『ユークリッド原論』を読んでても感じたことですが、数学問題の答えは2種類ある。ひとつは数式か数値で答えを示すもの。

例えば、「整数1から n までの総和、つまり、1+2+…+n の和を求めよ。」という数学問題に対して、その答えを 1+2+…+n = n (n+1) / 2 と示すやり方。(この等差数列の和の計算問題は、ガウス(Carl Friedrich Gauss)の神童ぶりを紹介するエピソードとして有名だが、数学者高木氏や、多くのひとの書いた書籍を見比べると、nが100であったり、40であったり、数万であったり、バラバラ。真実性に疑問を感じた。)

いままでの教育といえば、このような公式を教えたり、証明したり、覚えているかどうかテストしたり、することがほとんど。

もうひとつの答えとは、計算方法を示すもの。情報科学でいうアルゴリズムに相当する。たとえば、ごく簡単な足し算 a+b。その答えは a+b=a+b と書くのではなく、小学校で習った足し算のやり方を文書で説明するもの。『ユークリッド原論』には、公式よりも、そういうアルゴリズムのほうが多い。

幾何の作図は原理的に上記2つ目の解答を求めるもの。また、「2数 a, b の最大公約数 gcd(a, b) を求めよ」という数学問題は数式では答えられないので、アルゴリズムを示すしかない。

公式は理論的に、他の公式から手続き的に導くことができるので、2番目の解答法のほうが1番目の大部分を包括すると考えてよさそう。つまり、2番目の解答法で解ける問題のほうが多いということだ。

コンピュータやデータベースが手軽に使える現在、公式だけで解ける問題を勉強する意味はないと思っていいかもしれない。それは知識であって、知恵ではないからだ。紙と鉛筆だけが許される試験会場では、等差数列の和の公式を覚えていれば、そういう類の問題を素早く解けるかもしれないが、公式の暗記力のテストでしかない。対して、アルゴリズムを覚えることは知識ではあるが、知恵でもある。暗記力だけでなく、応用力をテストすることも可能だ。

数学の問題をアルゴリズムで解くことができれば、数学と情報科学との依存関係が強くなり、自分のような数学専門家でない人間が多少、数学の応用に役立つかもしれない。数学専門家と正面から勝負するなら負けに決っているが、コンピュータというツールの力を借りれば、勝てるところを見つけるかもしれない。

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