150224-1

複素数の世界では、x+i y の偏角は θ=arctan(y/x) で表現されるし、複素数同士の乗算による偏角は、それぞれの偏角同士の加算に対応する。

この性質を利用すれば、逆三角関数に関する多くの数学問題は簡単に解くことができる。


問題1.すべての実数 x について、-π/2 < arctan(x) < π/2 とするとき、次の値を求めなさい。

150424-2

<解答>
arctan(1) に対応する複素数は 1+i 、arctan(2) に対応する複素数は 1+2 i、arctan(3) に対応する複素数は 1+3 i であるので、乗算を行い、偏角を求めていく。

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複素数 -10 の偏角は π であり、それが与式の値となる。


問題2.次式

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が成り立つような正の整数 x, y の値を求めなさい。ただし、y = arctan(x), y = arccos(x) はそれぞれ、y = tan(x), y = cos(x) の逆関数の主値を示す。

<解答>
与式を複素数で表現すれば、次式が成り立つ。

150224-5

150224-6

対応する偏角間の関係式は以下になる。

150224-7

すなわち、

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問題3.次式を計算しなさい。

150224-9

<解答>
いわゆるマチンの公式というもので、円周率π の計算に使われていた。係数4が偏角の4倍を意味するので、複素数の4乗に相当する。減算は複素数の除算で表現する。

150224-a

最後の複素数は実数部と虚数部が等しいので、その偏角は π/4 となる。つまり、与式の値は π/4 である。


研究課題.複素数のべき乗数が高くなると、手計算は大変。以下の式は電卓やパソコンを使えば簡単な四則演算だけで証明できるはずだが。

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計算すべき複素数は以下の通り。実数部と虚数部が等しくなるか。

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数検にたまに出題される積分問題。円の面積等、原点との距離が変わらない図形の計算には極座標に変換したほうがよい。

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xy 座標のままで計算すると時間がかかるし、間違いやすい。そこで、 極座標に変えて計算する。

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もう一例。

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積分領域が半径1の円内。

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微分処理と違って、積分できない関数(あるいは、初等関数では表せない関数)はいくらでもある。しかし、そのうち、極座標に変換すると運良く積分できるものがある。

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関数の極限を求める問題が数検でもよく出てくる。多くは極限が 0/0、∞/∞ の形、いわゆる不定形の極限、という問題だが。

不定形の極限について、その解法を以下まとめてみる。


解法一、ロピタル (Hopital) の定理を使う。

0または∞に向かうスピードが原関数の微分で決まる、という原理に基づく解法。例をいくつか紹介する。

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になるので、次式が成り立つ。

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解法二、多項式展開(テーラー展開かマクローリン展開)を使う。

原関数を多項式で近似して比較するという解法。解法一の微分処理で返った複雑な形になった時に使える方法。以下に3例をあげる。

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なお、上式の計算では前半に関数cos(x) のマクローリン展開を、後半にロピタルの定理を使った。マクローリン関数だけを使っても、あるいは、ロピタルの定理だけを使っても解にたどり着くが、ケースバイケースで使い分けすれば、より簡潔に計算できよう。


さらに、階乗の極限計算が問われることもあるので、次式通りのスターリングの近似式を覚えるといいだろう。

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そうすれば、次の問題は簡単に解ける。

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最後に、研究問題をおいておく。

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あらゆる関数 f(x) を x の多項式で表そうという考えがある。数表の作成や、コンピュータによる数値計算では絶大な効果をあげている。

原点 x=0 近傍の f(x) を多項式で表したのがマクローリン展開という。ただし、ln(x) や 1/x、1/sin(x) など、x=0 では無限に発散してしまう関数は無論、そのマクローリン展開は存在しない。

マクローリン展開の条件はともかく、微分操作の理解度や、手計算技能(限られた時間の中で、電卓も算盤もなく、紙と鉛筆だけで正確に計算できるか、いわば現代版拷問)を問うには良い素材として、数検の問題にもよく使われる。

そういうことで、本記事は如何に速くマクローリン展開を得るかに趣を置く。

まず、基本として、等比数列からスタートしよう。味方を変えれば、f(x)=1/(1-x) に関する立派なマクローリン展開だ。

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1/(1+x) に関しては、上の式(1) の x に –x を代入するだけで得られる。

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1/(x+1)の積分関数は ln(x) になるので、上記の式(2)の左右両辺を積分すれば、ただちに、対数ののマクローリンを得る。

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指数関数のマクローリン展開は基本中の基本なので、覚えよう。関数 e^x は微分も積分も自分自身というトンデモナイ特徴を持っているし、工学の世界ではラプラス変換など多くの活用が工夫されている。

