書かなきゃいけないカメラのの一つ、ライカ。よく知っている方が多いので、自分の感じたり思ったことを中心に書いてみる。

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—- Leitz Leica IIIf —-
ライツ社 ライカ IIIf

ひとつの商品に徹底して拘り、コツコツと長年月をかけて少しずつ進化させた稀なモデルケース。1925年登場のA型から1956発売のIIIgまで、30数年をかけて、固定式のレンズから交換式、レンズマウントの標準化、距離計の搭載、スロースピードの搭載、1/1000秒スピードの搭載、ボディのダイカスト化、フラッシュの追加、セルフタイマの搭載、ファインダーの大型化等、すこしずつ改良して進化させてきた。レンズの生産もしていたが、それはほとんどライカ用のものだった。

しかし、使える技術があれば、なんでも組込むということはしなかった。一つは露出計。ライバルのツァイス・イコン社は2眼レフコンタフレックスや、コンタックスIII型に組込みが成功したのに対し、ライカは最後のIIIgまで露出計は内蔵しなかった。バルナックカメラ専用外付け露出計のほとんどはいまになってセレンの劣化で使えなくなり、寿命的なことが原因のひとつだったかもしれないが、デザイン的、あるいは格納スペースからして搭載しなかったのが真実に近いだろう。機能よりもデザイン、スタイル、そういったライカたるものに徹底的に意識し、優先した結果のように感じる。露出計の不搭載は、今日となって結果的に良かったともいえる。コンタックスIIIよりもII型のほうが人気あるのは、やはり電気的なものは本質的に、時代の壁は超えられない、ということなんだろう。

同じことがフィルムの装填にも当てはまる。光線漏れの対策として考案された、底から入れる方式だが、最後まで変更することはなかった。初めて使うひとは間違いなく失敗することを考えると、そういったデザインや使い方の一貫性を優先させる姿勢がよく判るだろう。

さて、購入時の注意点をいくつか書いてみる。まずシャッター布幕は必ず劣化が起きること。布だからしかたがないかもしれないが、数十年も経てば、固くなったり、ひび割れが入ったり、穴が開いたり、よく見られる。全く使わなくても同じようになってしまう。しかも、ほかのカメラと違って、フィルム室から明かりに透かして確認することができない。実写しないと気づかないことがよくある。幸い、布だから、いつ経っても技術さえあれば、交換可能なのだ。だから、ライカはかならずオーバーホールしないと使えなくなるカメラのひとつ。数年とか、10数年とか、あるいはもっと長い年数の周期になるかもしれないが。

2つ目、シャッター、とくにスローシャッターではうまく機能しないことが結構ある。いわゆる粘りという現象。シャッターが途中で止まり、完全に閉じなかったり、シャッタースピードが大幅遅くなったり。カメラの持ち方(向き)によってそういう現象が起きたりするので、たちが悪い。また、レリーズボタンから指をすばやく離すと問題は起きないが、そのまま押し続けると症状が起きたり。精密さのゆえに、少しの汚れやゴミ、フィルムの細かな破片が混入すると正常に動作しなくなるかもしれない。また、最高速の1/1000秒ではシャッターが全開しないこともよくみられる。テンションの調整で直ることもあるが、多くの場合ほかのスピードでもなんらかの問題が伴う。こういうシャッター関係の症状は修理すれば、ほとんど直るが、レンズシャッターカメラ以上に故障しやすいのも事実だろう。

3つ目、距離計の鮮明度が落ちている個体が少なくない。ハーフミラーの劣化によるものだが、交換すれば必ず直る。ハーフミラーそのものの販売 も行われている。安くない価格だが、それで直せるなら文句はいえない。コンタックスだと、プリズム内、つまりガラス同士の接着面にハーフミラーコーティングがあり、それが劣化して薄くなると、そう簡単に修理できない。そういうところも、ライカの長寿命の原因なのかもしれない。壊れないのではなく、簡単に直せるところ。

4つ目。貼り革というか、樹脂でできたグッタペルカが、剥離しやすいこと。動物の皮ではないので、欠けやすく、割れやすい。いま風の革で貼り直せば、キレイになるが、オリジナルのままキープしたければ、十分気を使うことが必要。

