工業芸術品と絶賛される、米国工業デザインの傑作。

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—- Kodak Bantam Special —-
コダック社 バンタム・スペシャル

艶やかな漆黒のエナメルを走る白銀のストライプ。 その流線形を構成する柔らかな曲線。 遥か68年前の1936年に米国イーストマン・コダック社が世に送り出し米国工業デザインの傑作。

デザインは素晴らしい。1936年といえば、ライカ IIIa やコンタックス II が発売されていた年。ところが、それらと比較するとすぐに本機のモダン性に気づくだろう。何十年もの昔どころか、21世紀の今日でもまだ通用するデザインはさすが。超未来型のカメラといえよう。しかも珍しいことに、貼り革は全く使われていない。当時のカメラといかにかけ離れているかを物語っている。

サイズも小さい。蛇腹なので、前扉をしまうと、ポケットに入れられる。ライカに比べて軍艦部は若干高くなっているが、高性能なファインダーが内蔵されるいるためだろう。横幅は逆に短い、複雑なフォーカルプレンシャッターではないからだろう。

搭載しているエクターレンズは評判が高い。どれくらいのひとが実写したかは判らないが、エクターのなかでも、本機ととカートン用エクターはとくに評価されていて、一種の神格が加えられている。

スーパー・イコンタ風の距離計は見やすい。イコンタの回転式レンズと違って、ピント合わせリングを回すと、距離計レンズの首が左右に動く。イメージは上下分割式、プリズムによって光がそれぞれ上下に導かれていて、ハーフミラーは使わない。だから劣化の心配はほとんどなく、長寿命なのだ。イメージは望遠レンズのように拡大されていて、精度が高い。

本カメラの難点はその使用するフィルム。専用の828フィルムはだいぶ昔に生産中止。自分で127フィルムをカットして使うか、特別にカットしてもらう小口注文サービスを利用するしかない。ただ、ネット上にふつうの135フィルムを工夫して使う方法も紹介されている。

もうひとつ、蛇腹が光線漏れの個体が結構みられる。約70年も昔の製造なので、仕方がないことかもしれないが、蛇腹部分の光線漏れをしっかりチェックしよう。ただ、フィルムが入手問題なので、実写は難しいかもしれない。

スローシャッターでは粘りが起きている個体が多い。ただ、レンズの前群を手で回して外し、さらにシャッターカバーを取り外せば、手軽にメンテナンスができるから、気にすることはあまりないだろう。レンズ交換ができない分、ライカに比べてシャッター関係は整備しやすく、壊れにくい。

<スペック>
型 名 コダック社製 バンタム・スペシャル
     Kodak Bantam Special
生産国 アメリカ(1936年)
使用フィルム 828
レンズ Kodak Anastigmat EKTAR 45mm F2、コーティングなし。
シャッター Compur-Rapid、T・B・1~1/500秒。T・Bはシャッターチャージしないで開くタイプ。シンクロ、セルフタイマなし。
連動型距離計付き。上下分割像だが、イメージが拡大されていて、精度が高く、見やすい。ビューファインダーとレンジファインダー(距離計)は別々となっている(2眼式)。ビューファインダーにフレーム等、変わった表示はない。フィート距離目盛、最短撮影距離 3ft。
露出計なし。
1枚1枚のフィルム出しは、裏蓋の緑窓(赤窓ではない!)を目視して確認するタイプ。
シャッターはチャージレバーでセットし、レリーズレバーで切るタイプ。2重撮影防止機構はない。

では、使い方を見ていこう。

<使い方>
前扉の脇にある小さなレバーを押すと、前扉が開く。前扉の下部分にツマミがあり、それを引っ張り出すと足が出てきて、カメラを縦にうまく立たせることができる。

つぎにフィルムを入れる。左肩、巻上げノブの隣にあるツマミを上に引っ張ると裏蓋が開く。フィルムを右側にいれ、先端を左の空スプールに差し込む。裏蓋を静かに閉める。裏蓋の緑窓からフィルムの数字を確認しつつ、裏蓋の左上部にあるボタンを押しながら巻上げる。慣れないと巻上げ操作は難しいかもしれないが、カメラをお腹に当てて、左手の親指でボタンを押し、右手で巻上げるとやりやすい。

露出計は内蔵してないので、外付露出計か勘で露出を決める。レンズ周りのリングでシャッタースピード調整、レンズ下のレバーで絞り調整を行う。Tと B 以外のシャッタースピードではシャッターチャージレバーをセットする。なお、順番としては必ず、スピード調整の後にシャッターチャージ。逆だとシャッターに悪影響を与えることもあるのでご注意を。

レンズ周りのレバーでピント合わせを行う。距離計は拡大イメージなので、とても見やすい。人差し指か中指でレリーズレバーを押し、シャッターを切る。

そのピント合わせレバーを最後まで押し込むと、ロックが解除され、前扉をしまうことができる。
</使い方>

フィルムの入手が困難かもしれないが、スーパー・イコンタ風の距離計、最高級エクターレンズ、デザインやエナメル塗装の素晴らしさ等、持つだけでも楽しい。アメリカ製カメラは日本ではあまり評価されていないが、このスペシャルモデル等は特別、2次大戦に勝てたアメリカのもつ圧倒的なパワーを雄弁に物語ってくれる逸品。

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