データ収集できる計測器の物色対象はデジタルマルチメータ(DMM)から。直流・交流電圧、直流・交流電流、直流抵抗を測るにはもっとも便利な計測器だ。

手持ちのDMMは調べたら数台あり、最も高価なのはFLUKE 87V。Fluke 87Vはプロたちの間で最も信頼されるブランドのひとつだし、精度が高く、ふつうの使い方には不満はないだろう。しかし致命の欠点はデータ収集ができないこと。2台目はSanwa 500a。データ収集ができることとなっているが、光リンク接続ケーブルが発売中止になっている。その他の数台もデータ収集を考慮していない。

ということで、DMMを前後3台新調した。Bluetooth接続可能な OWON B35、光リンク接続ケーブルが買えるSanwa PC20、そして本記事で紹介するPM8236。

ケーブルと合わせると売値15000円となるSanwa PC20は試用した結果、3台のうち最もダメなDMMと結論づけた。よくない精度、光リンク接続ケーブルをつけた後のDMMのバランスの悪さ等がその理由だ。

OWON B35は合格レベル。売値が5000円強、パフォーマンスがよい。フリーソフトTs Digital Multi Meter Viewer(ただし、PCとのBluetoothに関するペアリングが必要。またその後、Win10のBluetooth デバイスの管理画面において、「…SPP Dev…」と表示されているポート番号を選ぶ。)を利用すれば、Bluetooth経由で計測データはPCで収集される。

Peak Meter PM8236
USB min端子が上部にある。外部電源用ジャックは自分で追加したもの。

最も素晴らしく感じたのは Peak Meter PM8236 という中国メーカー製DMM。売値はAmazonで4000円強と3台のうちでは最も安い。Ts Digital Multi Meter Viewer(ただし、DMMの機種としては HYELEC MS8236を選ぶ。)も利用できるが、PC用ソフトは付属CDか、ネットからゲットする。6000カウント、バーグラフ付き、自動レンジ切替。精度が高く、TRUE RMS、周波数(10 MHzまで)・温度(1000度まで)・コンデンサ容量・Hfe等の計測も可能。使用電池は単3四本。とくにUSBケーブルはDMMの上の側面に差し込む形で利用し、AgilentやSanwaの設計理念と異なる。

AgilentやSanwaはケーブルがDMMの底の面に差し込むので、スペースを稼ぐために、スタンドを立てて使うことが強要される。だが、それによってバランスが悪く、基板の上など平らでないところに置くと傾いてしまう。どう考えても、上か横の側面に刺すことが自然であり当然だろう。Agilentといえども、そういう反人間的な設計には「Bad」を下して反省してもらいたい。そうなってしまった理由は恐らく、データ収集はあくまでもおまけで、計測値を赤外線LEDで外部に知らせるには、基板上の空きスペースはそこしかなかったのかもしれない。対して、PM8236は中国のような新興企業が参入するために投下した機種であり、従来のDMMの問題点を徹底的に洗い出してより低コスト、より多機能に設計した成果だと推測する。

以下の画面はメーカーが提供したソフト、およびフリーソフトTs Digital Multi Meter Viewerによりデータ収集を行った際のもの。標準抵抗40.000 kΩに対して、-0.075%の誤差を示している。ちなみに、この標準抵抗をFluke 87Vで計測するとちょうど40.00との表示になる。どちらのソフトもデータを収集するのみで、DMMのレンジを変えたり、モードを変えたりすることはできない。

メーカー提供ソフトの画面。USB接続。
メーカー提供ソフトの実行画面。USB接続。
フリーソフトTs Digital Multi Meter Viewerの画面。USB接続。
フリーソフトTs Digital Multi Meter Viewerの画面。USB接続。

余談になるが、PM8236はオープンハードウェアのようで、同じ設計のものが数多くのブランド名で発売されている。どれが本家本物かはわからない。それはPM8236に限った話ではない、格安のスイッチング電源やDDS信号発生器等、多くの商品は中国初ということはなんとなくわかるが、本家本物はわからない。

なお、データ収集では数日、数週間の計測になることもあるので、外部電源の利用や電源の自動OFFは必須条件のひとつだと考える。Sanwa PC20はその点、外部ACアダプター(DCではなくAC7.5Vを出力するという変わったもの)が用意されていることは評価する。

ケースに穴をあけ、ジャックを差し込み、接着剤で固定。
配線は電池室の接線から

PM8236は外部電源が利用できないので、早速改造してみた。ガラガラの内部から、ケースの側面に穴をあけ、ACアダプター用標準ジャック(内径2.5 mm、外形5.5 mm)を取り付けた。対応するACアダプターの出力電圧は4.5~6V。よくある5V USB電源も問題なく使える。

そしてテスタリードのガードリングを削り取った。人命安全のためにわざとそう設計したものだが、邪魔でしょうがない。

1台のDMMでは1箇所の電圧か電流しか計測できないので、電圧と電流を同時に計測したいなら、その数分のDMMを用意するのは問題点。データロガーというものは多チャンネルが一般的で便利だが、まだまだ高い。

最後に、証拠写真をいちいち貼ることはしないが、各DMMの精度の関するテスト結果を載せる。Flukeについては文句のいいようがない。Sanwaは高額機種では精度がいいが、PC20のようなコストが命の低価格機種(それでもPM8236二台分の売値)では新品というのに、ちゃんとした調整が出荷時になされていないと思われる。OWONも低価格ということで多くの期待は禁物。PM8236は低価格にもかかわらず一部Flukeに匹敵するほどの精度を見せている。噂ではその校正はソフトで自動化されているらしい。安くても精度といい、TRUE RMSやUSB出力の搭載といい、素晴らしい。無論、PM8236に欠点はないわけではない。ロータリスイッチはしっかりしているが音が大きすぎること、単3電池はサイズによっては入らないこと、AC電圧の測定は周波数によっては表示が安定しないこと等がこれまで自分が感じた問題点。

<Peak Meter PM8236用資料やソフト>
フリーソフト Ts Digital Multi Meter Viewer Ver 9.2.0または本サイト
メーカー提供ソフト https://pan.baidu.com/s/1wkAWup7NszPKWB9-rmmoYQまたは本サイト
取説 中国語または本サイト

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