アメリカ製ということで、中をみたくて入手した。金属製ケースが大きくて重く、立てて使うのに適している。内部の刻印から、1972年製と推測した。
Sencore社製のテスタは日本ではほとんど知られていない。真空管テスタならそういう商品をネット上見かけたりする。入手したFE20は Simpsonや、Triplett に比べて質が大きく落ちていることから、市場の評価はそれほど間違っていないと感じる。
スイッチの接触不良をなくすためか、前所有者が吹きつけた液体が内部のいたるところに残っている。ビスもなめられているし、ジャンクと言っても過言ではなかろう。
<整備>
時間をかけてじっくり整備するしかないが、まずはメータの調整から。固定ビス4本を外すと、メータは簡単に下ろすことができた。実測したら、内部抵抗が250.7Ω、感度が207uAとなっていて、スペックである200uA/225Ωに近い。
つぎは入力部ATT段の点検。値の怪しい抵抗がいくつかあったが、取り敢えずはそのまま。
最後はアンプ部の点検。サービスマニュアルにしたがって、FETとトランジスタ各端子の電圧を測ってみた。大きな違いは見当たらず、アンプ部は問題ないと判断。
使われたのは、JFET 2N5457 x2、NPN 2N5172 x1、PNP 2N4248 x2の5つ。
<調整>
ひと通り内部を調べたところで、サービスマニュアルに沿って以下の順序で調整した。
① DCバランスの調整
ファンクションSWを「DCV+」に、レンジSWを「1kV」にセットし、フロントパネルにあるゼロ調整ボリュームを時計方向いっぱいに回した状態で、メータの針が0~1DCV用目盛の0.7に指すよう、基板にあるDCバランス(DC Balance)調整用半固定抵抗を回す。
② ゼロ調整
ゼロ調整ボリュームを中央位置(最小が8時、最大が4時とすれば、中央が12時という位置)にセットし、メータの針がちょうど目盛の中央(センターゼロ)にくるように、基板にあるゼロ調整(Zero Range Adj)用半固定抵抗を回す。
③ DC電圧の校正
ファンクションSWを「DCV+」に、レンジSWを「0.1V」にセットした状態で、入力をショートして、メータの針がゼロに指すように、フロントパネルにあるゼロ調整ボリュームを調整する。終わったら、0.1Vの基準DC電圧を入力に与え、メータの針がフルスケールに指すように、基板にあるDC CAL用半固定抵抗を回す。
④ AC電圧の校正
ファンクションSWを「ACV」に、レンジSWを「0.1V」にセットした状態で、入力をショートして、メータの針がゼロに指すように、フロントパネ ルにあるゼロ調整ボリュームを調整する。終わったら、周波数400Hzの0.1Vrms基準AC電圧を入力に与え、メータの針がフルスケールに指すように、基板にあるAC CAL用半固定抵抗を回す。
これで、調整作業が終了。なお、抵抗レンジについては校正箇所がなく、誤差が出てきたらパーツを交換するしかない。
<再整備>
しかし、抵抗の Rx100 と、Rx1K レンジでは、誤差が20%を超えていた。さらによく調べたら、コンデンサC9(0.071uF/33V)がショートしていたことが発覚。容量値が一般的ではなく、手持ちのコンデンサ2本 0.068uF//2200pF を並列接続して代用した。
やっと使える状態になったが、プローブの修復はまだ問題として残っている。
<参考資料>
サービスマニュアル sencore_fe-20_hi-lo_fet_multimeter.pdf