140223.jpg何かに取り憑かれたように、最近は大好きな無線もやらず、電子工作も放り出した状態で、目的がなく、多くの本を読みあさっている。最初は電験1種の受験対策のためだが、書籍を読むこと自体が楽しくなって、電験のことを忘れたほどだ。

さて、ユークリッド原論を読んでいるが、様々な謎については解説本が役に立つ。いい加減なコメンテータ的な書籍は勿論見てはいけない。ラテン語等の原写本を実際に手にとって研究した数学者でないと信用してはならない。

斎藤憲『ユークリッド『原論』とは何か 二千年読みつがれた数学の古典』(岩波書店、2008年)が図書館にあった。原論の第1巻~4巻を主に解説している。

いくつの指摘をメモしておく。

1. 「原論」が特定の哲学の立場で議論するという解釈に懐疑的。

2. 語られた数学の痕跡が「原論」に多く、記憶に頼って教師が教えていた。だから、この部分は前のどの命題で証明済とか、どのページのどこを参照せよとか、そういう指示は「原論」に一切ない。記号の使われる順番(英語でいうA, B, C等)も、直前の命題と似た図形でも、関連性がない。

3. オリジナルの第1巻の定義部分に番号はない。定義の番号は後世の編集者によるものだ。(筆者注、しかし、写本の写真をみたところ、ローマ数字 Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ等がちゃんと写っているので、要確認。)

4. 第1巻の要請(公準1~5)は、単に論理的厳密性だけを目的として宣言されたのではなく、反論が出そうな箇所に先手を打って述べられたものだ。5つの要請にしたのは、論理的厳密性という抽象的・普遍的な基準を考えていたのではなく、文句を言い出しそうなうるさ方の顔を思い浮かべていたのではないかと。ややこしい議論に巻き込まれないための予防線であった。

5. 命題の構造。命題は6つの部分、すなわち「言明」「提示」「特定」「設定」「証明」「結論」に分ける。

6. 命題4の証明のために、命題1~3が必要。命題4は2つの三角形が相等しいことを主張するもので、2つの離れた三角形が重なり、だから等しいとの証明だが、実際は三角形にもう一つの三角形を書いて、みろ、重なるだろうとの操作が入っている。別々の紙に三角形を書いて、紙同士を重ねあわせるという発想ではなく、2つの三角形は動かないものとして、片方の三角形を作図によって移動させるという考え方。だから、命題1~3はなくてはいけない。

7. 命題6は証明に不備がある。図形の配置等によって証明がいくつかの場合に別れた場合、ユークリッドは1つの場合だけを証明し、他の場合の証明は暗黙に読者にゆだねていることがある。つまり、ユークリッドとはギリシャ数学というと、すべての場合を尽くして完璧な証明を行うというイメージがあるが、そうではない。

8. 今日広く流通している「原論」の図版(図形)は原写本と大きく異る。

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