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絶滅して当然と思われていた真空管が、東欧や中国製品の輸入が増えていることからも分かるように、オーディオ自作派に根強い人気があり、真空管の魅力を語るひとが多い。その魅力はなんだろう。

①真空管の特性カーブが二次関数で、奇数倍の周波数成分があまり多くない事実がある。そのかわりに、「2次高調波」と呼ばれる歪は多く発生する。2次高調波は原音の2倍の周波数で、楽器の音にも豊富に含まれ、音に深みやツヤを与えるといわれている。2次高調波による歪が2%前後がベストという調査報告があって、人間にとって、歪が適度あったほうがいいというわけだ。その辺が、現代オーディオ理論とは大きくかけ離れていて、原音に近いことがオーディオ理論的に「音質がいい」根拠にしているから。
 つまり、歪を残すことで、却って音をよくしたというマジックが真空管に存在する。

②真空管アンプは出力インピーダンスが高いことから、ほとんどがトランス経由でスピーカをドライブしている。その出力(アウトプット)トランスの存在によって、結果的に音質向上に繋いだとの指摘は昔からよくあった。
 トランス出力なので、DCに近い低い周波数も10kHzを超える高い周波数もカットされて、人間の耳に敏感な周波数帯だけが残る、いわゆるバンドパスフィルタ(BPF)の役割を果たしている。一方、半導体アンプ、とりわけDCアンプと称するものはDCから100kHzまで、フラットに出力することを最高の目標にしているので、真空管アンプとの方向性が全然違う。
 つまり、フラットな増幅器でないことが真空管の魅力を増したことだ。

③見た目がきれい、しかも高価であることが魅力をもたらす。
 音と関係ないと思われがちだが、見た目による判断は、じつは人間の判断力を大きく左右する例は枚挙に暇がない。真空管が灯り、優しく光り、丸いガラス管に包まれる。それをみて愛しく感じるひとが大勢いるだろう。対して、現代の半導体や周辺部品が益々小型化され、粒状になり、見るに堪えない。いくら性能がいいと言われても、自分も含めて、信用に値しないと考える。
 高価であることも魅力のひとつ。生産量が少ないので、真空管自体も、電源トランスも、出力トランスも、どれをとっても高い。そのことが却って大事にされる理由になっている。

④温度特性がよい。高出力パワーのアンプも無線機もいまだに真空管に頼るところが多い。半導体だと馬鹿でかい放熱器を背中にのせないとならず、数百Wパワーで頭打ちになってしまう。

⑤入手性。銘球といわれるものは、高価だがいまでも手に入る。対して、銘石といわれるものは、まだ20~30年しか経っていないのに、入手性が球以下になってしまった。作りたくても、作れないという現実問題が付き纏う。

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