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また、複素数の世界では e^(ix) = cos(x) + i sin(x) という関係があるので、式(4)の x に ix を代入して、実数部と虚数部とに分けて整理すると、sin(x)およびcos(x)のマクローリン展開が得られる。ただ、一々代入しなくても、sin(x)は原点対称、cos(x)はy軸対称という特性に注目すれば、式(4)のx奇数項がsin(x)用、偶数項がcos(x)用にし、符号が一つずつ入れ替わることと覚えれば、ただちに式(4)から下の2式を得ることができる。

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あるいは、sin(x)の微分がcos(x)、cos(x)の積分がsin(x)という関係で上記の式(5), (6)の正しさを検証するのもよい。

arctan(x)の微分は 1/(1+x^2) になるので、

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左右両辺を積分すれば、arctan(x) のマクローリン展開が得られる。

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さて、マクローリン展開をほかの関数にも使えるように、二項定理の指数を実数にまで拡張する。

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そうしておくと、arcsin(x) のマクローリン展開が簡単に書けるようになる。なぜなら、arcsin(x) の微分関数がつぎになっているからだ。

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式(9)をもって右辺を展開すると下記になるので、左右両辺をさらに積分すれば、arcsin(x) のマクローリン展開を得ることができる。

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また、arccos(x) については、

150222-c

であり、式(10)とは符号が違うだけだ。arccos(0) = π/2 ということを忘れずに取り入れると、arccos(x) のマクローリン展開が得られる。

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こうすれば、覚えることなく、常用関数のマクローリン展開はあっという間に書き出すことができる。限られた時間の試験中はこういうノウハウをぜひ活用したいものだ。

ところで、tan(x) という関数はまだ簡単にそのマクローリン展開(前6項を5分以内)が書けない。今後の研究課題としよう。

150222-e


また、証明は略するが、いくつか重要な関数のマクローリン展開をおいておく。

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<問題>√(1+sin(x)) (0<x<π) をマクローリン展開して、定数項からx^5 の項までを求め、和の形で表しなさい。

<解答>

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与式が sin(x/2)+cos(x/2) に変換できることに気づけば、sin(x) と cos(x) のマクローリン展開を書き、解答となる。


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<解答>
e^(3x) のマクローリン展開は式(4)に x=3x を代入して得られる。

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また、sin(2x) のマクローリン展開は式(5)に x=2x を代入して得る。

150225-2

上の2式の積を取り、x のべき乗について整理する。

150225-3

マクローリン展開の定義により、それぞれの導関数の値は以下になる。

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【検索キーワード】 差分、和分、差分方程式

【注意】 別色は引用部分。

【参考文献】 渡部隆一著、『差分と和分』(共立出版、昭和57年10月)

差分方程式を高校1年生の学力レベルから解けるように展開している。線形1階差分方程式、線形2階差分方程式を扱っている。

差分方程式といえば、仲間の微分方程式を連想する。多くの微分方程式をすらすら解けるラプラス変換と同様、差分方程式を簡単に解けるのがZ変換という。本書では、Z変換への言及はない。そのかわりに、演算子法を利用している。

本書を手にしたのは、数列や級数とは密に関係にあるからだ。数列の漸化式が差分方程式そのもの。

【差分方程式とは】 関数 f(x) に、x = 0, 1, 2, 3, … を代入すれば、数の列 f(0), f(1), f(2), f(3), … ができる。一般に、このような数の列を数列といい、その各数を項という。f(x+1) と f(x) との間に、たとえば以下のような関係

140318.pngが成り立つと、f(x) に関する解が得られる。

140318-1.pngf(x) = f(x+1) – f(x) を f(x) の差分といい、未知関数の差分を含む方程式を差分方程式という。

導関数と同様、2階差分も定義されている。⊿2f(x)=⊿f(x+1) – ⊿f(x)。さらに、n 階差分 ⊿nf(x) まで拡張する。

いくつかの関数の差分は以下のとおり。

140318-2.pngその逆を本書では和分といい、⊿-1 で表現する。よく利用する関数の和分は以下のとおり。

140318-3.png

上の表を使えば、差分方程式の一部はスラスラ解ける。

【例】f(x+1) – f(x) = 3x2 – 2x + 4 と解け。

【解答】機械的に以下のように解く。

140318-4.png定数 Cf(0) の値によって決まる。

検索キーワード: 表計算ソフト、Excel、一変数方程式。

自分が大学生の時代は表計算ソフトが一般的でなかったが、いまでは、一変数の方程式なら、Excel を工夫して使えば、完全に解けると考えていいだろう。たとえば、ネット上では、つぎの問題が投稿されている。

