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上海滞在中、第四電表工場の自社販売店から、MF-10型と一緒に、このMF500型も新品で購入していた。売値は約120元(約1500日本円相当)。埃だらけのショーウィンドウには、そのほかに、新品のMF-14型や、MF-35型、MF500A型、MF500B型等も置いてあった。ふたりだけの店員さんは、ひとりが奥の会計ルームにいて、ひとりが入口のデスクでなにかをずっと書いていた。彼らは第四電表工場職員のようで、ひとりしかいない客の私に声をかけることなく、商品を売る気はなさそう。売れても売れなくても生活に直結しないからだろうか、どうせ買う客がいるはずがないからだろうか。商品の外観がよく、愛想が良ければ全機種を買っていたのに。

このMF500型は60~70年代当初、500型という名称だった。当時の売値は100元、いまとそれほど違わない。しかし、当時の中国人月給が50~100元、約1~2ヶ月分相当なので、いかに高価な商品かは想像できよう。個人所有はほとんど不可能。いま流通している(当時製造の)中古品は会社や大学、研究所の備品だったと言われている。

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上記は1973年当時の回路図。本機がほぼそのまま踏襲している。

500型はイギリスの名機 AVO meterを参考にしてデザインされて、ロータリスイッチがふたつある。当時の中国ではテスタのスタンダード機種のようで、感度が20kΩ/V、アメリカンスタンダード Simpson 260と同じところも理由のひとつだっただろう。

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理由はほかにもあろう。サイズが大きく、目盛が見やすい。いまになってはその存在感が一層目立つ。

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テスタにおいて、もっともコストの掛かるパーツはいうまでもなくそのメータだ。コスト削減には、より小さいメータにするのが効率的。携帯に便利だし、見かけ上の精度が上がり、初心者に歓迎される。しかし、測定器としてのテスタとはなにか、その問いを追いかけると、メータのサイズが大きな問題になろう。日本に、JIS規格でいうAAクラスのテスタがほとんどないのはメータのサイズがまず合格しないからだと個人的に考えている。かといって、何万円もかけて大型テスタを作っても売れるはずはなかろう。

そういうことで、アメリカは小型化を拒否し、テスタの大量生産を事実上ストップした。日本は小型化の道を選んだ。中国は小型化の代わりに必死のコスト削減に取り組んできた。

このMF500型は見た目がひどい。ロータリスイッチのダイアルが曲がっているし、塗装にムラや小さな気泡が随所にみられている。店員さんに告げても、安いからしょうがないとのあっけない返事だった。

中身はもっとショッキング的。ロータリスイッチはセラミックもどきのプラスチック。抵抗器は当然のように、W数の小さい小型ものになっている。手作業だからかもしれないが、抵抗器やコンデンサの半田付けが雑すぎる。さらに、リード線が細すぎて、数A電流には耐えられない、などなど。

ただ、先日、ゴミと思って放置していた本機を測定したら、案外精度がよいことに驚いた。それで、120元の販売価格を考えれば、しょうがないなぁ、と思うようになった。

そうなると、早速改善に取り組んだ。配線が汚いので、電池室に配置された保護ヒューズを外した。誤操作は神経質の自分がやらないから。細いリード線をできる限り、太いものに置き換えた。10uFケミコンを積層セラミックコンデンサに取り替え、2500Vレンジ用10MΩ抵抗器(抵抗器3つを直列接続してコスト削減を図ったようだ)や500mAレンジ用1.5Ω抵抗器(コスト削減のために、3Ω抵抗器2つが並列接続していた)を取り替えた。

以下の写真は改善後のもの、見た目が変わったことを断っておく。

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ついでに、1965年製品の内部写真を最後に載せておく。文化大革命時代が良かったと言われても反論できないが、人件費が違うことが両者を分けた原因だろう。月給が当時の100倍以上になっている。本機種が千元(約13000日本円)でも売れるなら、数十年前の品質に戻せるかもしれないが、そのためにブランドの確立が先決。

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数十年経っても、アナログテスタに関しては、技術的進歩はほとんどないことは今回のMF500型でもよくわかった。それどころか、昔のほうが良かったとはどういうことだろう。日本の横河 YEW 3201は1969年から、保護ヒューズの追加以外にほとんど変わってないし、アメリカのSimpson 260は70~80年代製が最も良かった事実と照らしあわせて考えてみたい。

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