検索キーワード: 総和、無限和、微積分、マクローリン展開

いきなりだが、つぎの式は収束するか、収束値はなにか。詳しいひとはすぐに答えられるが、規則性について考えてみたい。数学者が散々研究してきたので、なにか見つけることはありえないが、趣味ということで。

【問題】以下の式の値を求めよ。

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【雑談】ちなみに、各項の符号をすべてプラスにしたもの、つまり、奇数の逆数の和は無限大に発散することが知られている。

140311-11.pngそれだけでなく、奇数の中でもごく一部しか存在しない素数、その逆数の和も無限大になる。

140311-12.pngしかし、1, 4, 9, 16, 25, 36 等の平方数の逆数の和は収束する。オイラーが π 2/6 になることを証明し、世間を驚かせた。驚いた理由はふたつ、① 円周率が式の右辺に突然出てきたこと、② 平方数の数が素数よりも少ないこと。

140311-13.pngということで、平方数よりも間隔の大きい数列(3乗、4乗、2.1乗、等など)はすべて収束することが言える。

【解答】さて、問題に戻る。分母の 1 は x = 1 という代入によってできたと考えてみよう(真相は答えを知っているから、こう言っただけだけど)。さらに、分母の 3, 5, 7, 9 を消したいので、x のべき乗で考えてみようと。ここの飛躍に規則性というか、ルールみたいなものがあると、他の数列の和に応用できるかも。本問題を考える目的は実はここにある。

ということで、神様のお導きでつぎの式にしたとしよう。

140311-14.png等式の左辺右辺を微分して、さらに、右辺の等比数列の和を取ると次式になる。

140311-15.pngつまり、以下の微分方程式が得られ、簡単に解ける。なお、arctan はtan 関数の逆関数を表す。

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もとの式の左辺に代入して、x = 0 で積分定数を決めると、C = 0 となる。

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最終的に x = 1 にして、与式の値が得られることになる。

140311-19.pngよく知られている答えと同じ。また、arctan(x) のマクローリン展開は x = 1 を代入する前の式と同じ。

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そう簡単でないかもしれないが、微分したり積分したり、無限和の問題はなんとかして、解析学の力で解こうと考えているこの頃。

検索キーワード: 近似計算、近似値計算、マクローリン展開

携帯や電卓が普及したいま、近似計算は必要でなくなった。それでも、数学の試験問題として出題されることがあるし、近似計算の仕組みを理解することは重要だろう。「計算できるけど、計算しない」と「計算できない」とでは、天と地との開きがある。

【問題】以下を小数点以下5桁まで計算せよ。電卓等は使わない。

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近似値計算の方法はさまざまだが、よく使われるのはマクローリン展開(あるいは、テーラー展開)という手法。式の答えに近い値が分かった場合に、マクローリン展開を使えば、近似計算は多項式で行うことができ、その誤差をいくらでも小さくすることができる。本問題の場合、答えに近い値は1と想定できる。なぜなら、10/9 = 1.111111 の 10乗根 なので、1に近いはず。(余談だが、分数と有理数との関係をきちんと勉強していれば、分母 9 の長さは循環節を表していることがわかるだろう。小数点以下の 1 が永遠に続くのだ。)

上のべき乗に対するマクローリン展開はつぎの形になる。

140311-1.png少しでも楽に計算できるよう、右辺の第4項までを以下に整理する。違う式のようにみえるが、同じものだ。

140311-2.pngここでは、取りあえず、x = 1/9、a = 1/10 として式に代入して計算してみる。「取りあえず」という表現の意味は後ほど明らかになろう。

140311-3.png最後に、さり気なく 1.01059 と答えを書いたが、正しく計算できる自信はなく、電卓を使ったのだ。

出した答えは誤差がどれぐらいだろう。当然推測しないといけない。題意では小数点以下5桁と精度を要求しているので、上記の答えは本当に5桁の精度を確保したのか、調べることが必要。

誤差の推測には、マクローリン展開の第5項を使う。つまり、第4項までは計算に使ったので、本当の値(真値という)との誤差は第5項以下で決まるわけだ。第4項までだと、精度が足りなければ、さらに第5項、第6項を追加しないといけない。

それでは、第5項の値を見積もってみる。

140311-4.png途中、19を20にしたり、29を30にしたり、24を25にしたり、81を100にしたり、随分いい加減にやったが、見積もりなので、適当な計算でも問題ないはず。最後に -2.4 x 10-6 と出、つまり、小数点以下6桁目で 2 を引かないといけない。前4項の計算で十分精確だということがこれで明白。

ちなみに、電卓で計算した精確な値は 1.010591751。上記の計算結果 1.0105946 との差は -2.85 x 10-6 であり、見積もった誤差に確かに近い。