【問題】つぎの方程式を満たす x の値を求めよ。

140314-1.png【考え方】昔なら、近似計算にニュートン法を勉強しなければいけなかったし、紙にグラフを精確に描いて、交点の値を読み取る等、大変だったが、Excelがあるいま、関数 ln の意味さえ分かれば、誰もが簡単に解ける。

【解答】方程式を多少整理しておいたほうが分かりやすいので、以下にする。

140314-2.png等式の左辺は自然対数関数、右辺は一次関数(直線)を表していて、対数曲線と直線との交点のx軸の値が本問題の答えになる。

140314-3.png答えは 0.433。本問題の有効桁数は3桁なので、これ以上精確に求めても無意味。

【メモ】Excelで対数グラフと直線を描いて、交点がひとつしかないことを確認したほうが完璧になる。

140314-4.png

検索キーワード: 自然数の逆数和、発散、収束、不思議、真相究明

久しぶりに数学にのめり込み、1ヶ月経とうとしている。学部生や院生時代の数学的感覚を少しずつ取り戻しているが、頭の回転が鈍くなっているので、完全に戻ることは期待できない。

さて、家にあった受験用問題集をやってみたら、いきなりハマった。

続木勝年、宮嶋俊和共著 『理系数学の良問プラチカ 数学III・C』 (河合出版、2005年)

140313-4.jpg最初の一問目、岩手大学の入試問題だったらしい。

【問題】(1)n 桁の自然数のうち、各位の数字がすべて1と異なるものの個数を求めよ。
(2)自然数の逆数からなる級数

140313-5.pngから、分母に数字1が現れる項をすべて除いて得られる級数

140313-6.pngの和は40を超えないことを示せ。

【考え方】(1)はいわゆるヒント。(2)にあった40という上限値もよかった。もし問題文はいきなり、(2)にあった無限和の数式だけを示し、発散か、収束かを考察せよ。というものなら、事前に問題を解いたひとは別にして、試験時間内で解けるひとはいないだろう。

(1)の部分は小学生レベル、8 x 9n-1 と簡単に答えがわかるはず。(2)の部分の問題は(1)のヒントをいかに活用するかだ。1桁の数字なら8個、2桁の数字なら8x9個、3桁の数字なら8x9x9個、とヒントに沿って考えていくと、桁数別にまとめたほうがよいことに気づく。また、40を超えないという大事なところを見ると、不等式を組み立てる必要性に気づく。

つまり、1桁の8個の数字をすべて 1/2 で置き換えろ、2桁の数字をすべて1/20で置き換えろ、3桁の数字をすべて1/200で置き換えろという意味だ。ということが分かれば、問題は一気に解ける。

【解答】

140313-7.png【考察】受験生なら問題を解けたので万々歳だが、不思議なことが本書の解答解説編に書いてあった。

つまり、自然数の逆数和が無限大に発散することはよく知られている。

140313-8.pngところが、本問題で示したとおり、分母に1を含まない数字だけなら40以下、つまり収束する。逆をいうと、分母に1の入る数字のみを集めると発散するわけだ。

140313-9.png両方とも収束なら、合わせたものが発散というわけがないから。さらにいうと、1の代わりに、分母に2の入る数字のみを集めても、40を超えるかもしれないが、80以下に収束することは上の論法で簡単に証明できる。

n 桁の自然数の個数は 9 x 10n-1 、そのうち、各桁のどこかに1が入る数字(例えば、1, 10, 987654321, 99199等)の個数は

140313-a.pngであり、8 x 9n-1よりも断然多いということが以上のような不思議さを引き起こしたのだ。以下の表なら、個数の違いがよく分かるだろう。

140313-b.pngということで、真相は個数の差が、桁数の増加に従って、爆発的に開いていくことにある。

140314.pngつまり、表の中のB欄とC欄との比は桁数の増大により、0に収束することだ。

ところで、本問題の収束値はいくつだろう、πe が現れてくるだろうか、気になる。Googleに数式検索ができれば、すぐに答えが分かるかもしれないが。

試しに、Googleに 1/2+1/3+1/4+1/5+1/6+1/7+1/8+1/9+1/20+1/22 と入力したら、答えがでた、1.92442279942。しかし、それは1/22までの総和であって、残念。ネット上では、16.2 の近辺ではないか、との書き込みがあった。

