AliExpressから、電源キット「0-30V 2mA-3A DC Regulated Power Supply DIY Kit Continuously Adjustable Current Limiting Protection for school education lab」を見つけた。どういう性能のものか、好奇心に駆られて購入に踏み切った。送料込で4.18米ドル。1月21日発注、1月28日到着、1週間ほどで無事届いた。

パーツは3つの袋に収められていた。PCB基板(プリント回路板。PCB = printed circuit board)のサイズは 84mm x 84mmの正方形。表側のシルク印刷は質がいまいち、擦ると簡単に落ちそう。

パーツは3つの袋に分けられている
PCBの表側
PCBの裏側

回路図や説明書が一切ついてきてないので、ネット頼りに、以下の回路図とパーツ情報をゲットしておいた。

大変重要な電子回路図(クリックすると拡大表示される)
パーツリスト

キットの特徴は本人の理解では2つあげることができる。

  1. スイッチング電源ではなく、従来のリニア(レギュラー)タイプの電源であること。ノイズの発生が少なく、ラジオ等の電源としても通用する。つまり、電源の質がいいということ。
  2. 出力の最大電流を制限できること。キットの最大電流は3Aとの設計値だが、使用中にボリュームを調整すれば、最大電流を2mAから3Aの間に任意に設定することができる。LEDやダイオード等のパーツは、最大電流を20mA以内に設定すれば、実験で壊れることがなくなる。つまり、保護回路がしっかりしていること。

ただし、電子回路図を確認すると、このキットで大事なパーツ、電源トランスの選定に気をつけるべきことに気づいた。というのは、最大電圧が30Vとなっているので、定格出力電圧を30V以上の電源トランスを選ばないとおかしいわけだが、ネット情報では電源トランスの2次側は定格24Vと指定されている。その理由を推測すると、キットで使われているオペアンプ3つはいずれも、TL081という品種によることだ。そのオペアンプの絶対最大定格(Absolute Maximum Ratings)の電源電圧は、データシートによると±18V、つまり、電圧差36Vまでということだ。しかし、電子回路図を見ると、TL081のうち、2つ(U2とU3)はマイナス側の電源電圧は約-5V、プラス側の電源電圧は電源トランスの交流出力が整流・平滑された後の直流最大電圧になっている。

電源トランスの2次側出力電圧は一般的に、出力電流によって、2~3割変動する。定格電流時の出力電圧は定格電圧になっている。たとえば、電源トランス24V/3Aのものだと、出力電流が交流3Aのときに、出力電圧が交流約24Vとなるように設計・製造されているはず。出力電流が少ないとき、極端の場合、出力電流がほとんどない(無負荷)のときに、出力電圧は2~3割程度高くなる。また、整流・平滑後の直流電圧は交流電圧の1.1倍と計算しても大きな間違いではないはず。

そう考えると、定格出力電圧24V×倍率1.3(無負荷時の倍率)×1.1=34.3Vになり、それがオペアンプのプラス側に印加する電源電圧になる。

プラスマイナスの差は34.4-(-5)=39.4V、TL081の最大許容電源電圧を超えてしまう。無論、超えたからといってオペアンプがすぐに壊れることはないが、そういう使い方は避けるべきだろう。

ましてや、定格電圧30Vの電源トランスを使うことは大変危険。それが定格電圧24Vが指定された理由だと推測した。そのことからも、キットの最大電圧/最大電流に偽りがあることがわかった。電源トランスに定格24V/3Aものを使う限り、出力電流が3A時に最大電圧は30Vになることはありえないし、電源トランスの定格電圧を高いものにすると、オペアンプが壊れる可能性が高くなる。

つまり、電源電圧の高いオペアンプ(ネット情報では、OPA445AP=最大電源電圧±50V が推薦されている)を使い、定格電圧30V/3A以上の電源トランスを使うと、やっと電子回路図通りの電源ができると思われる。送られたパーツのままでPCBを完成し、定格電圧24V/3Aの電源トランスを使うと、出力電流の小さい場合には最大電圧は30Vになるかもしれないが、出力電流が3A近くなると、最大電圧が24V近辺に落ちることはやむを得ない。

さて、設計者の意図に沿って、届けられたパーツをそのままPCBにはんだ付けすれば、成功率が最も高いだが、せっかくなので、最大電流を5Aに拡大するようチャレンジしてみた。さらに、手持ちのパーツに合わせ、いくつかのパーツを納得のいくものに変えてみた。

