私の頭の中には、いつの頃からか、
薄命さうなピエロがひとり棲んでゐて、
それは、紗(しや)かなんかを着込んで、
そして、月光を浴びてゐるのでした。

ともすると、弱々しげな手付けをして、
しきりと 手真似をするのでしたが、
その意味が、つひぞ通じたためしはなく、
あはれげな 思ひをさせるばつかりでした。

手真似につれては、唇(くち)も動かしてゐるのでしたが、
古い影絵でも見てゐるやう—-
音はちつともしないのですし、
何は云つてるのかは、分りませんでした。

しろじろと身に月光を浴び、
あやしいもあかるい霧の中で、
かすかな姿態をゆるやかに動かしながら、
眼付ばかりどこまでも、やさしさうなのでした。

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