さて、本問題の解答はこれで終わったと思っても良さそうだが、やはり筆算だけで計算したい。ということで、式をもう一度考えたところ、妙案が出た。

140311-5.pngすなわち、分母分子を入れ替えると計算が随分楽になることに気づいた。x = -1/10、a = -1/10 を再び上の式に代入して計算し直す。

140311-6.pngステップバイステップで答えを出した。これが出題者の出題意図だと自己解釈した。問題の裏が分かると何となくスカスカした気分になる。数学は楽しい、お金を使わなくても遊べるところが最高。

なお、ふつうの用途では、マクローリン展開の第4項まで要求することはほとんどない。第2項までが 1+(1/9)x(1/10) = 1.01 で 百分の一の精度。こんな計算で良ければ、確かに電卓は要らない。

検索キーワード: 極限値、収束、収束性、総和、総乗、無限和、無限乗積、無限積

無限にロマンあり。人間や人生を狂わせることもある。式で表現されるととても美しく感じるものでもある。

無限和の場合、定積分という強力な武器を手にしたので、なんとか計算できることが多い。しかし、無限積(無限乗積ともいう)となると、お手上げのケースがほとんど。

【問題1】以下の式の収束性を示せ。

140310-10.png計算できるように問題が作られているので、うまく分解して、分子分母を約分していけば、簡単な形になる。つまり、n2-1 = (n -1) (n +1) をうまく利用するのだ。

140310-11.png左右隣りの分子分母を約分すると、下の項しか残らなくなり、収束する。

140310-12.pngちなみに、電卓で以下のように、先頭の9項だけ計算したら、0.55と出た。0.5に近づくことが実感できよう。

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【問題2】以下の式の極限値を求めよ。

140310-14.png無限小 1/n を無限個集めたら、無限小なのか、無限大なのか、それともゼロ以外の値に収束するのか。

総和の値を得るために、積分で計算してみるのはよくある手法。積分の着想は総和にあったから。以下のとおり、積分関数にうまく変身させた。

140310-15.png答えの ln2 = 0.69314。

以上の2問は都合よく解けたが、解くためにつくられて問題であって、無限積と無限和の問題はほとんど解けない。数学者が研究することがなくなっているというが、井の中の蛙大海を知らず。ただ、コンピュータを使えば、実用範囲では簡単に計算できるので、情報科学的に(精確には、アルゴリズム的に)は解ける問題といえよう。

検索用キーワード: 極限、階乗、Stirling公式

数学解析のなかで、極限値の計算はわりと簡単なものだが、難問がないわけではない。① 階乗が問題に入った場合に、Stirling 公式を知らないと困ることがある。② 無限積や無限和が入った場合、③ 積分関数や高階導微分関数が入った場合、など。

以下の問題は階乗に関するもの。Stirling 公式の出番。円周率 π 、ネイピア数 e がともに入っていて、それなりに美しい式だと思う。

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【問題】 以下の式の極限値を計算せよ。

140309-11.png【解答】分母は奇数だけの積だが、分子分母に偶数を追加して、階乗の形に整えてから、Stirling 公式を適用し、式を整理すれば終わり。

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なお、分子が奇数の積ではなく、ふつうの n 階乗なら、極限値は 1/e になる。

140310-1.pngあるいは、逆数の形にして、答えを e にする。

140310-2.png【注意】 本問題の分母 n をカッコ内に移すと、つぎの式になる。階乗がいかに無限大への発散スピードが速いか、本問題でもよくわかる。n 次根をかけてやっと定数になるから。

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一般的に、無限大に向かうスピードは以下の通り。無論、分母に来れば、ゼロに収束するスピードになる。

対数<べき乗<指数<階乗

検索用キーワード: 共役複素、複素共役、共役複素数、共役無理数、n乗、整数、有理数

勉強していて、感じたことをメモしていく。数式というものは、なかなかうまく検索できないので、上記のように、検索用キーワードを多く並べてごまかすことにした。

Googleはすごいといわれるけど、二項定理

140309.pngをどう検索すればいいんだろう。『ユークリッド原論』は式をひとつも使わず、言葉で式の意味を表現したのはきっと本質的な理由があったのだろう。

さて、ある数学のことを考えたら、つぎの計算が整数であることを証明する必要があった。

【問題】つぎの式が整数であることを証明せよ。

140309-1.pngただし、n は自然数(1以上の整数)、i は虚数記号。【問題終】

【雑談】140309-2.png上記のような、虚数部の記号がプラスかマイナスか、だけが異なる2つの複素数を共役複素数、または、複素共役という。共役複素数ペアのお陰で、虚数はわれわれ人間に普段観察されることはなかった。つまり、共役複素数によって、虚数の世界が何千年もうまく隠されてきた。