変えたパーツは以下の通り。

  • 整流ダイオード(D1~D4)。秋月電子販売の低電圧ショットキーダイオード45V/10A(型番 SBM1045VSS )。理由は最大電流5Aに合わせるから。
  • オペアンプ(U1~U3)。秋月電子販売の NJM5534D 。理由はNJM5534Dの許容最大電源電圧は±22Vで、予想される電源電圧の約39Vを上回り、多少安心するから。ただし、後述することだが、オペアンプを変えると、電子回路の一部を合わせて修正しないといけない。
  • R1(2.2k / 1W)を 酸化金属皮膜抵抗 2.2k / 2W(千石電商が販売、単価20円)にした。その抵抗器はブリーダ抵抗といわれ、エネルギーを無駄に消費するだけのものだが、目的は電源トランスの最大出力電圧を下げるため。消費電力は計算上、30×30/2.2k=0.4W。
  • R2(82Ω / 0.25W)を180Ω / 1W、150Ω / 1W の2つ並列接続して置き換えた。その抵抗器の消費電力は計算することが容易ではないが、実測では抵抗器両端の電圧が交流6.1Vになり、6.1×6.1/82=0.46Wになる。キットの中では最も発熱する抵抗器のひとつ(もうひとつは下記のR7)のようだ。
  • R3(220Ω / 0.25W)を220Ω / 1W に置き換えた。実測では抵抗器両端の電圧は直流5.7V、5.7×5.7/220=0.15W。発熱は少なく、元の抵抗器をそのままで使っても問題がないはず。つまり、置き換える必要はなかった。
  • R7(0.47Ω / 5W セメント)を 0.1Ω / 5Wの3つ直列接続して置き換えた。0.33Ω / 10W の小型サイズセメント抵抗は見つからず、次善策として直列接続でごまかした。消費電力は最大電流5Aで計算すると、5×5×0.1=2.5W。元の抵抗器をそのまま使ったとすると、消費電力は5×5×0.47=11.28Wになり、定格5Wを大幅に超えてしまう。
  • 三端子レギュレータ 7824 を 7812に置き換えた(上での電子回路図ではキットに含まれる7824がすでに7812に置き換えられたが)。理由は12V駆動の放熱ファンやリレーのほうが入手しやすい。ただし、印加する入力電圧は絶対最大定格の35Vを若干超えてしまっている。(追加)対策として、PCBを1箇所カットして、電源電圧と7812のIn端子との間に、たまたま手元にあった5.1V / 5Wツェナーダイオード(秋月電子販売)を2つ直列して挿入した。また最終的に、三端子レギュレータの使い道は、リレー(必要な電流75mA)、およびデジタル電圧電流計(20mA)の駆動用。流れる電流は95mAなので、消費電力は (35.5V(最大電源電圧)- 10.2V (ツェナーダイオード2つ)- 12V)×0.095A=1.3W。 三端子レギュレータ に小型ヒートシンクを付けたほうが良さげ。
  • (追加)下記の写真を撮影した後に変えたパーツとして、抵抗器 R22(3.9kΩ / 0.25W)を 3.9kΩ / 0.5W に変えた。なぜかというと、CCモードを示すLED(D12)を点灯している間に、R22に印加される電圧は30Vに達し、消費電力は 30×30 / 3900=0.23W になるから。

個々のパーツについて、DMM(デジタルマルチメータ)で測り、ダイオードの向きや抵抗器の抵抗値、コンデンサの容量値を確認したうえで、装着の向きを考えながらPCBにはんだ付けした。完成したPCBは以下のとおり。なお、トランジスタQ4、電圧調整ボリュームP1、最大電流調整ボリュームP2、LED(D12)は基板上ではなく、ケースにつけたいので、パーツの代わりにコネクタをつけた。また、放熱量の多いパーツはなるべくPCBから離れるように配置した。

PCBの表側
立体的に見える角度
裏側からの視角
PCBの裏側

電源トランスの入手については、楽天で、パチスロ・パチンコ用トランス
120VA、100V / 24V、5Aというものを見つけた。新品で送料込2,450円。製造は(株)中村電機製作所と販売店が言っているが、確認できるものは到着電源トランスから見つけることはできなかった。

届いて実測したところ、重量2kg、高さ69mm、幅104mm/79mm、前後85mm。1次側(100V、黄色リード線)抵抗約2.5Ω、2次側(24V、白色リード線)抵抗約0.7Ωになっている。1次2次間は当然、直流では絶縁している。

楽天で購入した電源トランス 24V/5A

電源トランスや、その他のパーツをすべてPCBに接続して動作確認を行ったところ、出力電圧は-0.6Vのままで、ボリュームを調整しても出力電圧に変化は見られなかった。原因はオペアンプU2のオフセット調整回路はTL081と NJM5534D とでは下図のように全く異なるのだ。

