検索キーワード: 近似計算、近似値計算、マクローリン展開

携帯や電卓が普及したいま、近似計算は必要でなくなった。それでも、数学の試験問題として出題されることがあるし、近似計算の仕組みを理解することは重要だろう。「計算できるけど、計算しない」と「計算できない」とでは、天と地との開きがある。

【問題】以下を小数点以下5桁まで計算せよ。電卓等は使わない。

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近似値計算の方法はさまざまだが、よく使われるのはマクローリン展開(あるいは、テーラー展開)という手法。式の答えに近い値が分かった場合に、マクローリン展開を使えば、近似計算は多項式で行うことができ、その誤差をいくらでも小さくすることができる。本問題の場合、答えに近い値は1と想定できる。なぜなら、10/9 = 1.111111 の 10乗根 なので、1に近いはず。(余談だが、分数と有理数との関係をきちんと勉強していれば、分母 9 の長さは循環節を表していることがわかるだろう。小数点以下の 1 が永遠に続くのだ。)

上のべき乗に対するマクローリン展開はつぎの形になる。

140311-1.png少しでも楽に計算できるよう、右辺の第4項までを以下に整理する。違う式のようにみえるが、同じものだ。

140311-2.pngここでは、取りあえず、x = 1/9、a = 1/10 として式に代入して計算してみる。「取りあえず」という表現の意味は後ほど明らかになろう。

140311-3.png最後に、さり気なく 1.01059 と答えを書いたが、正しく計算できる自信はなく、電卓を使ったのだ。

出した答えは誤差がどれぐらいだろう。当然推測しないといけない。題意では小数点以下5桁と精度を要求しているので、上記の答えは本当に5桁の精度を確保したのか、調べることが必要。

誤差の推測には、マクローリン展開の第5項を使う。つまり、第4項までは計算に使ったので、本当の値(真値という)との誤差は第5項以下で決まるわけだ。第4項までだと、精度が足りなければ、さらに第5項、第6項を追加しないといけない。

それでは、第5項の値を見積もってみる。

140311-4.png途中、19を20にしたり、29を30にしたり、24を25にしたり、81を100にしたり、随分いい加減にやったが、見積もりなので、適当な計算でも問題ないはず。最後に -2.4 x 10-6 と出、つまり、小数点以下6桁目で 2 を引かないといけない。前4項の計算で十分精確だということがこれで明白。

ちなみに、電卓で計算した精確な値は 1.010591751。上記の計算結果 1.0105946 との差は -2.85 x 10-6 であり、見積もった誤差に確かに近い。

さて、本問題の解答はこれで終わったと思っても良さそうだが、やはり筆算だけで計算したい。ということで、式をもう一度考えたところ、妙案が出た。

140311-5.pngすなわち、分母分子を入れ替えると計算が随分楽になることに気づいた。x = -1/10、a = -1/10 を再び上の式に代入して計算し直す。

140311-6.pngステップバイステップで答えを出した。これが出題者の出題意図だと自己解釈した。問題の裏が分かると何となくスカスカした気分になる。数学は楽しい、お金を使わなくても遊べるところが最高。

なお、ふつうの用途では、マクローリン展開の第4項まで要求することはほとんどない。第2項までが 1+(1/9)x(1/10) = 1.01 で 百分の一の精度。こんな計算で良ければ、確かに電卓は要らない。

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