物を数える必要性から人間が整数を発見した。『ユークリッド原論』の表現を借りれば、「単位とは存在するもののおのおのがそれによって1とよばれるものであり、数とは単位からなる多である。」 また、物を皆に平等に分配することの必要性から、人間が分数(つまり、有理数)を発見した。その後、正方形の対角線の長さが分数では表わせないことから、人間が無理数を発見した。虚数は数学者ガウス個人の偉大さによって考案されたが、その後いろいろな物理現象を説明するには大変都合がいいことがわかり、いまは、一般的に、虚数が存在すると信じられるようになった。

信じることは存在か。存在とはなにか。そういうことを考えながら虚数を勉強すると、数学もとても楽しく思ってくるかも。

なお、数学者ガウスは計算狂であり、分解狂だった。計算自体が楽しくてしょうがなかった。言葉を覚えるまえに、計算ができたという神童だったし、円周率 π を何十桁まで計算したり、天文台長の時代に惑星の軌跡の計算を助けてくれる助手の推薦を断ったりしていた。また、分解のことをいうと、-1 を i の2乗に分けたり、素数を分解していたことが美談。素数 5 はガウスにとって決して素数でないかもしれない。5 = (1+2i) (1-2i) で、二つの虚数の積になっているから。【雑談終】

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高校までの数学なら、有名大学の入試問題は別にして、概ねできると思ったら、落とし穴があった。行列のケーリー・ハミルトン定理(Cayley-Hamilton theorem)は知らないのだ。

ケーリー・ハミルトン定理とは、正方行列 A に対し、つぎの式をいう。

140308.pngtr(A) は行列 A の trace といい、対角成分の総和を表す。det(A) は行列 A の行列式を表す。E は単位行列。

とくに2次行列に対するケーリー・ハミルトン定理の応用問題は試験によく出てくるので、覚えないといけない。

140308-1.png問題、以下の行列 A に対し、An を計算せよ。

140308-2.png答え、

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一般的に、上記のような2次行列に対応して、2次方程式(左辺は固有多項式ともいう)が

140308-4.png① 異なる実数解 x1, x2 をもつときに、行列 An 乗は

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で与えられる。

② 2次方程式が重解 x1 をもつときに、行列 An 乗は

140308-6.pngで与えられる。

③ 2次方程式が複素数解をもつときに、課題として出しておく。

木村俊一著 『連分数の不思議 — 無理数の発見から超越数まで』 (講談社、2012年)

不思議な本。啓蒙書かというと、難しいことにも触れている。著者は広島大学理学部数学科の教授らしい。この本を手にした理由は書名に「超越数」というキーワードがあったから。無理数はよくわかるが、その中に含まれる超越数は正体がなかなか現れない。たとえば、円周率π やネイピア数 e が超越数だが、π + e は超越数かどうかはまだわかっていない。

いくつか、気になったことをメモしておく。

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木田祐司著 『初等整数論』 (朝倉書店、2001年)

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著者は情報科学の視点から整数論を研究しているので、自分にとって分かりやすい。また、抽象的記号を並べるだけでなく、実例を沢山挙げているところがよい。解答付きの練習問題も面白い。数学者には物足りないかもしれないが、今の自分の実力ではこの辺の難易度がちょうどいい。

いくつかのことをメモしておく。

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吉田信夫著 『ガウスとオイラーの整数論』 (技術評論社、2011年)

本書は灘中学校(神戸市。関西で有名な進学校)の入試問題をピックアップして、以下の章立てで整数を論じているもの。
  ガウス記号と等差数列の和
  中国の剰余定理と合同式
  組み合わせといくつかの重要発想
  パスカルの三角形と二項定理
  倍数判定と倍数の配置
  約数とオイラーの関数
  余りの周期とフェルマーの小定理
  循環小数の徹底研究
  フェルマーの最終定理

中学校の入試問題だから簡単なわけではない。入試問題を一般化すれば、たちまち解けなくなる。つまり、一般解が少ないのは、整数問題の大きな特徴。

以下、問題をいくつかみていく。

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ディリクレ・デデキント著、酒井孝一訳 『整数論講義(原著: Dirichlet, Dedekind “Vorlesungen über Zahlentheorie” (1849))』 (共立出版、1970年)が手元に届いた。

昔は、教科書等、こういう上製本がよく見かけたが、日本の電化製品と同じように、コスト削減のために、いま出版されている本はしょぼい。

デデキントは勿論、デデキント切断で有名なあの数学者。本書の大部分は、歴史上最も偉大な数学者のひとり、カール・フリードリヒ・ガウスが勤めた、ドイツ・ゲッティンゲン大学でのディリクレ氏の講義をまとめたもの。言わば、ガウスの直系弟子にあたる高名な数学者の講義を、またその後輩である高名な数学者がまとめあげた名著。また、デデキント自身がガウスの指導のもと、数学分野での博士学位を取った。くどいほど丁寧な解説なので、専門外のひとにわかりやすい。

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