ユークリッド第7巻~第10巻を対象に研究するひとは前6巻に比べて圧倒的に少ない。定義自体が曖昧で、よくわからないこともあろう。

たとえば、1は数であるかどうか。

<定義1>
(英語)A unit is (that) according to which each existing (thing) is said (to be) one.
(和訳)単位とは存在するもののおのおのがそれによって1とよばれるものである。
<定義2>
(英語)And a number (is) a multitude composed of units.
(和訳)数とは単位からなる多である。

定義からは1は数でないと理解してよさそうだが、命題の証明をみると、1を数と考えないと矛盾してしまう。

さらに、つぎの定義3と定義4はさらに誤解を招く。

<定義3>
(英語)A number is part of a(nother) number, the lesser of the greater, when it measures the greater.
(和訳)小さい数が大きい数を割り切るとき、小さい数は大きい数の約数である。
<定義4>
(英語)But (the lesser is) parts (of the greater) when it does not measure it.
(和訳)割り切れないときには約数和である。

明らかに、和訳は問題あり。より精確に訳すと、「大きさの異なる2数があったとき、小さい数で大きい数を測ることができれば、小さい数を大きい数の部分(part)という。小さい数で大きい数を測ることができなければ、小さい数を大きい数の部分和(parts)という。」になるのだろう。

割り切るとか、約数とか、そういうニュアンスは英文にない。もっと精確にいえば、measureとはなにか、partとはなにか、partsとはなにかを、事前に定義しておかなければいけない。partsは part の複数形と解釈すると、約数が複数あることにも通じるので、全く意味が違うから。

たとえば、2数を3と6とする。小さい数3を2回使えば、6を測る(長さという意味で)ことができるので、3は6の part だ。ここまでは定義3と一致するので、問題ない。

しかし、2数を3と7とすると、定義4によれば、3は7の parts になるのだ。ところが、7のpartは1しかない。1が単位と定義されているので、partsは単位の和ということになる。つまり、unit=part になりうるということだ。

原ギリシャ語での part と parts との対応語はなにかは分からないが、大変分かりにくい。その点、和訳のほうでは「約数」と「約数和」に訳したので、まだ理解しやすい。英語との意味は全然異なるが。

約数和(parts)について、論争する論文を見つけたので、理解の助けになるかもしれない。

http://ci.nii.ac.jp/naid/110004087187 (ユークリッド『原論』第7巻定義4における”μερη”の概念)

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