プログラムをつくって、20桁精度まで計算すれば、答えがわかるかも。

検索キーワード: 不定積分、有理関数、無理関数。

数学の本に面白いものが少ない。ほとんど記号で記述するものは厳密性が高いと賛同される風潮がある。しかし、自分のような技術系のひとからみると、数学以外のことに関する説明があったり、例題が多いと、応用についてあれこれ想像できるので、より吸収しやすい。結果的に勉強の効率が上がる。

その点、つぎの本はバレー劇「白鳥の湖」になぞって書かれたので面白い。定理を一々厳密に証明しない代わりに、例題やグラフが多く、読者の直感に訴えている。

難破誠著 『複素関数 三幕劇』(朝倉書店、1990年)

140313.jpg【有理関数の不定積分】冒頭、いきなり、有理関数の不定積分は以下の3つに帰着される、と言い切っている。え、本当なのか。自分は疑念の目で見ているが、著者の性格がもろにそこから表れている。

140313-1.png次式のように、分母の有理関数を部分分数に展開できれば、上記のどれかになるかもしれないが、因数分解のできる有理関数は大変少ない。

140313-2.png【無理関数の不定積分】電磁気学ではよく登場するタイプの不定積分。

140313-3.png上の2つはルートの中が2次多項式なので、まだ解けるが、3次または4次多項式になると、楕円積分と言われ、一般には解けない。さらに5次以上になると超楕円積分と言われ、もっと解けない。

不定積分の解く練習は高校や大学でよくやるが、どのタイプが解けないか、なぜ解けないか、そういう知識は残念ながらあまり教えない。解けないことを知るのがもっと大事だと思うけどね。

情報科学の世界では、NP完全問題というのが数多くある。自分はその問題を解けないが、その問題は誰もが解けないほかの問題と同等だということを証明すれば、研究成果になる。

検索キーワード: 無限和、微分方程式

無限和をどんどん解いていこう。

【問題1】以下の無限和を計算せよ。つまり、f(x)を求めよ。

140312-1.png【解答】上式は最も知られる無限和のひとつ。f (x) が先に与えられ、右辺を導き出すのがふつうだが、今回は右辺から左辺を求めてみる。

左辺右辺をそれぞれ微分する。

140312-2.png

右辺は微分しても変わらないので、f (x) とする。なぜ、無限でなきゃいけないか、微分操作でその意味がよくわかった。

140312-3.png

これでまた、微分方程式が得られた。簡単なので、すぐに解ける。

140312-4.pngただし、C は積分定数であり、以下にしてC の値を決める。

140312-5.png当たり前の解答を得る。

140312-6.png【解答終】

多項式の無限和に展開して、微分しても、積分しても変わらない関数はただひとつ、それは ex という指数関数だ。ネイピア数 e は無限の顔ともいえよう。

それを理解すれば、展開式の各項は必ず

140312-7.pngの形でないといけないことも理解できよう。指数関数 ex のマクローリン展開が忘れたとしても、微分積分しても変わらないという本質を覚えていれば、すぐに書き出せるはず。

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140312.jpg

ノーベル賞だの、リケジョだの、国民的英雄と持ち上げられた小保方晴子さんが一転、疑惑の目で見られている。

一昨日の夕方、NHKニュース番組で論文の取り下げを共著者の若山照彦教授が提案したと報道して以来、連日、マスコミに批判されるようになった。

科学者としての論理(モラル)が問われている。小保方さん本人の博士論文にもコピペ箇所ありと指摘され、常習犯かもしれない。学位授与の早稲田大学の動向が気になる。

指導教員であり、共著者でもある、名門アメリカハーバード大学のチャールズ・バカンティ(Charles Alfred Vacanti)教授は取り下げる必要はないことを主張していると報道されている。ハーバード大学も大したことがないね、そういうふうに見られる。

もっと不思議なのは、小保方さんの勤務先である、理化学研究所の対応は全くいい加減なこと。その理事長は野依良治さん、ノーベル賞受賞者でもある。科学者の模範となる人物が今回の騒動をどう考え、なにをやっているか、さっぱり当人の動向が報道されない。

掲載された論文誌ネーチャーも問題ありすぎ。

要するに、権威というか、社会の理想像である、ノーベル賞受賞者、ネーチャー誌、ハーバード大学がすべて虚像かもしれない、そういうことが今回の騒動で露呈してしまった。

研究助成金は数百億単位で動いている。すべてはお金のためじゃん、国民の不信感を払拭するためにも、厳正に処罰しないと騒動は収まらない気がする。

3年前の原発事故で問われた科学全体の危機が、今回再び直面している。そして、なによりも、論文の信憑性を検証することができ、不正を防ぐシステムを確立することだ。