世界的に販売するため、コスト削減にしたいためなどの理由で、ACアダプター付属の商品が昔以上に大幅に増えている。

日本は商用電源が100Vに統一しているが、世界的にみると220Vや110Vが圧倒的に多く、しかもコンセントは形も足の本数も異なる。昔は電源変圧器(トランス)にタップをつけて、スイッチで切り替えることで各国の電圧に対応していた。しかしこれができたとしても、コンセントごとに電源ケーブルを用意しなければいけない。コスト競争の今日ではこんなことをやってられない。だから、ACアダプターが大繁盛になったわけだ。ACアダプターは中国製だと数十円のコストしかかからず、日本製電源ケーブルよりも安い。

さて、ACアダプターはたくさん出回っているが、ラジオや測定器に使えるACアダプターは案外少ない。ひとつめの原因はACアダプターはスイッチング方式が主流になったこと、もうひとつの原因は従来のリニア方式であっても安定化回路が入っていないものがほとんど。

スイッチング方式のACアダプターは省エネ、軽量小型という点では革新的だが、出力にノイズが多く含まれ、ラジオや測定器には向かない。

安定化回路が多くのスイッチン電源に取り入れられているが、リニア電源には放熱の問題や安全・コストの考慮から省いたものがほとんど。安定化回路の入っていないACアダプターは負荷のない場合に出力電圧が定格電圧よりも数割高く、機器に悪影響を与えない保証はない。

ということで、本記事ではリニア方式のACアダプターを改造して、安定化回路を取り入れてみる。

ところが、コスト削減のためか、ユーザが開けられるACアダプターはほとんど見かけなくなった。運がよく、手元にネジ止めのACアダプターがあった。

定格は9V、800mA
ネジ止めのACアダプター
安定化回路はない

ACアダプターは出力が定格9V、800mAとなっているが、無負荷時の出力電圧は実測では約12V。中をみると、全波整流後に1000uFのコンデンサという平滑回路のみの回路で、安定化回路は入っていない。

そこで、9Vの出力になるような安定化回路を組み込みたいが、3端子 レギュレータ にはドロップアウト電圧として数V(2~3V)が必要で、このACアダプターで9Vの安定化出力に改造することは簡単ではない。

解決策として、①電源トランスを改造、②整流ダイオードを取り替える、③ドロップアウト電圧の少ない3端子 レギュレータ を採用する、の組み合わせになる。

①電源トランスの改造
3端子 レギュレータ の入力電圧、つまり、電源トランスの2次側電圧を2~3V高くすればいいわけだが、そうするために、2次側の巻線を巻き増すことが必要で、素人には無理だろうし、大掛かりの作業が必要になる。真空管アンプをつくるひとは趣味のため、コストを無視して自力でやっているひとはいるようだが、ACアダプターの電源トランスを改造することはあまり聞かない。ということで、①の解決策はほとんどのひとにとって意味のない選択肢。それよりも、同じサイズの電源トランスに取り替えることが現実的かもしれない。

②整流ダイオードの取り替え
いわゆる、電圧降下の少ないショットキーダイオード等に取り替えることだが、今回のACアダプターでは全波整流のため、取り替えたとしてもたかだか0点数Vの改善にしかならず、効果が薄い。ブリッジ整流であれば、最善のケースでは1V近くを確保できるかもしれない。

③ドロップアウト電圧の少ない3端子 レギュレータ の採用
本命は①だが、ふつうのひとには無理ということで、この③がもっとも効果のある解決策になるだろう。ふつうの3端子 レギュレータ が動作するのに、入出力電圧の差は最低2~3Vが必要。しかし、低ドロップアウト電圧の3端子 レギュレータ (業界用語ではLDO レギュレータ という)は0.6V以下でOK。今回のACアダプターのケースでは9Vの出力電圧を確保するのは難しいとしても、8Vの出力電圧なら、0.6V以上なので理論上可能なわけだ。

以上の分析から、今回はLDO レギュレータ を使うことにした。

手元にあったLDO レギュレータ (出力電圧8V)

幸い、手元の備品を探したら、出力8VのLDO レギュレータ が見つかった。すでに生産中止になったかもしれないが、LM2930T8.0 という型番。出力電流150mA以内なら、0.6Vのドロップアウト電圧がスペック上保証されている。

8Vの出力電圧でも、9Vとしてほとんどの用途では通用する。リニア方式の非安定化ACアダプターは電圧が数割も上下するので、8Vの出力電圧では動かないことは考えにくい。安定化スイッチング電源でも1Vの差が許容範囲のギリギリところだと思われる。

超小型放熱アルミ板につけて、出力にさらに電解コンデンサを付け加えて改造が完了。

3端子 レギュレータ と電解コンデンサを付け加える

では、改造が完了したACアダプターを実測してみた。以下は証拠写真。

無負荷時の出力電圧。
無負荷時のリップル電圧は0.6mV
出力電流が0.3A時の出力電圧
出力電流が0.3A時の出力リップル電圧

純抵抗を出力につけて、実測したデータは以下の表のとおり。

出力電流と出力電圧との関係

出力電流が170mAまでなら、出力電圧が約7.8V以上にキープしているが、310mAにすると、明らかに出力電圧が低下してしまった。ドロップアウト電圧のスペック外になったのがその理由だろう。最大出力電流が300mAまで保証してくれるLDO レギュレータ (ネットで調べたら、後継デバイス LM2937ET-8.0 は500mAまでのドロップアウト電圧を0.5Vにしてくれるらしい)に取り替えるのは改善策だが、ラジオや測定器の電源として使うので、200mAでも十分。

つまり、結論として、定格8V/0.2Aとして、改造済ACアダプターを使うといい。

最初から、6V/500mAの安定化リニアACアダプターへの改造を目標にすればまったく苦労がなかったかもしれない。逆に、9V出力の安定化ACアダプターに改造するなら、12Vの非安定化ACアダプターを探すほうが無難。難題はケースの開けられるものが見つかること。

最後に、非安定化リニア方式ACアダプターと、非安定化スイッチング方式ACアダプターをひとつずつ取り出し、それぞれの特徴を比較しておく。

非安定化リニア方式ACアダプター(定格15V 800mA)

出力定格15V 800mAとなる非安定化リニア方式ACアダプター。スイッチング方式のACアダプターに比べて重くて大きいのが特徴。無負荷時と純抵抗を出力につけたときに実測した値は以下のとおり。定格電圧15Vに比べて、無負荷(つまり、出力開放)時の出力電圧は20Vに近く、3割増し。出力電流が大きくなってくると、出力電圧が低下し、800mAでは、おそらく15Vになっているだろう(800mAちょうどの抵抗は用意できなくて、あくまでも推測)。ただ、平滑コンデンサの容量不足か、出力電圧にリップル成分は高すぎる。ケースを開けることはできず、中身を調べることはできなかったが。

特徴としては出力電圧の変動、比較的大電流。平滑コンデンサの容量が小さいとリップル電圧は高い。
スイッチング方式のACアダプター(定格12V 1A)

定格出力が12V 1Aとなる非安定化スイッチング方式ACアダプター。軽くて小さいのが特徴。非安定化でも、無負荷時の出力は1割増し、リニア方式に比べて出力電圧の変動は小さい。しかし、出力電圧に含まれるリップル電圧は高く、ラジオや測定器の電源としては厳しいと言わざるを得ない。

大電流だが、リップル電圧も高め

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