コストを考えずに、精度高くしあげられたカメラなので、修理サポートさえしっかりしていれば、長期間機能してくれるだろう。人間は100年生きるのが大変難しいが、100才以上のライカ、あと30~40年も経てば、多く現われてくるだろう。

では、写真のライカ IIIf について書こう。IIIfにはセルフタイマ付きモデルや、フラッシュガイドナンバーの印字が赤色のモデル(レッドダイアルとよぶ)と黒色のモデル(ブラックダイアル)との違いがあるが、本個体は一番多くみられる、ブラックダイアルモデルだ。

<スペック>
型 名 ライツ社製 ライカ IIIf ブラックダイアル
     Leitz Leica IIIf Black Dial。
生産国 西ドイツ (1951年)。
使用フィルム 35mm。
フォーカルプレーン横走りシャッター スピード B・T・1~1/1000秒。シンクロ付。布シャッター幕。
連動型距離計付き。最短連動距離1m。ビューファインダーとレンジファインダーは別々、視度調整可。センター丸型2重像イメージ。
露出計なし。
フィルムカウンターは手で回してリセットするタイプ。
レンズマウント Lマウント(海外では SM (Screw Mount) マウントという)。

デザインは良くも悪くもライカそのもの、とても変わったスタイル。パッと見ただけで、ライカと認識できる。巻上げノブ、巻戻しノブ、シャッタースピードダイアル、スローダイアル、軍艦部、どれをとっても、ライカ以外のカメラとは違う。ただ、ライカを真似たライカコピーはデザイン的にあまり違わないことはいうまでもないだろう。コピーなんだから。

独特な使い方の多いカメラ。慣れないと使いやすいとはとても言えない。フィルムの装填は最初の大難関。レンズを外し、シャッターをT(タイム)にし、シャッター幕を全開させて、レンズ側から覗きながら確認するぐらいの慎重さが必要。また当然、フィルムを入れる前に、テレフォンカードや名刺等を差し込み、圧板を隠しておくことも必要だろう。何回も何回も練習を重ねること。

シャッタースピードのセットもユニーク。必ず巻上げてからセットすること。シャッタースピードダイアルが回転するので、巻上げておかないと正しい位置が判別できない。スピードダイアルを持ち上げ、回転させてセットする。1/1000秒のところだけは微妙に高い、故障ではなく、そういうつくり。また、スローシャッターを使うときは、シャッタースピードを1-30のところにセットしておかないといけない。

実際のスローシャッタースピードの調整は正面のスローダイアルで行う。30のところにロックがかかてるので、小さなロックレバーを指で押込み、ダイアルを回す。スローシャッターが使わないときは30の位置に戻すといいだろう。

X シンクロを使うとき、シャッタースピードダイアルの根元にあるレバーを20のところにあわせる。シャッタースピードはブラックダイアルの場合、1/30秒か1/15秒でないといけないので、あまり実用性がないかもしれない。

巻戻し解除レバーは巻上げノブの周りにある。Rのところに回すと、巻戻し可能になる。巻戻しノブを上に引っ張ってから回すと使いやすい。

視度調整レバーは巻戻しノブの根元にある。

距離計の横ズレは自分で調整できる。正面からみて、四角いビューファインダーの右隣にビスカバーがあり、それを外し、細めのドライバを差し込んで回すと調整できる。

距離計の縦ズレも自分で調整できるかもしれない。正面からみて、左側(中央)の丸いレンジファインダーの丸いリングを外し、さらにその中のガラス入りリングを回すと調整できる。ただ、丸いリングが固く締められたケースもあり、専用のツールを使わないと取り外せないかもしれないので、無理は禁物。

ついでに紹介しておく。ライカのシリアルナンバーは ここ にリストアップされている。本物や、改造モデルの確認、製造年数等を知るのに使える。シリアルナンバーの整理されたカメラは恐らくライカぐらいしかない。人々に愛されてきた証し。

高嶺の花のライカはいまでは数万円程度で簡単に買えてしまう。ライカは高くでなければいけないのに、いまの状況では本当に喜んでいいかどうか、よく判らない。安いものに高いお金を出して修理するひとがいなければ、修理職人がいなくなり、ライカは絶滅するしかないかもしれない。オーバーホールしないと運命的に機能しなくなるカメラ、それを忘れないでほしい。

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