついているが、リプルが出力電圧 12V に対して 0.3V もある。定電圧になっていないこと、電解コンデンサの劣化のこと等によるかもしれない。どっちみち、いまの時代では手軽な3端子レギュレータによる定電圧電源を排除する必要はないので、最小限の改造で済ませたい。

外出自粛が良さげのこのご時世、楽しみながらゆっくり整備していきたい。

<追加>
故障した2N1066を代用した2SA103を試しにほかの2SA103に変えたところ、感度や音声の明瞭度が大きく上がった。同じ品種のゲルマニウムトランジスタでも、保管期間が数十年も経ったことから、品質のばらつきは大きい。あるいは、本機種の設計がデリケートだけかもしれない。

これで感度(AMも含め)不良と音声の歪みは解決した。

残った課題は音量を大きくすること。そのまえにコイル断線したスピーカーをなんとかしないといけない。スピーカーの断線は最近続いている。前回の真空管ラジオはなんとか代替品を見つけたが。

コイルが断線しているようだ

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