オフセット回路がオペアンプによって異なる

そういうことで、PCBを改造し、R10(270k、上図の左側 1.5kΩに相当)を20k(手持ちに22kの抵抗器がなく、近い20kにした)に変えて、その接続先をプラス電源(オペアンプU2のピン7)に直すと、出力電源が無事、0~31Vに変えられるようになった。無論、オフセット調整用多回転半固定抵抗器 RV1 の接続先をU2のピン5からピン8に直すことはいうまでもない。

修正したU2のオフセット回路

キットを収納するケースについて、最終的に70年代の製品、手持ちの Metronix 532Cのケースを流用した。メタルケースであること、大型放熱器(ヒートシンク)がついていること等がその理由。

電源スイッチを入れたら、いきなり出力に電圧を出すのではなく、ケースのフロントパネルにある表記、Power Off → Stand by → Output On を活用した。Outputの On/Off という機能は多くの製品でも省かれているが、実験用電源としてはぜひ備えるべき機能のひとつ。OutputをOffにして、出力電圧を調整したり、最大出力電流を調整して、様々な条件下で実験するものだから。とくに、今回のケースでは、Output Onにするには、Stand By を必ず経由するので、アナログ的なその操作はいまのデジタル時代では絶滅してしまった。その機能を実現するには、AC100V/1.2Aに耐えうるロータリスイッチ(今回はMetronix 532Cについてきたものを流用)とリレー(12V駆動、流せる電流は直流5A以上)が必要になる。

また、出力電圧・最大出力電流の調整にキット付属の安物ボリュームではなく、10回転型ヘリカルポテンショメータ(秋月電子販売、単価700円、キット価格を上回る)を2つ採用した。

さらに、ケースのヒートシンクの形に合わせ、Q4(トランジスタ2SD1047)の代わりに、TO-3タイプ トランジスタ 2N3055(流せる最大電流 15A、最大電力 115W)を2つ使った。2つの2N3055はベースが共有、コレクタが共有、それぞれのエミッタに電流のバランスを取るための抵抗器 0.22Ω / 2W を接続した。

出力電圧・電流のデジタル表示にミニデジタル電圧・電流計 DSN-VC288を活用した。

こうして、最終的には大変本格的な実験用電源に仕上げたことができた。

フロントパネルの各機能

アナログメータが元々あったので、そのまま残すことにした。ただし、フルスケールを5Aにするには、適切なシャント抵抗器(0.58Ωという半端な抵抗値)を選ばないといけないが、なかなか見つからない。アナログメータの感度を調整することがそれに比べてやりやすいので、後日調整することにする。とりあえず今の時点では0.1Ω/5W抵抗器を2つ並列接続して、シャント抵抗器の代わりに使うことにした。

また、フロントパネルにある、最大出力電流設定モードSWは出力をショートするだけのスイッチだが、5Aの電流に耐えうるスイッチはたまたま手元にあって、利用することにした。使い方は、スイッチを右側に倒せば、出力がショートされ、最大出力電流をポテンショメータ で調整できるようになる。設定後、無論、スイッチを左側に戻さないと、出力電圧はゼロのまま。

内部の配置。ケースが無駄に大きすぎた
大型ヒートシンクに2N3055を2つマウント
出力のOn/Offにリレーを使った
フロントパネルの裏側
実際の使用時様子

5A近くの大電流では出力がとても不安定になっている。3300uFの電解コンデンサはやはり心配のとおり、容量が足りない(一般的に、1Aの電流に対して平滑コンデンサ容量は1000~2000uFが適切といわれる)ことと思われる。近いサイズの6800uFが見つかったので、取り替えることにした。

サイズの小さい大容量電解コンデンサは案外見つかりにくい

実際の最大出力電圧は電流によって以下のようになっている。

無負荷時の最大出力電圧は 31.7V。
出力電流が 1.08A 時に、最大出力電圧は 30V。
出力電流が 2A 時に、最大出力電圧は 27.7V。
出力電流が 3A 時に、最大出力電圧は 25.4V。
出力電流が 5A 時に、最大出力電圧は 22.0V。抵抗器R7の電圧降下(5×0.3=1.5V)や、2N3055のベース-エミッタ間の電圧降下(0.6~1V)等によって、24Vにも届かなかった。

5A時の最大電圧は残念ながら22Vにしかならない

ということで、正真正銘 30V/3Aの電源にするには、少なくとも定格30V/4Aの電源トランス、耐圧の高いオペアンプにしないと無理だと思われる。30V/5Aの電源にするなら、定格32V/6Aの電源トランスが良いだろう。

なお、オペアンプに印加している電源電圧(ピン7-4間の電圧)を実測したところ、無負荷時にU1は35.35V、U2とU3は40.60V。

また、出力に含まれるリップル電圧は実測したところ、0.2mV程度となっている。ただし、最大出力電流の設定によってCCモードになった場合には、リップル電圧が30mV程度に上がり、とても高くなってしまう。それも本キット回路設計の欠点だと思われる。

最後に、電子回路の分析をやってみる。間違いがあるかもしれないが、適時に修正するつもり。

オペアンプU2、U3は入力電圧がゼロ(キット全体の最小出力電圧)に対処する必要があるので、マイナス電源が必要。そのために、R2、C2、D5、D6によるマイナス電圧を作り出し、平滑回路R3、C3を経て、ツェナーダイオードD7により、約-5.1Vを得る。プラス電源の約34V(実測は35V)と合わせると、オペアンプU2、U3にかかる電源電圧は39V(実測は40V)になり、TL082の最大定格を超えてしまう。そのために、改善版として、 5.1VツェナーダイオードD7の代わりに、直列した2つのダイオードによる1.3Vの回路も提案されている。5.1Vにした設計者の意図は、温度によるツァナー電圧の変動を最小にしたいからだと推測する。

オペアンプU1は ツェナーダイオードD8と合わせて、基準電圧約10V(実測 10.35V)を出している(出力ピン6)。抵抗器R5=R6なので、U1の出力側(ピン6)はD8の2倍の電圧になる。ただし、自分の分析では抵抗器R4は抵抗値4.7kΩだと、D8を流れる電流は1.1mAと若干小さい気がする。R4を1kΩ、D8の流れる電流は約5mAにすることのほうが適切だろう。いっそうのこと、ツェナーダイオードの代わりに、シャントレギュレータ(電圧レファレンス) LM336Z-5.0 (秋月電子販売)にすると温度特性がよりよいだろう。

オペアンプU3はコンパレータの役割を果たす。プラス側入力は基準電圧からの分圧値(R18、P2、R17)、マイナス側入力はキット全体のマイナス側出力電圧と抵抗器R21経由で接続しているので、R7の電圧降下が比較対象になる。つまり、キット全体の出力電流が低ければ、R7の電圧降下が少なく、U3のプラス側入力が高く、U3の出力電圧(ピン6)が電源電圧のプラス側近くになり、トランジスタQ3、ダイオードD9が導通しない。逆に、キット全体の出力電流が高いと、U3のマイナス側入力が絶対値として高くなり、U3の出力電圧が電源電圧のマイナス側近く(実際には、D9の導通により、U3の出力電圧がキット全体の出力電圧に左右され、マイナス電圧にならない)になり、Q3、D9が導通し、CCモードを示すLED(D12)が点灯し、オペアンプU2のプラス側入力とD9経由で連動するようになる。

オペアンプU2はプラス側入力の電圧に合わせて、出力電圧・電流を調整する。一方、キット全体のプラス出力電圧は分圧(抵抗器R6とR11)してU2のマイナス入力にフィードバックされる。

以上の分析により、CCモード時のリップル増大が説明できるようになる。すなわち、CCモードでないとき時に、D9は導通せず、U2のプラス側入力は基準電圧からの分圧(P1)によって一意に決まる。一方、CCモードになると、D9が導通し、U2のプラス側入力は基準電圧に依らず、R7の電圧降下や、R12とR11の分圧によって、定められるので、比較的不安定な状態にならざるをえない。そういう理由で、CCモードでの運用は定電圧電源としては例外扱いとはいえ、リップル30mVの大きさを受け入れられないのであれば、本キットを改造するか、諦めざるをを得ない。

<本キットを製作してわかったことのまとめ>
良い点:
 ・PCBやパーツは低価格で販売されている。
 ・最大電流を制限でき、保護機能がしっかりしている。
 ・リップルが比較的少ない(0.2mV程度)。
注意すべき点:
 ・電源トランスやヒートシンク、ケース等の追加部品が必要。
 ・スペック通りの30A / 3A をきちんと出すには、オペアンプの限界や電源トランスの選定に気を使うべき。
 ・元々の設計はアイデアが素晴らしいが、パーツの定格について変えたほうがよいと思われるパーツは複数。
 ・最大電流が制限された時(CCモード時)に、リップルが多少高い(30mV程度)。

<改善>
最大電流を制限する10回転型ヘリカルポテンショメータ のダイヤルを専用のストッパー付バーニヤダイアルに変えた。10回転で5A、つまり、1回転で500mAに対応するので、いちいち出力をショートさせなくても、大まかな最大制限電流をひと目でセットできるようになった。

電流制限ダイヤルを専用品に変えた。これで、1回転で約0.5Aに対応。

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